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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
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あなたにご武運を/May Luck Be With You


「好きな機体を選んでみてって言われてもね…」


俺は(はじめ)に手渡された携帯端末に表示されているカタログを見る。機体の3Dモデルが左に表示されており、その隣に名前、装備、機動力が掛かれている。それらの下には作成者によって書かれた説明が書かれている。それらは機体を作成した人が丹精込めて書いた設定だったり、機体の基本的な使い方だったりと様々だが、共通しているのはどれも作成者の機体に対する思いが詰まっているということだ。


だが、そんなことは今どうでもいい。今俺が直面している問題は、表示されている機体の数があまりにも多すぎるということだ。戦い方に合った機体を見繕うと言われたものの、この大量に表示された機体の中から選ばなければいけないと考えると気が遠くなる。


「別にその中から選ぶ必要があるって訳じゃないからそんなに気負わなくていいよ。大事なのはお前がやりたい戦い方ができる機体を探すことだ。その機体がこの中にいるとは限らないしね。」


「もしこの中に俺に合う機体がなかった場合はどうするんだ?」


「だったら自分用に機体をカスタムするかフルスクラッチで作るしかないな。まあそうなるとは限らないからそうなったらその時考えよう。」


引き続きページをスクロールしながら、気になったことを一とその横に立っている元帥さんに聞く。


「そういえば経験者の二人からすると、この機体がいいとかあるのか?」


俺の質問を聞いた二人は顔を見合わせる。


「中級者に成り立ての奴が使う機体なんて正直一択だろ。」


「まあカタログを見せてる手前言うのもなんですけど実際そうですよね…」


「そんなに言い切れるほど優秀な機体があるのか。その機体の名前って何なんだ?」


二人は自然と声を合わせて答える。


「「バトラック」」





空鉄の宇宙が稼働二年目。


初めての空帝戦と地王戦で繰り広げられた激戦により、空鉄の宇宙のプレイヤー人数は二倍以上に膨れ上がった。初心者帯でのマッチング状態は初めて良好といえる状態になり、勝てる実力を持ったプレイヤー達は中級者帯に徐々に上がっていった。


だが、そこで浮上したのが機体問題である。


空鉄の宇宙のデフォルト機体はあまり操作性が良くない。その為、中級者帯に上がると機体を違うものに乗り換えることが推奨されている。

しかし、ここでとある問題が発生した。機体を乗り換えるにも、乗り換える先の機体がない。これまでほとんどの人が自分の技術を隠し持ち、自分だけの物にしようとしたからである。しかし、機体を作ろうとする初心者を待ち構えているのは、異常なまでに繊細なスラスターやセンサー調整。ここまで操縦技術を磨いても、また新たな技術が要求されるのである。


この理不尽な状況に晒され新たな中級者達の心が俺かけていた時、とある設計図がカタログに投稿された。


高出力を誇りつつも維持された高い操作性。特別秀でた能力はないが、そのシンプルさ故に様々な武装を装備でき、さらに簡易的な換装で機体特性を変化させることができる。ある種万能と言えるこの機体は、瞬く間に話題を呼び、絶望しかけていた中級者達に対する救いの手となった。


そして、数年たった今でも現役で数々のプレイヤーに愛用されているその機体は、敬意をもってこう呼ばれている。


「『救世主』バトラック」と。





「とりあえず調べてみたけど、色々出てきてどれが本物か分からないんだが。」


『バトラック』と検索欄に入れたら出てきた大量の検索結果を一に見せると、一はすぐに答える。


「そいつら全部そうだぞ。名前に『バトラック』って入ってる奴はみんな最初のバトラックをベースに作られてるからな。」


「それにしても百機以上投稿されてるのは流石に多すぎだろ…」


「それだけバトラックが愛されてるって証拠だ。多分そこに載ってる殆どの投稿が自分流のカスタムを載せたものだからな。それに自分のスタイルに合わせるから最初はシンプルなので始めた方がいいぞ。ちょっと端末貸して。」


俺から端末を受け取ると、一はパパッと操作を行い、すぐに俺に返す。


「昨日の戦い方的にこのタイプが合うんじゃないか?」


返された端末の画面に表示されていたのは,かなり平凡な見た目をした機体だった。

少しのっぺりしたゴーグル型のカメラアイ。グレーとオレンジを基調にしたカラーリング。派手さの欠片もない質素な造形。右手には小型の拳銃らしきものが握られており、左手には簡素な盾が装備されている。

