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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
二章:新たな帝王、そして古き者との対決
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希望と絶望/Hope and Despair


「お前ら敵にダメージが入ったからってプレイスタイル変わりすぎだろ!」


後ろから殺意が込められたビームと実弾の弾幕を浴びせてくる二機の機体から逃げながら、俺は悲鳴を上げる。


先程までの機雷を使って追い詰めるトリッキーな戦い方を行っていたコンビはもういない。今俺を追ってきているのは、傷を負った敵を捕まえ喰らいつくそうとする理性の欠片も無い猛獣二頭だ。そのおかげで機雷空域から抜け出せたのが不幸中の幸いだが。


現在、相手二機はもう使う武装を隠す必要はないと言わんばかりに装備された全ての武装を利用して俺を撃墜しようとしている。二丁拳銃やミサイルはもちろん、恐らく自衛用に装備されたグレネードまで投げてきた時はさすがに目を疑った。



だが、相手が追いたくなるのも無理はないだろう。


ヘパイストスは既に限界を迎えつつある。

出力が全体的に落ち、ちょっとした回避運動を行う度に機体全体が悲鳴を上げている。

ARWを展開する余裕はもうヘパイストスに残っていない。破壊されたARWを除きすべて背中に再び収納している。


機体の状態的に、持ってもあと三十秒ほどだろう。



この状況からどうやって巻き返せばいいのか悩んでいると、ふと目が試合時間を表示しているタイマーに行く。


現在は試合開始してから170秒。


古兵が砲撃を行ったのは試合開始十秒ほど。


ならば、あと20秒でリロードが完了する。

その一撃を命中させることができれば、勝利を掴み取ることができるかもしれない。


ビームを両方の敵に当てるには、一か所に敵を集める必要がある。

俺が囮になれば問題ないが、撃墜されるのが早かった場合そのまま無防備な古兵に行かれて負けになる。

そもそもこの作戦は古兵が砲撃を当ててくれる前提という欠陥はあるが、そこは何とかしてくれるだろう。


俺の役目は、古兵が砲撃を行うタイミングまで敵を引き付け、古兵の砲撃がちゃんと当たることを祈るだけだ。



やるべきことが決まったならもう迷う必要はない。


俺はヘパイストスを半バレルロールさせ、相手二機を正面にとらえる。


既に機体の耐久力がギリギリだからビームソードは使えない。

となると、使える武器は一つ。



俺は背中からARWを二機展開し、それらを両手で一つずつ握る。

格闘武器としては心許ないが、十分武器としては使える。


「ヘパイストス、あと二十秒だけ持ってくれよ!」


手前にいる黒い機体に向かって飛び掛かる。



反撃されることを予想していなかったのか、攻撃された相手は必死にピストルを撃つ。

しかし、その狙いは少しズレており、ヘパイストスの横をギリギリ通り過ぎていく。


「まずは一発痛いの喰らいやがれぇ!」


両手に持ったARWを相手の頭部に振り下ろす。


赤く光る三つのレンズが粉々に砕ける。

衝撃で黒い機体の頭部がひしゃげ、機体はバランスを崩す。


「おっと、まだお前はここにいてもらわないとぉ!」


後ろに逃げようとする相手に組み付く。

背中のARWをもう一機取り、念入りに背中のスラスターを潰す。



タイマーの表示は180秒。

リロードが完了するまであと10秒。



相方の方が焦った様子でミサイルを撃つ態勢に入る。


「でも大事な相方を撃つことは出来ねぇよなぁ!」


組み付いた相手を盾にし、スラスターを吹かしまだ無傷の方との距離を詰める。


相方を傷つけるのを危惧したのか、無傷の方は二丁拳銃を二丁のビームダガーへと持ち替える。



リロードまであと5秒。



残った二機のARWを振るが、既に出力はかなり落ちている。


相手は弱々しく降られた攻撃を難なく避け、ビームダガーを腹部に刺す。


ダガーの刃がコックピットを貫く。ギリギリ俺には直撃しなかったが、ビームの熱でパイロットアバターに生々しいダメージエフェクトが出ているのが分かる。


「この辺もリアルに再現しているのかよ…」



相手がビームダガーを引き抜くと、肉眼で相手の機体が見える。

現実だったら確実にパイロットは死んでいるが、その辺はゲームらしい。


相手は勝ち誇った様子で俺を見下ろしている。

動かなくなったヘパイストスのコックピットの中で、俺は呟く。



「確かにこの戦い、慢心した俺の負けだ。でも、勝負は『俺達』がもらって行くぜ。」



次の瞬間、辺り一面が光に飲まれる。


周りの隕石も、頭が潰された機体も、勝ち誇っていた機体も、破壊されたヘパイストスも、俺自身も、あらゆるものが無に帰される。


意識も真っ白になる中、とある考えが脳を過る。



今回ばかりは、この光は俺に取って名前通りの希望の光だったなと。






「いやー、完敗だったわ。」


再び格納庫のキャットウォークに戻り、大きく背伸びをしながらそう言う。



結果的に試合は勝てたが、最終的に俺は負けてしまった。


相手が慢心して撃墜した後も俺の傍にいたから何とか勝てたが、もし相手がすぐに逃げていたら負けていた可能性もある。


「古兵があそこで援護してくれて助かったよ。やっぱり長い間やっているだけあってその辺の状況判断は頼りになるよ。」



だが、それを聞いた古兵は少し困った顔で笑う。


「それだけ褒めてもらった後だとちょっと言いにくいけど、最後の砲撃はただの勘で撃っただけだぞ。」


「えっ?」


驚いて古兵の顔を見ると、気まずそうに頭の後ろを掻きながら説明する。


「いや、だってそもそも撃った距離からだと詳細な状況把握はできないからね。ビームとかの光はチラチラとは見えたけど、それ以外判断材料はないしね。最終的には勘で狙って、リロードが終わったら即撃っただけだよ。」


さっきまで心に沸いていた古兵を損益する気持ちが一瞬にして吹き飛ばされる。


「完全におみくじじゃねぇか。」


「何なら俺は最初からおみくじ感覚で撃ってるぞ。ちなみに今日の運勢は最高だ。ガチャを回したらすり抜けSSRを一本釣りできると思う。」


よく分からない例えを言い始める古兵。


だが、確かに勝てたことには違いはない。


「とりあえず、少しだけ二対二の戦術とかを教えてくれないか?さすがに次の対戦でも初見殺しされるのはごめんだ。」


「確かに教えておくべきだったな。じゃあ次の対戦に移る前に予習しておくか。」




古兵に二対二の戦術教えてもらった後、俺達は帰宅時間まで一緒にオンラインマッチに潜り続けた。


タッグマッチ戦終了!


実質ヘパイストス初めての敗北です。2対一とはいえ、まだまだレイドラは未熟なのでこれから経験を積んでいかないといけませんね。


そして今回の対戦相手の機体ですが、『シュヴァルツ・ヒュプノス』と『シュヴァルツ・タナトス」です。



ちなみに、機体の名前ですが、お気づきの通りいろんな神話などの登場人物が多いです。今のところ違うのはバトラック系統だけですかね。


まあ理由は単純で、単純に楽だからです。良く使われる名前が多いですし、ある程度のかっこよさが保証されるので。



一応大晦日にも投稿するつもりです。

今年も残り少なくなってきましたが、皆さん体調を崩さないように気を付けてください!

では!

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