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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
9/41

その手に取るものは/Weapon of Choice


宇宙空間。


廃墟と化したコロニーの中を一機の軽装甲なバトラックが漂う。

バトラックは右手にピストルを構え、物陰から物陰へと隠れながら移動する。目立たないようにスラスターの使用を最低限にし、それによって発生した慣性を利用して移動する。


バトラックがコロニーの中心部に辿り着く。

コロニー自体は崩壊しその破片などが宙に浮いているが、その芯となる部分はデブリの量が少なく、外に繋がる円柱状の吹き抜けになっている。


そして、このコロニーの中心部分とも言える開けた空間に、一機の機体が堂々と浮遊している。


その機体は、デブリの裏に隠れる機体と同じくバトラックであるが、細部を見ると全くの別物であることが分かる。

全身を厚めの装甲で覆いながらも、その姿からは鈍重さは感じられない。両手で重厚感のあるアサルトライフルを抱え、腰に手榴弾やコンバットナイフを装備している。カモフラージュ目的の地味な色合いをしているにもかかわらず威圧感を放つその姿は、特殊部隊員を彷彿とさせる。


軽装甲のバトラックはピストルをゆっくり構える。そして、しっかりとその照準を重装備のバトラックにあわせ、トリガーを引く。


まばゆい緑色のビームが銃口から放たれる。眩い光は一瞬のうちに重装備のバトラックに接近する。


しかし、その光が目標に当たることはなかった。重装備のバトラックは咄嗟にバックステップのような動きでビームを避ける。それと同時に、ビームが発射された方向に向かって腰に装備された手榴弾を流れるような動きで投擲する。


軽装甲のバトラックもただ見ているだけではない。ピストルが外れたのを確認すると、急いでピストルのモードを切り換える。そして、投げられた手榴弾に向けてピストル構え、撃つ。

銃口から放たれたビームは先程と違いバラバラに散り広範囲に広がる。小さな光の一つが手榴弾を掠り、破損した手榴弾はその場で爆発する。


手榴弾の爆発により敵を見失った重装備のバトラックは一気に上昇する。重装備のバトラックは確かに軽装甲のバトラックより遅い。しかし、どれだけ速い機体でもデブリに囲まれた場所ではその機動力を生かすことができない。


重装備のバトラックの思惑通りかのように、後を追う形でデブリから軽装甲のバトラックが飛び、接近を試みる。しかし、射線を塞ぐ障害物が無いうえに重装備のバトラックと高度が離れているため距離が遠い。

重装備のバトラックは十分に距離が離れていることを確認すると、その場で振り向き両手で持ったアサルトライフルの銃口を軽装甲のバトラックへと向け、ビームの嵐を降らせる。


軽装甲のバトラックはアサルトライフルの弾を何発も耐えられるほど頑丈に作られていない。何とか降りかかる光の雨から逃れようと、機体の進む方向をずらす。重装備のバトラックはそれを追う様に銃口の向きを変える。


光の弾丸をばら撒く重装備のバトラック、迫る弾を必死に避けながら何とか攻撃を加えようとする軽装甲のバトラック。一見拮抗した戦いに見えるが、射撃戦における武装性能差は歴然。少しずつ、軽装甲のバトラックがコロニーの壁へと追い込まれていく。


追い込まれた軽装甲のバトラックはピンチから逃れようとデブリの陰に隠れる。デブリ越しでは弾が通らない事を理解している重装備のバトラックは、射撃を止める。


ZS(ゼニススレイヤー)は、基本的に宇宙での移動はスラスターに頼り切っている故に、隠密行動を得意としていない。高機動型の機体はこの特徴がさらに顕著になり、速度を出そうとするとスラスターの光で周りのデブリなどが照らされてしまうのである。


重装備のバトラックはそれを理解した動きで軽装甲のバトラックが隠れた辺りを警戒に二つ目の手榴弾を投げ込む。そして、後ろに移動し、アサルトライフルを構える。


手榴弾が爆発すると同時に、隠れた場所の少し斜め上から軽装甲のバトラックが飛び出す。両手にビームサーベルを握り、胸部のバルカンの弾をここで使い切らんとばかりに乱射しながら真っ直ぐ突っ込んでくる。


しかし、重装備のバトラックには通用しなかった。バルカン砲を避けながら軽装甲のバトラックの足元を目掛けてバレルロールを行う。そしてすれ違うと同時に、構えたアサルトライフルで軽装甲のバトラックを無慈悲に撃ち抜く。


至近距離で撃たれたことにより、軽装甲のバトラックの頭部と右足が吹き飛ぶ。勢いよく回転しながら吹っ飛んだ機体は、デブリに思いきり激突し爆散する。そして、数秒立った後に、アナウンスが表示される。



Game Set

Winner: チータラ



こうして、何度も繰り返されていた似た機体同士の戦いがまた終了した。





レイドラとチータラさんの対戦を、4人でモニターを囲んで見ていた。


「この試合はもうだめそうだな…」


そう言ったのは俺の右隣に立っていたイッポンさんだった。


イッポンさんは俺や元帥さんと同じく動画投稿を行っているプレイヤーだ。現在レイドラと戦っているチータラさんと一番端で見ている缶フーさんと一緒にイッポンチャンネルという名称で活動していて、名前を省略してそれぞれポンさん、チーさん、カン兄さんと呼ばれている。


