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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
二章:新たな帝王、そして古き者との対決
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被害者たち/The Victims


「『変態型』と呼ばれている機体たちだけど、他の型と違って戦い方じゃなくて共通の特徴を持った武装を装備しているからそう呼ばれているんだ。まあ、元帥さんと戦ったことのあるレイドラならある程度その特徴に察しが付いているんじゃないかな?」



ハンガーに帰還し、キャットウォークを歩きながら古兵は『変態型』について解説する。



俺は先週の練習期間を思い出しつつ、レイドラの質問に答える。


「大体はな。とりあえず、どの武装も全く他の武装にはない挙動で対応し辛いけど、基本的に一つの事に特化しているからそこを理解している相手には通用しない感じかな?」


古兵は頷く。


「それで大体の特徴は捉えているよ。言ってしまうと、『変態型』は運営の『失敗作』を必ず装備しているんだ。失敗作と呼ばれる武装は基本的に運用が難しくて応用が利かない代わりに、一つの事に特化しているんだ。まあ結局一番気にするべきなのは運用が難しいという点だ。明日のエキシビジョンマッチは初見で武装を使う必要があるから、失敗作を装備した変態型を使わされた場合はそもそも試合にならない可能性がある。質の悪いことにどの武装も全く違う特徴を持っているから準備の仕様がないけど、せめてどういう武装があるかだけでも紹介しようと思ってね。」



そう話している内に、最後の機体の前に俺達は辿り着く。


機体を見上げると、これまでの機体と違い、かなり特徴的な顔をした機体が俺達を見下ろしている。



一言でこの機体を表すと、「人間らしい」。

目、鼻、口といった人間の顔にある部位がしっかりと見受けられる。左目には傷の様な模様が刻まれており、長年修行を重ねてきた格闘家の様な風貌をしている。


顔から下もそのコンセプトを受け継いでか、ロボットらしくない曲線が目立っている。しかし、関節などは可動域に重きを置いたデザインとなっており、完全なる人間というよりはサイボーグを彷彿とさせる見た目に仕上がっている。



機体を上から下へと眺めた俺は、気になったことを古兵に聞く。


「…なんか武装少なくね?」


「『ムチブンブン丸』は内蔵武装が多いから少なく見えるだけであって、実際はそれなりの武装数あるからそこは心配する必要はないよ。


「…なんて?」


「だから、ムチブンブン丸は―」


「なんだよムチブンブン丸って」


「文句は名前を付けた元帥さんに言ってくれ。」


「もしかしてあの人の機体の名前全部こんな感じ?」


「そうだよ。機関銃持ってるやつは『ヒャッハー井上』で、デカい剣を持ってるやつは『切断太郎』、花型のシールドを設置する奴は『花子』だったと思う。」


「俺そんなふざけた名前の機体に負けたのかよ…」


「まあそう相手に思わせるためにそういう名前にしてる節があるからな。前にSNSで元帥さんの機体に対してキレてる人を見たけど、どれも機体名がアホ過ぎてキレてる方が滑稽に見えて少しかわいそうだった。」


「確かにヒャッハー井上がインチキだって嘆いても誰もまともに取り合ってくれなさそうだもんな…」



俺はムチブンブン丸の武装データを見る。


「それはいいとして、まずはこいつの武装確認だよな。メイン武装はビームウィップ、サブ武装は波動砲、ヒートナックル、脚部ジャイロモーター、そして…頭部遠隔操作爆弾?頭に爆弾が付いているのか?」


「そうっちゃそうだけど、違うっちゃ違う?」


古兵があからさまに目を逸らしているので何か裏があると思いつつも、変わった見た目の機体に二人で乗り込む。





ムチブンブン丸を少し動かしてみた結果、俺は以外な結論に至った。


「あれ、意外と動かしやすい?」


「ムチブンブン丸は変態型の近接格闘機だからな。武装がほぼ内蔵なのもあって、機動力は他の機体に比べてかなり高いんだ。スピードジャンキーのお前にはちょうどいいかもしれないが、普通のプレイヤーに取っては操作しづらいんだぞ?」



