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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
二章:新たな帝王、そして古き者との対決
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威厳の逃走、怒りの攻勢/Prideful Flight, Angry Pursuit

昼投稿です。


「クソッ、待ちやがれ!」


デブリの間の僅かな隙間をギリギリ通り抜けながら、距離をどんどん離す狙撃機の後を追う。

つい十数秒前までは全力で吹かしていた俺の機体のスラスターも、今は七割くらいに抑えている。


正直全開にしたい気持ちは山々だ。

だが、現在俺にはそれができない。


ブレイヴさんを追い回していた僅かな時間で分かったことは一つ。


とにかく操縦技術が高い。


急カーブや方向転換はもちろん、機体が通れるのか怪しいような隙間でも躊躇なく通り抜ける。どんな障害物でも軽やかに避け、調整されていないスナイパー機であるにも関わらずスピードを落とすことなく進んで行く。操縦している手足が通常の倍あるのかと錯覚するほど滑らかな動きで傷一つなくデブリ宙域を舞っている。


対して俺は、相手を見逃さないようにするので精一杯だ。

スピードを落としより細かい操作を行えるようにしているが、それでも機体の装甲をデブリに擦り付けてしまっている。

機体の機動力は間違えなく近接機である俺の機体の方が早いはずなのに、相手がどんどん離れていく。



距離差がさらに増えている理由は言うまでもない。


純粋な実力差だ。

こちらの有利を覆すほどの実力差がブレイヴさんと俺の間にはある。


そして、その事実が今の俺に取ってどうしようもなく腹立たしい。


「俺の実力じゃこんなにも簡単に対処されるのかよ...!」


デブリの隙間を通ると、またもや装甲が擦れる感覚がする。

その事実を遅れて知らせる警報の音がこれ以上ないほどに俺の苛立ちを加速させる。


遂に相手の背中を見失う。

怒りと絶望感が混じり合い、レバーを握る手を強く握り締める。


「まだ、まだ追いついてみせる!」


追いつくことができないことを分かっていても、相手が通った道を追い続ける。

『もしかしたら』と自分に言い聞かせ、必死に機体を動かす。


そして、最後のデブリの隙間を通る。

戦艦の一部だった機械の塊にある僅かな隙間をビームジッテで広げながら反対側に出る。



迫りくる機雷。

ライフルを構えるブレイヴさんの機体。


外に出て最初に見えたのがその二つだった。


俺は近くに浮いているデブリに右肩のアンカーフックを飛ばす。

右手でワイヤーを握り、絡めとったデブリを機雷の方へ放り投げる。


迫り来る機雷にデブリが直撃し、その場で機雷は連鎖的に爆発する。


だが、そんなものを気にしている暇はない。

左手で握ったビームジッテを機体の前で構える。


爆炎の裏からビームが飛来する。

なんとか反応してビームジッテで受け止めることに成功する。


逃走する前に撃った分を含めこれで二発。リロード前に飛んでくるのは後一発のはずだ。


身構えているが、何も飛んでくる様子が無い。

そうしているうちに爆炎は消え、視界を遮るものが無くなる。


目の前に相手の姿が映る。

スナイパーライフルのマガジンを手に握り、ちょうど再装填を行っている姿が。


それを認識した瞬間、俺は動き出す。

スラスターを一瞬にして全開にし、前方に機体を放り出す。


しかし、これは相手の隙を突くためにやった行為ではない。

俺が飛び退くと同時に、さっきまで俺がいた位置を真上に向かう光の弾が通り過ぎる。


なんとか危機は脱したが、相手は既に次の行動の準備が整っている。

体勢を崩している俺に対し、ライフルの銃口を向ける。


弾が撃たれると同時に、俺は横向きに機体を回転させ移動する。

機体の真横を放たれた弾丸が通り過ぎる。


「誘導してこない...?」


弾が横を通り過ぎていくのを見て、俺は全力で脳を回転させる。


