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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
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出撃準備/Battle Preparations

キャラクターのイメージ的にちょっと違うなと思ったので古兵の描写を少し変えました。


フルダイブVRハブ『ペガサス』の内装は独特な外装と違い一般的なフルダイブVRハブとあまり変わらない。

階段を降りたすぐ近くには受付カウンターがあり、そしてその先には壁に沿って二十台ほど球体型のフルダイブVR筐体が設置されている。それぞれの筐体の前には順番待ち用の椅子が設置されている。部屋の奥には数台のモニターが設置されていて、それぞれの前には人が集まって画面に映る映像を見ながら話している。

『ペガサス』が他のフルダイブVRハブと明確に違うのは、ゲームごとに異なるはずのVR筐体のデザインが一つしかないことくらいである。


店内の様子を眺めている龍斗を横に、俺は受付で龍斗が入店するための手続きを済ませる。手続きが終わると、龍斗に印刷されたばかりの会員証を渡す。


「これ龍斗の会員証。これ使えば次から簡単に入れるから。」


「おう、ありがとう。で、結局その企画って何をするんだ?何かチャレンジでもあるのか?」


「ただゲームをするだけだぞ。」


「...えっ?」


龍斗は豆鉄砲で撃たれた鳩のような顔で俺を見る。だが実際、今日の企画の内容はそれだけなのだ。


「まあ実際にやってみたら何故それだけで企画になるのか分かると思うよ。」


そういいつつ、俺は龍斗を連れて部屋の奥にあるモニターの一つの前に行く。そこでは、さっき入り口で会った元帥さんがパソコンにマイクを繋ぎ、配信の準備を行っている。


「よし、配信の準備はできたぞ。端末と繋げばいつでも配信開始できるぞ。」


「ありがとうございます。お礼というわけじゃないですけど今度視点提供しますよ。」


「マジ?お前の視点再生数伸びるから助かるわ。まあ適当に放送見ておくから手伝い必要だったら言ってくれ。」


そう言うと、元帥さんは他のモニターの前で駄弁っているグループの方へそそくさと歩いていく。


元帥さんを見送りつつ、俺はパソコンに携帯端末を接続する。そして、空鉄の宇宙のホームページから新規アカウントの作成を開始する。そして、とある項目にたどり着くと隣で画面を見る龍斗に問いかける。


「そういえばさっきしばらくゲームやってないって言ってたけど、ネット用のハンドルネームみたいなのはあるのか?さすがに生放送で本名呼ぶのはあまり良くないし、もとから使ってるハンドルネームとかあったらそれを使うんだけど。」


龍斗は少し考え込むと、少し恥ずかしそうな顔をする。そして、目線をそらしながらぼそぼそとした声で呟く。


「…イドラ。」


「え?なんて?」


「レイドラ!中学生の頃に考えたやつだから恥ずかしいんだよ!」


顔を真っ赤にした龍斗は、必死な言い訳を始める。その理由を少し考えてみると、ピンとくる答えが浮かび上がる。


「もしかして荒れる龍でレイジング」


「それ以上はいうな」


龍斗に物理的に言葉を遮られながら、PN(プレイヤーネーム)欄に「レイドラ」と入力する。他の情報の入力を済ませ、アカウント作成を完了する。


「よし、アカウントもできたし、放送を開始するけど龍斗はいいか?」


「正直未だに現状を把握できていないけどなるようになるだろ。」


「オッケー、じゃあ開始するぞ。とりあえず放送中は「古兵」って呼んでくれ。」


そう言い、放送開始ボタンを押す。





未だに状況を呑み込めていないまま、俺は放送を開始したはじめを見つめる。


「はい、皆さんこんにちわー。今日は前から言ってた初心者企画をやりまーす。」


いざ放送が開始されて気づいたのは、想像していた数倍緩い雰囲気だったことである。一は視聴者が集まるのを雑談しながら適当に待ってから、本題を切り出す。


「じゃあ今日の犠牲者を紹介します。リア友のレイドラくんです。」


そういい、一は俺にマイクを渡してくる。マイクを受け取り、自己紹介を行う。


「どうも初めまして。レイドラです。」


簡潔な自己紹介を済ませ、すぐに一にマイクを返す。マイクを押し付けられた一は一瞬びっくりした表情で俺を見るが、すぐにマイクに向かって話し始める。


「自己紹介が終わったので軽い企画説明を行っていきます。」


企画説明と聞き、俺は少しでも企画の情報を得ようと聞き耳を立てる。


「レイドラ君に空鉄の宇宙をプレイしてもらいます。以上です。」


まともな説明があるのかと思っていた自分が悪かった。

俺が結局変わらない状況に対し頭を抱えている中、一は続ける。


「まあ一応アシスト機能を使って多少はサポートしていきます。それに、俺がレイドラを連れてきたのは、こいつなら初見でも形になる程度にプレイできると思ったからです。」


一の言葉を聞いて、俺は少し違和感を覚える。なんでたかがゲームをやるだけなのに大事みたいな言い方をしているんだ?本当にこの企画は俺じゃないといけないのか?そのような疑問を浮かべていると、一は企画説明を終えて一度マイクを切る。配信の設定をいじっている一に、疑問を投げかける。