普段は別のハブを活動拠点としているが、度々『ペガサス』に足を運び交流を行っている。今日も来ることを知っていた俺は、自分のチャンネルに投稿するつもりだったプレイ動画を犠牲にレイドラの特訓を引き受けてもらった。


「操作自体は普通に良いのですが、昨日の放送時には有ったキレを今の動きには感じませんね。機体性能の差が少ない『バトラックコマンド』相手にこれほど苦戦するのは少し予想外でしたね...」


カン兄さんからは辛口の評価が下されるが、その通りだった。操作自体は完全に高機動型バトラックに適応していて、違和感は特に無い。


だが、立ち回り面はいまいちと言わざるを得ない。武器の長所を全く生かせておらず、負ける時もハイリスクローリターンの行動のせいで撃墜されるパターンが多い。


今回も、デブリの中を逃げながら闇討ちに専念していれば勝つことができた試合だった。しかし、レイドラはあえて一か八かで突撃することを選んだ。結果、動きを読まれそのまま撃墜され負けてしまった。


今のレイドラの戦い方の感想を言おうとすると、俺が考えていることを呼んでいたかのように元帥さんが言う。


「まだカグツチに乗ってるみてぇな戦い方するな。」


常に背後から追いかけてくる敗北から逃れるように戦う背水の陣。それが基本スタイルであるカグツチは、リスクのある戦いを常に行わなければ勝つことができない。

しかし、バトラックはそうではない。様々な安定した勝ち筋を持っており、無茶をしなくても勝てるという共通コンセプトを持っている。


レイドラがリスクのある選択肢を常に選ぶのは何故なのか。思い返してみると、一つ心当たりが浮かぶ。


「さすがにバトラックのバトルスタイルに合わないし、リスクを減らすようにい―」


「いや、多分理由はそこじゃないです。ちょっとレイドラと話してきます。」


レイドラへ助言を行おうと龍斗の筐体へ向かおうとしたイッポンさんを止める。


そして、筐体から出てきた龍斗に手招きし、他の人に聞こえない声で自分の推理の答え合わせを行う。


「なあ龍斗、正直に答えて欲しい。お前、今乗ってる機体あまり好きじゃないよな?」


龍斗は目を大きく開く。


「どうして分かったんだ?」


「最初に機体を見せた時、一瞬あまり乗り気じゃない表情だった気がしてな。もしかしてバトラックの見た目が気に入らなかったか?」


龍斗は顎に手を当て、歯切れの悪い答えを返す。


「それもあるんだけど、なんていうか、カグツチの時みたいなビビッ!ってくる感覚がなかったんだよね。実際使い易くはあるんだけど、全体的に物足りないというか、決定力が無いというか…」


龍斗の曖昧な答えを自分の中で必死に分解し、自分なりの解釈を作り上げる。


「つまり、見た目がかっこよくて、派手でロマンのある機体が好みなんだな?」


「ま、まあ大体それで合ってるね。」


俺の非常に単純化した言い方に苦笑いを浮かべながらも、内容を肯定する。


明確に欲しいものが分かったのであれば簡単だ。自分の中で詳細な計画を立てつつ、龍斗に報告する。


「よし、分かった。大会の日までに、お前の専用機を作ってやる。それで出場するぞ。」


龍斗は今日一番のびっくりした表情で他の4人の場所に向かう俺を追う。


「えっ、そんなあっさり決めていいの?」


「むしろ早い方が作る時間の余裕があって好都合だ。気にすんな。」


そして、待っていた元帥さんに問いかける。


「なあ糞武装ソムリエよ、君の中で理論上最強の武器はあるかい?」


俺の意図を理解した元帥さんは邪悪な笑みを浮かべる。


「もちろんありますよ、まだ誰も使っていない取って置きが。試してみるかい?」


元帥さんと俺の謎のノリに困惑しつつも、龍斗は頷く。


「では紹介しましょう。数多くの人がそれを使おうとしたにも関わらず、誰一人と使いこなせなかった空鉄の宇宙における聖剣(エクスカリバー)。優れた空間把握能力を持つ者のみに使用が許される最強兵器、それがARW(オールレンジウェポン)である。」


今回の補足は特訓相手についてです。


イッポンチャンネルは3人(イッポンさん、チータラさん、缶フーさん)で構成されたチャンネルです。イッポンさんはゴリラ近接機、チータラさんはコマンドタイプの中距離機、缶フーさんはステルススナイパー機を使っています。今回の目的には一番チータラさんが適していたので、チータラさんが対戦し、あとの二人がアドバイスを行う形をとっています。三人とも何気に空帝戦の本戦に出場できるほどの実力者です。


元帥さんこと焼餅元帥は「糞武装ソムリエ」と呼ばれていた通り、「糞武装」の使用を専門とするプレイヤーです。大体の糞武装は、運営が極端なコンセプトで武装をデザインした結果、使い悪すぎてほとんどの人に使われなくなったものです。ですが、ちゃんと使いこなすことができれば強いものが多いので、対策できていないとランクポイントを献上するだけになります。元帥さんの戦法の餌食になったプレイヤーは多く、彼が使う武器の対策はトッププレイヤーの間では必須事項とされている。


動画投稿者陣の機体はしばらく出てきません。申し訳ない...


後々出す予定ではあるので、お楽しみに!



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