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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
二章:新たな帝王、そして古き者との対決
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迫りくる静けさ/Silence Approaches


「よっしゃあ!これで数学の課題は終わり!あとはこの英文学の感想文を書けば終わりだぁ!」



龍斗の部屋で、俺は入力を終えた課題のページを閉じ、次の入力ページを引っ張り出す。


横で漫画を読んでいた龍斗は片方の眉を上げ俺を見る。


「だいぶ早かったじゃん。この調子だとちゃんと6時間寝れそうじゃね?」


「でもこの話普通に長いんだよなぁ…」



何故こんなに必死に課題を必死にこなしているのか。

その理由は今日の夕方ごろに(さかのぼ)る。





「はい、という訳で今日の授業は以上だ。週末の課題も忘れずにやってくるように。」


チャイムが鳴ると共に眼鏡をかけた担任の先生は教卓端末から認証カードを引き抜き、教室から出る。


教室全体が放課後の活動の準備をする中、俺は席からズルズルと崩れ落ちる。


「今週末に限ってこの課題量かよ...」




俺の親は俺が『空鉄の宇宙』をプレイしていることを知っている。


中学二年の頃に全国大会に連れてってもらったりしたので当たり前ではあるが。



そして、高校に入学直後にプレイを再開すると決めた時も両親に許可を取ってから再開した。


その時、両親から出された条件は一つ。



プレイすることが学業に支障をきたさない事。



それさえ守ればテツソラをやっても構わない。しかし、万が一学業を疎かにした場合はすぐにテツソラを止める。



そして、俺はずっとそのルールを守ってきた。

親もそのルールをちゃんと守り、俺が動画投稿を行っていることを知っても何も文句を言わなかった。

俺がちゃんと課題やテストをやっていれば、自由にテツソラができる。





それは逆に、課題やテストがある場合、テツソラ関係に注力できないということだ。



それが現在の状況である。


来週の月曜日までに提出しなければいけない課題を一気に出されたのである。



土曜日には生放送、そして日曜日には家族での予定。


金曜日は土曜日に備えてあまり夜更かしをしたくないのを考えると、課題をガッツリできる日は今日しかない。

でも、一人では(つまづ)いてしまった時に時間が掛かりすぎてしまう。



ならば、躓いた時に助けてくれる人が必要だ。




俺は何席か離れている龍斗の席まで歩き、俺に気付いた龍斗に対し手を合わせる。



「すまん、課題やるの手伝ってくれないか?」





「えぇっと、確かこの話の名前は『欲望という名の電車』だっけか。」


「ああ、その話か。結構胸糞悪い話だから注意した方がいいよ。」



放課後すぐに龍斗で勉強を始め、既に午後10時を過ぎている。



龍斗の家に泊まることはどちらの親からも許可をもらっている。


別にお互いの家に泊まるのも珍しくないため、お互いの親も完全に慣れている。



部屋に籠って勉強していても、特に心配して様子を見に来る様子もない。




だが、ちょうど最後の課題を始めようとしていたタイミングで扉を誰かがノックする。



流石に夜遅くなってきたため様子を確認しに来た龍斗の母親と判断し、俺は画面に映る文字を凝視し続ける。



「おっ、しず(ねえ)。こんな時間にどうかしたの?」



俺は勢いよく振り向く。

その勢いで手に持っていた端末が滑ってあらぬ方向へ飛んでいきかけるが、咄嗟に両手で捕まえる。



そして、部屋の入口には龍斗の言葉通り静香さんが立っいる。


どうやら既に風呂を浴び、寝る準備を整えた跡らしい。

普段の大人びた印象からかけ離れたかわいらしいピンク色の寝間着の静香さんは、少し眠いのか目が半目になっている。



突然そんな刺激的な光景を見せられて俺の体が手切れるはずもなく、先程何とかして救出した端末がそのまま両手からすり抜け絨毯の床に派手な音を立てて落ちる。



「おい、大丈夫か?その端末結構な値段する奴だろ?それに端末壊れたら課題できなくなるぞ?」



俺の後ろで龍斗が心配そうに俺に声を掛けるが、俺の耳には届いていない。



数秒間放心状態で静香さんを見ていると、少し恥ずかしそうに静香さんは頬を少し染めながら目線を下に向ける。


「その、化粧も何もしてないし、そんなにじろじろ見られたら恥ずかしいのだけど…」


その言葉でハッと我に帰る。