機体名を見るとそこには「高機動型バトラック」と表示されている。


「元のバトラックより機動力を上げて装甲を減らしたタイプだ。武器も近距離寄りの物が多いけど,主兵装の切換型ビームピストルは中距離戦でも機能する。最高速度はカグツチに劣るけど,カグツチの問題点だった武装の貧弱さと操作性の悪さは解消されているから大分戦いやすくなるはずだと思う。」


俺は画面に表示されている機体を見つめる。


正直,あまり乗り気になれない。見た目が地味なのもあるが,初めてカグツチを見た時のような惹かれる感覚が無い。だが、操作してみないと分からないものもあるだろう。


「分かった。とりあえず一回トレーニングモードで使ってみた方がいいか?」


「そうだな、まだ予定の時刻まで時間はあるし,慣れていた方が練習も捗るだろ。」


一に確認を取った俺は、管理端末で操作を行なったのちに、球体型の機会に足を踏み入れた。





目を開けると、既に見慣れた待機エリアが全天モニターに映し出されている。


出撃準備を行い、一がカタパルトと呼んでいた場所に移動する。そして、トレーニングモードでは必要ないと分かってはいるものの、気合を入れて叫ぶ。



「レイドラ、高機動型バトラック、行くぞ!!」



席に押し付けられる感覚と共に母艦から宇宙に投げ出される。少し離れたことを確認し、機体性能の確認を行う。


「…こんなにも変わるものなのか。」


正直バトラックを見せられた時、過小評価していた。操作性がいいとはいえ、同じゲームだからどうせ今までと同じようなじゃじゃ馬なのだろうと。操作に必死になるのは変わらないのだろうと。


だが、実際に使ってみたら天と地ほどの差がある。これまで苦労して動かしていたのが嘘かのように思い通り動き、安定している。加速、減速、切り返し、旋回。どの動きにしても圧倒的な滑らかさ。(はじめ)、いや古兵と元帥さんがあれだけ激推ししていたのも納得がいく。


一通り動きを試し終えたら、次は武装確認に移る。


この機体の武装は切換型ビームピストル、ビームサーベル二本と胸部バルカンによって構成されている。

切換型ビームピストルは収束弾と散弾を利用することができ、中距離は威力の高い収束弾、近距離は与えるダメージを増やすために散弾を使うことになりそうだ。

ビームサーベルはカグツチの両手剣より細いが、実体剣ではないので折れる心配はない。これで敵の弾を防ぐのは無理そうだが、突きという攻撃手段は増えている。機体のエネルギーを消費するという難点はあるが、元々あまり消費が激しくないこの機体にとってはあまり大きな問題にならなさそうだ。

胸部バルカンは少し撃ってみたが、カグツチの頭部バルカンとあまり変わらない印象だ。使える場面は無い訳ではないだろうが、あまり活躍に期待しない方が良さそうではある。


武装確認も終わったところで、トレーニングモードを終了してフルダイブから離脱する。機械から出ると、すぐ外で一が知らない三人組と話している。俺が出てくるのを確認した一は、俺に手招きをする。


「おっ、丁度終わったみたいだな。じゃあ全員揃った訳だし、自己紹介を行ったら今日の本題に入ろうか。」


空鉄の宇宙におけるバトラックは所謂「テンプレ」機体です。


公式掲示板に掲載され、自由に借りることができ、自分好みに少しカスタマイズしてもいいことになっています。なので、特に中級者帯に入ったばかりだとほぼバトラックもしくはその派生型としか対戦が成立しないこともあります。


バトラックは突出した点がない代わりに、全体的に高性能で扱いやすい機体です。その扱いやすさから初心者帯でバトラックが使うことができたら使用人口が増えるのではないかとプレイヤー間で言われています。もしかして運営はむn(殴



ちなみに、ロボットアニメ的に考えると扱いやすく安定した性能を発揮できる機体は何に部類されるでしょう?


そう、量産機です。


バトラックは、プレイヤーによって作られた空鉄の宇宙の量産機です。それに因んで、派生型

には「〇〇型」や「〇〇専用機」と付けることがマナーとされています。


一応バトラックの製作者も後々登場する予定です。だいぶ先になりそうですが...


それでは!


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