種明かしをされた時、撃たれた弾は途中で軌道を突然変え、俺の方へと誘導してきた。

それに加え、さっきの真下から飛んできた弾。普通に誘導するだけではあの角度から弾が飛んでくることは無い。


となると、あのライフルの性質は―


「『誘導弾』じゃない、撃ってから一定時間後に発生する『狙い直し』か!」


俺はサイドステップし、右手に持ち替えたビームジッテを左から右に振る。


ビームジッテは後ろから迫る狙い直された弾をとらえ、二発目を放ったブレイヴさんへと軌道修正する。

跳ね返された弾とライフルから放たれた弾がぶつかり合い、相殺する。


ブレイヴさんは未だにライフルを撃った反動で動けない。

またとないチャンスだ。


「さっき煽ったことを後悔させてやる!」


俺は一気に距離を詰める。


流石にこの距離では逃げ切れないと察したのか、相手はライフルを一発上に向かって撃ち、手放す。そして、両手を体の前で構えると、二本のビームの鉤爪(かぎづめ)がそれぞれの手に装着された小手から展開される。


「何で近接武器のかっこよさまで負けないといけないんだよ!」


それはそれとして、今置かれた状況はあまりよろしくない。

相手は近接戦闘の準備ができている上、狙い直しによる時間差攻撃という保険が残っている。

今近接戦に持ち込んだら、間違えなく返り討ちにされる。


かといって、そのまま放置してしまえば、ライフルを回収してそのまま逃げられてしまう。

正直、また追いかけてもさっきと同じように逃げられてしまう気しかしない。相手有利の状況に持ち込まれるのは何としても避けなければいけない。


一見積んでいるようにも見える状況。

だが、今の俺には子言う状況にぴったりの武装がある。


「そういえばこいつの性能をまだ見せてなかったよなぁ!」


右肩のアンカーフックを射出する。

ワイヤーが迎撃しようと振りかざした相手の左腕に巻き付き、相手の動きが突然鈍くなる。


俺は再びビームジッテを左手に持ち替え、上から迫る光の弾丸に狙いを定める。


「自分の薬味わってみな!」


ビームジッテはきれいに弾丸を捉え、相手の機体へ打ち返す。


だが、相手も対応が早い。

右腕の関節を切り離し、真っ直ぐ飛んできた弾を曲芸的に避けると残された右手でライフルを回収する。


俺はアンカーフックを回収し、浮いている相手の機体の左腕を右手で握る。

武器としては心許ないが、無いよりはましだ。


相手は既に弾が無い。

リロードするにも、片手でやるには時間が掛かる。

片腕しかない今、手数の多い俺が近接戦で負けるはずがない。


「これで詰みだぁ!」



この時、俺は興奮しすぎて忘れていた。


狙撃機の一番大きな特徴を。



相手の機体が目の前に迫った瞬間、モニターの映像が歪む。


そして、元通りになると、目の前に相手はもういない。


「この程度で逃げられ―ッ!!」


相手が逃げた先を探そうと周りを見回し、絶句する。



何故なら、辺り一帯がライフルを俺に向けたブレイヴさんの機体で埋め尽くされていたからだ。


全一が増えました。


狙撃銃の性質は分かったけど、結局のところぶっ壊れ武装には変わらないんですよね。だって近くても強いんだもん。


何気に全開解説しようと思って忘れていたのが一君の早口部分。


「高誘導低弾速のスナイパー中で、予想だと一度ロックした敵に誘導している(正確には狙い直しだったけど)。一つのマガジンで撃てる弾数は三発で、マガジンを撃ち切ってから手動でリロードしないといけない。リロードの仕方はいろいろある中での難しいタイプのパターン2というもの。ビームジッテはスナイパー弾を跳ね返せる。ただ弾が飛ぶ方向は振り方に依存している。粒子バリアは機体コストが重い(他の武装があまり詰めない)けどその代わりに耐久性能がそれなりにあって展開するのが結構早い。」


実際にちゃんと説明すると結構長い。


次回は一視点。

実質解説パートと化していますが見ている側の反応をお楽しみください!

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