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祖母がいきなりやって来て母を張り倒しました

トントントントン


翌朝、小気味の良い包丁の音で私は目が冷めた。


慌てて台所に降りるとラモーナが朝食を作ってくれていた。


お味噌汁のいい香りがする。


「うそーーー。朝食を作ってくれているの。感激」

私は感動した。私は家では5歳位から見よう見まねで朝食を作り出し、7歳以降は完全に私だけが朝食を作っていたのだ。それが私が何もしなくても殆ど出来ている。


「おはようございます。リア様、起こしてしまいましたか」

ラモーナが味噌汁の味見をしながら気遣ってくれた。


「おはよう。全然問題ないわよ。もう7時だし、何か手伝う事ある?」

「いえ、もう殆どできていますから、食器を出して頂いていいですか」

「判ったわ」

私が食器を出していると


「おはよう、ラモーナさん! リア」

いつもは起こしても中々起きてこないハンスが、味噌汁の匂いにつられたのか、起きてきた。そして、挨拶もしていた。私はついでだ。


「おはようございます」

「おはよ・・・・」

なんか面白くない。


「今食事ができますので、どうぞかけてお待ち下さい」

ラモーナさんが味噌汁をお玉ですくいながら言ってくれた。これが据え膳だ。私は感激していた。


「美味しい。ラモーナって料理、上手なのね」

私はラモーナの作ってくれたお味噌汁をのんで思わず声に出していた。何この味。私とは全然違う。私はさらに感動した。


そして、その感動を分かち合おうとハンスの方を見ると、なんと涙まで流しているのだ。


「どうしたの? ハンス」

「こんなに美味しいご飯食べたの久しぶりだ。リアの味付けは大雑把だから」

感動していた私はその言葉に絶句した。いや、たしかに美味しいが、小さいときから作ってきてやった私をけなすか。


「あんたね。小さいときから御飯作ってきてやったのに、なによ、その言葉」

私は怒って言った。まあ、ラモーナのごはんの味には到底かなわないけど。


「だってリア、これ本当に美味しいんだって。お母さんの味がする」

ハンスは感激してラモーナさんを見ていた。


「ハンス様。そんなお上手言われてもなにもでてきませんよ」

「なに言ってるんだよ。リアの軍隊料理に比べたら月とスッポンだよ」

「アッソ、もう二度とハンスのために作ってやらない」

私も少し切れた。5歳のときから作っている私をそこまで貶めるとはもう許さん。


「ハンス様。リア様は小さい時からハンス様のためにご飯を作ってくれていたんです。普通5歳の子供が作りませんよ。そのリア様をけなすというのはどうかと思いますが」

ラモーナがやんわりとハンスを注意してくれた。


「ラモーナ」

そうそう、そうよ。ラモーナはいい人だ。

でも、食事を作り始めたのはハンスのためではなくて、母の半分真っ黒になった焦げだらけの料理と固形食しか出さないハンスの食事を食べたくない、と私自身のために作り出したんだけど、それは黙っていよう。


「まあ、それは謝るよ。確かにリアの食事は軍隊食で味はもう一つだったけど、わざわざ作ってくれていたし」

ハンスの言葉はいちいち私の繊細な心? を傷つけた。謝るにしてもその付け足しの言葉は要らない。


「でも、リアもラモーナさんの食事が美味しいのは認めるだろう」

「それはそうだけど」

「リアもラモーナさんに料理を習いなよ。カートも喜ぶと思うよ」

「えっ、そうかな」

ハンスの言葉に一抹の不安が湧いてきた。カートは今まで私の食事を美味しい美味しいって食べてくれたが、実は無理していたのだろうか。本当に美味しいっていうのは、こういう料理を言うのだ。


「そうだよ。リアの味覚は少しおかしいよ」

「何よ、それ」

せっかく謝られたのに、更にけなされて私は怒った。


「だって、普通は薬剤師って薬をいかに飲みやすくするかに血眼になるのに、リアったら、いかに苦くするかに血眼になっているんだよ。絶対におかしいよ」

「それと料理とどう関係するのよ」

私が怒って言うと


「味は大切だろう」

「風邪薬はいかに苦いかが味噌よ」

「なわけ無いだろう」

私達が騒いでいる時だ、これも奇跡的に母が早起きしてきた。


「おはよう。朝からうるさいわね」

母が文句を言った。


「おはようございます。アリシア様」

「おはようございます」

「おはよう母さん」


母が座るとそこにラモーナがご飯を持ってきた。


「うわー、凄い。まともな食事ね。リアのは軍隊食だから」

母までも言う。


「母さん。誰のせいでそうなったと思っているのよ。もともとあんたらがメチャクチャな料理作っているから、5歳の私が見よう見まねで作ってあげていたんじゃない。それを・・・・」

私は怒り狂って叫びながら母の反応が変なのに、気付いた。


な、なんと、目から涙を流しているのだ。この母がだ。


貴族を燃やしてもなんとも思わないこの母が。


私の目の前で、いまだかつて涙なんか流したことがない母が・・・・


ハンスまでもがぎょっとして母を見ていた。


「お母さん・・・」

ポロリと母が言葉を発した。


お母さん?母がお母さんって・・・・母の母ということは私のおばあちゃんってこと。


そう思った時だ。


ドン


凄まじい音とともに空気を震駭させて魔女のような格好をした女性が現われた。


「呼んだかい」

魔女は母に言った。


「母さん!」

母はその魔女を見て唖然としていた。


ということはこの魔女が私のおばあちゃんなのだろうと思った時だ。


「会いたかった」

な、なんとあの母がその魔女の胸に飛び込んでいったのだ。うそ、あの冷徹非情な破壊の魔女の母が、あの母が、胸に飛び込むなんてあり得ない・・・・・




しかし、魔女はその母を、破壊の魔女とか凶刃の魔女とか天災の魔女とか貴族社会で怖れられている母を思いっきり張り倒していたのだ。




天災の魔女が張り倒された・・・・・


私もハンスもラモーナさんも唖然としてそれを見ていた。


リアの祖母登場です

破壊の魔女対その母 その対決は今夜

地上最大の戦いが始まる?

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の

次回作品

はこちら!

『ブス眼鏡と呼ばれても王太子に恋してる~私が本物の聖女なのに魔王の仕返しが怖いので、目立たないようにしているつもりです』

https://ncode.syosetu.com/n7402hm/

顔を隠すためにメガネを掛けてブス眼鏡と陰で呼ばれているエレは、真面目なメガネっ娘を演じているつもりが、やることなすこと目立ってしまって・・・・。そんな彼女だが、密かに心を寄せているのが、昔助けてくれた王太子殿下なのだ。その王太子が心を寄せているのもまた、昔魔王に襲われたところを助けてもらった女の子だった。
そんな所に魔王の影が見え隠れして、エレは果たして最後までニセ聖女の影に隠れられるのか? 魔王はどうなる? エレと王太子の恋の行方は?
ハッピーエンド目指すので是非ともお読みください!
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