「なあ、結局これからやるゲームってどんなゲームなんだ?」


一は設定を終わらせ、立ち上がりながら答える。


「ジャンル的には本格ロボット対戦アクションだったかな。内容としては…まあある意味ジャンルそのままだな。」


またもや曖昧な回答しか行わない一に少し苛立ちを感じつつも、球体型の機械へついていく。一は一番近くにある球体にあるハンドルを引くと、球体の一部が扉のように開く。


「中に座れば後はシステムボイスの言う通りにすればいいから。フルダイブの中でまた。」


そういうと、一は隣にある球体の扉を開き中に入る。とりあえず一の言う通り球体の中に入り、座席らしき場所に座り扉を閉める。すると、機械的な声が鳴り響く。


「背中をしっかり座席の後ろに付けて力を抜いて座ってください。」


機械音声の言う通りにすると、再び同じ声が流れる。


「接続を開始します。頭を動かさないように注意してください。」


そういうと同時に、頭上から機械が被せられる。それが目の前まで降りてくると、再び機械音声の指示が鳴り響く。


「目を閉じたらフルダイブを開始します。いってらっしゃいませ。」


その指示を聞いた俺は一度深呼吸をする。そして、目を閉じ人生で初めてのフルダイブを開始する。





目を開くと、一瞬前までとは全く別の場所に座っていた。


先程までいた機械の中より少し広いその空間は、球体型の壁が全天周囲モニターになっており、その中心に今座っている座席が浮いている。手元には届く範囲の其処彼処に指先で押せるサイズのボタンや片手で引くことのできるほどの大きさのレバーが配置されている。両足の足元には3つずつペダルが並んでいて、現在座っている場所が「コックピット」であると分かるには十分なものであった。


状況確認が終わったあたりで、後ろから声がする。


「ちゃんと接続できたみたいだな。」


席の中で頑張って振り向くと、後ろの少し高い位置に痩せ気味の眼鏡をかけた男が座っている。その男性に見覚えはなかったが、発せられる声は間違えなく幼馴染の一のものであり、それが「古兵」のゲームアバターであると気付くのには時間が掛からなかった。


「ランダムアバター生成はなかなかのあたりを引いたみたいだな。やっぱり元がイケメンだとアバターもイケメンになりやすいのか?」


そう言われて、自分が普段と違う見た目ということに気付く。自分がどんな見た目なのか気になり、古兵に聞いてみる。


「今の俺どんな見た目なんだ?」


「赤い髪の毛の熱血系のイケメン。」


「だいぶ派手な見た目になったな…で、今はどういう状況なんだ?」


「ゲームのジャンルから分かると思うけど、ここはロボットのコックピットの中だ。今は出撃準備を完了するのを待っている状態だな。ちなみに出撃準備完了は両側の一番外側にあるペダルを踏み込むことでできるぞ。」


俺はその言葉を聞くと、即座に両足の一番外側のペダルを踏み込む。すると、これまでいた狭い空間の前方にあった扉が開き、通路らしき場所に繋がる。だが、機体が前に進む気配は一向にない。


「これってどうやって前に進むんだ?」


動かし方が分からず古兵に聞くと、古兵は丁寧に説明をする。


「今はまだ出撃準備が完了して、待機所がカタパルトに繋がっただけだ。自由に動けるようになるのはカタパルトから発進してからだし、とりあえず発進しよう。右の内側にあるペダルを踏み込み続けて。」


そう言われ、右の内側にあるペダルを思い切り踏み込む。すると、空間全体が激しく振動し始める。


「あっ、発進するときはかなりのGが掛かるから気を付け―」


古兵が話し終える前に、勢い良く機体が動き出し俺は席に叩きつけられる。激しい揺れの中、外が機械的な通路から真っ暗な宇宙に変わるのが見える。


ペダルから足を外してしばらくすると揺れが収まる。落ち着いたところで、古兵は再び話し出す。


「まあこれで自由に動けるようになったわけだが、操作の仕方が分からなければ何もできないから操作確認から始めよう。トレーニングモードだとそれぞれのボタンやペダルに説明が表示されるから、好きなものから見て言ってくれ。」


「こんなにボタンとかレバーあるけど、これ全部使うのか?」


「それぞれの説明を見ていけば分るよ。」


そう言われ、早速右手の手元にあるグリップ部分に複数のボタンがあるレバーを見る。すると、レバーの上にウィンドウが表示される。


『右手操作用レバー』


「…まさか。」


嫌な予感がし、先程まで踏み込んでいたペダル達を見る。すると、それぞれに『バックパックスラスターペダル』『右足裏スラスターペダル』『左足裏スラスターペダル』という表示が現れる。


「…なあもしかしてこれって。」


俺がそう切り出すと、俺が言わんとすることを察したかのように古兵は答える。


「その通りだ。このゲームの操作は、『現実にロボットが存在した場合、このように操作する』というコンセプトを元に作られている。だから、すべての操作をマニュアルで行う必要があるし、それを行えるようになってやっとこのゲームの『スタートライン』に立てるんだ。」


この瞬間、自分の中で噛み合っていなかったすべてのギアが噛み合った。




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