第一王子視点11 ベッキーに思いっきりしばかれて目が覚めました
俺はリアに大嫌いっと言われて思考回路が全て止まってしまった。
もう、リアとの間は終わりかもしれない。
王子なんて絶対に好きになれないと言われたようなものだと、俺は呆然としていた。
走っていくリアのことを見ることも出来なかった。
その時だ。俺の頬を強烈な平手が見舞われたのは。
バシッ
凄まじい音がして、俺は生まれてはじめて頬を張られたのだ。
回りは唖然と見ていた。
俺が第一王子だと知っているプリシラやメルヴィンたちは皆固まっていた。
「カート、なにぼうっとしているのよ。あんた、自分が悪いと思うなら、リアを追いかけなさいよ」
目の前には怒りで仁王立ちしているベッキーがいた。
「いや、ベッキー、それはまずいって」
蒼白となったザカリーが慌てて止めようとした。
「うるさいわね。あんたは黙っててよ」
ベッキーは止めようとしたザカリーも振り払った。
「あんた判っているの。リアはね。あの単純なリアは第1王子に食べさせされて、あなたを裏切ってしまったって泣いていたのよ。それもこれもあんたがリアを王子に任せたからでしょう。リアはね、心の底から泣いていたのよ。なのに、なにぼうっとしているのよ。リアが好きなら、どんだけ嫌がられても追いかけて謝りなさいよ。『大嫌い』って言われて諦めるくらいなら、元々リアに手を出さないでよ。リアをそんなに簡単に諦めるなら、リアに近づかないでよ」
ベッキーは俺を怒鳴りつけた。
そうだ。こんな簡単に諦めるくらいなら、元々、リアの前に二度と出てきてはいけなかったのだ。変装して、彼女の前に顔を出した時に決めたんだ。どんな事があっても、回りにどれだけ反対されても、俺の隣にリアを娶るって。
大嫌いだって言われたくらいで諦めていたら、これからの茨の道は一緒に歩いてはいけない。
「そうだな。ありがとう。叔父に頭を殴られた以来だよ。感謝する」
俺はそう言って笑うと、しっかりと立上った。
「えっ」
その俺を見てベッキーが僅かに怯んだ。
「どうしたんだ。しばいてくれたのは君だろう」
俺はベッキーを見た。思い切りしばいてくれて今更怯えるか?
「いえ、何でも無いです」
慌ててベッキーが首を振った。
「じゃあ、探しに行こう」
俺はリアの言ったと思われる方向に向いて走り出した。
「おいっ、ちょっと待てよ」
セドリックも慌てて駆け出した。
「俺達も追おう」
メルヴィンの声が聞こえる。
回りに配置した近衛がリアの行方を追いかけているはずだ。
俺はそんなに遠くには行っていないと思っていた。
でも、リアの体力は桁外れだった。
俺は必死に走ったが、全然リアには追いつけなかった。
近衛が途中で振り切られたと知ったのは変な動きがあると報告のあった倉庫の近くだ。
ひょっとしてリアが危ない。
俺が慌てて先に進もうとした時だ。
ドカーン
その倉庫の上空辺りで爆発が起こったのが見えた。
「行くぞ!」
俺達は慌てて走った。
リアが心配で必死に走るが、倉庫は林の中で中々着かなかった。
やっとたどり着いた時は、倉庫は建物の様相をしていなかった。完璧な廃墟と化していたのだ。
その真中でリアは二人の男と女に指示を飛ばしつつ、瓦礫をどけていた。
「カート、遅い!」
俺を見つけたリアは俺に向かって叫んだ。俺はリアが無事でほっとした。
慌てて駆け寄ろうとして、リアの指示を受けている男達を見て固まってしまった。
なんと、リアはあろうことか、帝国の剣聖ルーカス・ベックマンを顎で使っていたのだ。
リアの回りには傷だらけになったいかつい男達が縛られていた。ルーカスがリアの指示で、縛ったのだろう。
「なにとしてんのよ。そんなやわな縛り方じゃ、すぐに逃げられるわよ。本当に役に立たないわね」
そして、リアの横で怒られている少年を見て俺は唖然とした。
えっ、いや、そんな訳は無いだろう。こんな所に本来いるはずもない。
嘘だろうと何回も見直す。まあしかし、剣聖がいるのだから彼がいてもおかしくはなかったが。
俺はその少年から
「お前のところの破壊女は人使いが荒い」とか、「年下に対する優しさがない」
とか後で散々文句を言われた。
その少年はなんと、帝国第一王子エーレンフリート・アーデルハイトだった。
知らない間に二人の王子を顎で使うリア、最強です。
次話は明朝更新予定です。