「す、すみません!こ、こんな夜遅く部屋に来ると思っていなかったので、少しビ、ビックリしちゃいました!べ、別にそんな隊は無いです、ハイ!」


焦って謝っていると、静香さんは静かな足取りで部屋に入り、落とした端末を拾い上げる。


「ほら、自分の物は大事にしないと。次から落とさないように気を付けのよ?」


「す、すみません、気を付けます。」


端末を静香さんから受け取る。


端末を返す時に、静香さんはちらりと端末の画面を見る。


「あら、英文学の課題?」


「あっはい、そうです。一応月曜日提出の奴なんですけど、週末予定があって出来そうにないので今日やっておこうかなと。」



静香さんは少し考えると、龍斗の方を見る。


「もしかしてその予定って龍斗のと同じ?」


「まあそうだな。一応主役は俺で、(はじめ)はアシストしつつ見守る感じだな。」


龍斗の答えを聞き、静香さんは嬉しそうに笑う。


「龍斗がのめり込めるものを見つけたのね。一君に誘ってもらったの?」


龍斗はベッドにもたれかかりながら答える。


「まあね。対戦ゲームなんだけど、とにかく動かすのが難しいのなんの。もう初めて二週間近く経つけど、限界値が全く見える気がしないよ。」


「へえ、龍斗でも難しいって感じるものがあるんだ。それで、そのゲームに関係する何かが土曜日にあるの?」


「生放送に招待されたから、それに出ることになった。一応知らされている内容としては新情報解禁とエキシビジョンマッチだったかな?」


「明確に言うと新武装とかの性能とかをチラ見セする機会だね。一応ほぼ毎月やってるけど基本的に毎回同じフォーマットだから今回も同じだと思う。」


その話を聞き、静香さんは興味深そうにしている。


「それで、一君はそれを見に行くの?」


「あっ、はい、一応いつもゲームをやっている場所と同じ場所から龍斗が配信に参加するので、せっかくなら一緒に行くことにしています。」



静香さんは考え込む。


そして、警戒していなかった俺達にとんでもない爆弾を落とす。




「ねえ、その日私も行っていいかしら?」




一瞬静香さんが言った事を理解できず、俺と龍斗はその場で固まる。


だが、聞き取った内容が聞き間違いではないと理解した瞬間、俺達は焦って静香さんを止めようとする。


「い、いや、しず姉、別に知らないものを見ても面白くないと思うし、そんな発表会みたいに見守る必要はないんじゃないかなぁ?」


「でも龍斗が自分から積極的にイベントとかに参加するのは初めてだから、一応見ておかないともったいないでしょ?」


「で、でも別に家からでも見られますし、わざわざ俺達についてくる必要はないんじゃないですか?」


「そこは龍斗が言ってた通り、分からないことがあるかもしれないから、そこは一君に色々説明してもらった方が分かりやすいでしょ?」



どうにかして説得しようとするが、全く揺るぐ様子のない静香さん。



俺は諦めの溜息をつく。


「分かりました。静香さんも来れるようにしておきます。それでいいですね?」


静香さんは嬉しそうに笑う。


「ありがとう。うふふ、なんだかデートみたいね。」


「いや、別に俺もいるからな?」


静香さんの発言に龍斗が突っ込みを入れているが、俺の脳はそれを既に認識していない。




今の俺の脳内は、静香さんが発した『デート』という言葉で埋め尽くされている。

脳内では静香さんが発した声でそのフレーズが無限ループで再生され、完全に天国と化している。


まさにエクスタシーと呼ぶに相応しい状態である。


「おーい、まだ課題は残ってるぞー、起きろー。」


龍斗に呼びかけられ、我に返る。


どうやら既に静香さんは部屋を出て行ったようで、部屋にいるのは俺と龍斗だけに戻っている。



「よし、一緒に行く人も増えたわけだし、絶対に今日中に課題を終わらせないとな!」


「おう、その調子だ。がんばれー。」


龍斗の気の抜けた応援の声を浴び、俺は集中力を最大にして課題図書を読み始める。




課題図書の胸糞悪さから回復するのに時間が掛かったのはまた別の話。


自分の趣味を初めて身内に見せるの意外とドキドキする。あると思います。


というわけで静香さん、『ペガサス』に襲来することが決まりました。公式放送編の一サイドに出る予定です。



あと本筋とは関係ありませんが課題図書は実際に自分が学生時代に出された課題図書です。割としっかり胸糞なので気になる方は注意して調べてください。



そして、今回で今年最後の投稿です!

実はここのところあまり書けてなくて、結構更新に追われている感じなんですが年始で余裕を取り戻せるよう頑張ろうと思います。


それでは良いお年を!

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