一通り機体の動かし方を理解したところで、武装確認に移る。


まずは腰に取り付けられた唯一の内蔵されていない武装であるビームウィップを握る。

起動すると、長いビームの縄が出現し、フワフワと宙に浮く。



「冷静に考えてみると、何で収束したエネルギーが物理法則に則った動きをしてるんだ?」


「そこはゲームっということで許してやれ。そんなこと言ってたら巨大ロボなんて操縦できないぞ。」


「まあ、それもそうか…とりあえず、ちょっと使ってみるか。」


「あっ、でも物理法則に則った動き自体は重要なことだからそれをちゃんと念頭に入れて動か―」




古兵が話し終わる前に振られたムチは一度伸びると勢い良く機体の方に戻り、ムチブンブン丸のコックピットに直撃する。


あまり見ることのない機体の撃破による爆発がトレーニング用の宙域に光輝いたのであった。






「なるほど、この武装を使うには現実のムチの挙動を理解していないといけないのね…」


「それに加えて無重力なのも考慮しないといけないのがさらに面倒くさいんだよなぁ…まず練習無しで使うのは無理よ。」



母艦の近くにリスポーンさせられ、俺は何故この武装が古兵の言っていた『失敗作』に分類されるか理解する。


恐らく、この武装は「範囲の広い格闘武装」として作り出されたのだろう。ある程度離れている相手でも攻撃を命中させることができるし、見た感じかなり威力も高い。これをうまく使えれば、理想的な格闘武器の一つになりえるだろう。

だが、実際に使ってみると、異常なまでに扱いづらい。そもそも現実でムチを使える人なんてほとんどいないし、それが無重力状態でとなるとさらに少なくなる。それをさらにロボットの操縦で再現するとなると、ほぼいないに等しいだろう。



「ちなみに、元帥さんはどうやって使ってるんだ?」


「前方で滅茶苦茶に振り回しながら突撃してる。射撃打ち消し効果があるし、一か八かで突撃を仕掛けてる。二割くらいの確立でムチが腕に当たって弾き飛ばされてるけど。」


「結局のところまともな使い方じゃないのか…」


「それにそもそも照射ビームとかには弱いから、その為の他の武装だ。そっちも一応確認しておくか?」


「そうするか。別にこのムチを使えるようになりたいとは思えないし。」


そういって他の武装を試し始める。





波動砲

手から青いエネルギーの弾を飛ばす。

そこそこ威力が高いけど、連射できないし、弾速が遅いからあまり当たりそうにない。古兵曰く至近距離で使うと強いらしいけど、それって飛び道具としてどうなんだ…?




ヒートナックル

拳が熱で赤く光り、素手の攻撃の威力を上げる。一応手の防御力も上がるらしい。

確かに結構威力は高いけど、そもそも拳で攻撃できる機会なんてそんなにない気がする。ムチが通用しない相手と戦うときに使うのか?

小ネタとして、ヒートナックルを起動した状態で波動砲を撃つとエネルギー弾の色が赤になって威力が上がるらしい。まあ弾の当て易さは変わらないから結局至近距離で使うらしいけど。




脚部ジャイロモーター

足を軸に回転できるようになる武装。


正直意味が分からん。


機体の方向転換が早くなったり回し蹴りができるようになるとのことだが、それにしては回る速度が速すぎる。目が回るわ、機体がねじれて弾け飛ぶわ、色々と散々だった。

あと本格的に昔やったレトロゲームのキャラクターみたいになってきてないか?





「つ、次で最後だよな?」


未だに回転しながら爆散した時の後遺症が残っているが、そのまま武装確認を続ける。


残っている武装は『頭部遠隔操作爆弾』。

どう考えても不穏な名前である。


「ちなみに、この武装はどうやって使うんだ?」


「発動したら待機状態に入って、もう一回発動したら爆発する。至って普通の爆弾だ。」


「さっきはあんなに詳細を濁していた割には素直に使えるんだな。で、起動したけど、何も出ないぞ?」


「そりゃ頭が爆弾なんだから、取り外して投げないと意味がないだろ。」


「前言撤回。ろくでもねえ武装だな。」



そう言いつつも、言われた通り右手で頭部を握る。

すると、以外にもすんなりと頭部が取れる。


「頭が取れてもメインカメラはちゃんと映るんだな。」


「メインカメラが胸部に取り付けられてるから当たり前っちゃ当たり前だがな。」


「こんなに人間っぽい見た目の機体なのにやってること全然人間っぽくないんだけど」


右手で思い切り頭部を投げる。ある程度遠くまで飛んだことを確認し、発動ボタンをもう一度押す。

すると、目の前で巨大な爆発が発生する。その大きさはかなり大きく、爆発の仕方から核兵器であることが推測できる。




後ろの席に座っている古兵はポツリと呟く。


「で、変態型を使ってみた感想は?」


「二度と使いたくねぇ。」



トレーニングモードを終了し、今日はもう帰路につくことにするのであった。


本人が搭乗していないにも関わらず初登場する元帥さんの機体。本人もそれなりに登場しているはずなのに悲しいなあ(他人事


変態型は考えてて一番楽しかった機体タイプです。ありったけのクソをつぎ込めば出来上がるからね。

そしてレトロゲー扱いされる有名格ゲー。まあ龍斗君はあまりゲーム詳しくないし、実際古いゲームではあるから多少はね?そしてムチブンブン丸は道着()


これにて紹介編は終了です。

次回からは波乱の生放送編。かなり重要な人物が登場する予定なのでお楽しみに!

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