G作戦/Plan Gemini
メリークリスマス!
何故かクリスマスイブに一人で映画館行くのが習慣になってます。
「おっ、遂に避けられたか。」
ビームが頭上を通り過ぎて十秒ほどたったが、試合終了のファンファーレは鳴っていない。
より一層警戒を強めながら、浮いている岩の間を縫うように飛翔する。
ARWの特性上開けた場所の方が正確に動かせるが、敵がどこにいるか分からない状態で開けた場所に行くのは「奇襲してくれと」というのと同じようなものだ。
いつでも攻撃に転じられるようにARWを機体の周りを停滞させる。
しかし、いつまでたっても全く動きが無い。
「ここにはいない、のか?」
そう思い場所を移動しようとした途端、状況が突如に動き出す。
目の前にあった隕石が爆発する。
飛び散る岩を避けようと動いた先にあった隕石も爆発する。
爆発、爆発、さらに爆発。
先程までの静けさがウソだったかのように、辺り一面は爆発で埋め尽くされる。
「クソっ、こんな状況の中じゃARWがうまく使えねぇ…!」
余計な被害を受けないようARWをヘパイストスの背中に収納し、爆発を避けるのに専念する。
だが、相手もそれを待っていたらしい。
突然、隕石の裏から二丁の銃を両手で構えた黒い影が出現する。そして、ARWを収納して無防備になったヘパイストスに向かって射撃を開始する。
「敵の術中にはまってしまったか!」
降り注ぐビームの弾幕を強引に回避する。
その間も、周りでは隕石が爆発し続けている。
それと同時に、何故相手が最初のビームを避けられたのか理解する。
「有利なポジションを取りにいかなくても、有利なフィールドを自分たちで作れるのか…!」
相手を自分たちが作ったフィールドに誘き寄せ、気づいた時にはもう手遅れ。
言うなれば、羽虫を巣で狩る蜘蛛を真似た戦術である。
だが、俺は既にかなり移動している。
流石に罠を設置できる範囲には限りがあるだろう。この地獄からできるだけ早く抜け出すため、加速する。
しかし、予想外の事態が発生する。
「なっ、いつの間に?!」
先程まで俺の後ろから追っていたはずの機体が、突然目の前に現れる。
突然の出来事に、俺は必死に思考を巡らせる
いつ見逃した?ずっと相手の機体は後ろから追ってきていたはずだし、ヘパイストスより速い機動力を持っているとはとても思えない。
いや、実際まだ後ろからビームを撃たれている。
この機体は先程まで俺を追ってきていた機体ではない。
となると、この機体の正体は―
「お前は相方の方かぁ!」
ビームソードを展開し、相手の弾を防ぐ。
そのままの勢いで斬りかかろうとするが、相手は脚部から誘導ミサイルを撃ちつつ後退する。
ミサイルをすべて一振りですべて切り払い、相手と対面する。
真っ黒な装甲。怪しく光る赤い三つ目。背中に背負われた大きなバックパック。両手に持たれた二丁拳銃。
そのあらゆる部分が全く同じ見た目の二機がヘパイストスを見下ろすように立ち塞がる。
「やっとのっぺり顔じゃない奴と戦えると思ったら、よりにもよって双子コーデしてるやつと戦わなきゃいけないのかよぉ!」
そう叫び、俺はARWを展開しつつ突撃する。
◇
「あっ、そういえば…」
クールダウンが終了するのを待っていると、ふと自分のミスに気付く。
「タッグマッチには一対一にない戦術があることは言ってたけど、その詳細は解説していなかったな…」
タッグマッチの戦術は一対一の試合に比べかなり幅広い。役割分担が可能なことにより、一対一では使いにくい武装でも輝く機会が与えられるのが一つの要因だ。
だが、役割分担だけが使用される武装の範囲を広げているわけではない。
とてつもない武装数を誇るテツソラでは、見た目が似通っている武装も存在する。大抵それらの武装は簡単に付け替えられる同規格武装という設定だが、中にはほぼ全く同じ見た目の武装も存在する。
敵が武装しているのがどちらか分からないというのはそれだけでも驚異的だが、行った一の場合どちらの性能も覚えていれば問題はない。その為、一対一の対戦ではあまり使われていないものが多い。
しかし、全く同じ見た目の相手が二人いて、それぞれが違う武装を装備していた場合、さらに見分けが付けにくくなる。敵が一度武装を使っても、どっちが使ったか分からなければどっちも警戒し続けなければいけない。
実際のパワーより大きなプレッシャーを敵に与えられるのがこの戦術の利点だ。
実際、この戦術は現在のタッグマッチの環境ではかなり上位に食い込んでおり、かなり良く使われている。
基本的に設計しないといけない機体が一機だけというのもあり、手軽さもおあるこの戦術は、必然的に同じ見た目になることから「ジェミニ戦法」や「双子戦法」などと呼ばれている。
もし今回の対戦相手がこの戦法を使っていた場合、レイドラは少し苦戦を強いられるかもしれない。
そんなときの為にも、俺がアシストできるようにしとかなければいけない。
クールダウンタイマーを確認すると、ちょうど『ホープライト』のクールダウンが終了し、冷却機構が収納されていく。
「よし、援護ができる位置まで移動するか!」
巨大な銃を背負い直し、俺は戦闘の光が見える方角へ向かっていく。
◇
二機の黒い機体と戦闘を開始してしばらく。
「クソっ、また爆発のせいでどっちか分からなくなった!」
二機ともいる状態になったら機雷を使わくなることを期待していたが、どうやらそうでもないらしい。何回目か分からない仕切り直しに、俺のイライラゲージはかなり溜まっていた。
直接戦ってみた感じ、一人一人はそこまで強くない。恐らく、初心者大会で戦った剣崎氏の方が強いだろう。
だが、問題は相手の連携だ。どちらにもARWで圧を掛けているが、三つだとやはり決定力に欠ける。どちらか一人を重点的に攻めなければ状況は変わらない。
しかし、どちらか一人を攻めようとすると、もう片方がカバーに入る。それはマシンガンによる射撃だったりミサイルだったり機雷だったりと様々だが、とりあえず言えるのはどの選択肢を取っても、相手がどちらかが分からなくしてくることだ。
少し自分の中で焦る気持ちが生まれる。
このままでは相手のいいように翻弄されているだけで試合が終わってしまう。
そうなるくらいなら、一か八かの勝負に出た方がいいのではないだろうか?
そう思い、ARWをすべて片方の機体に飛ばす。
「こっちはカグツチで近距離兵装なしの格闘戦は練習したんだ!ARW無しでもやってやる!」
バルカンを乱射しながらビームソードで斬りかかる。
相手はバックステップでギリギリ回避し、脚部のミサイルを発射する。
俺はチャンスが来たと確信する。
「そいつはもう見た!その程度で迎撃できるおも―」
ミサイルを切り払おうと構えた途端、ミサイルが機体の横腹に直撃する。
機体が激しく揺れ、ARWの動きが乱れる。それに気付いた相手は、両手のピストルを一つのARWに対し接射する。
ダメージに耐え切れず撃たれたARWは小さな爆散する。
何とかして他のARWを呼び戻し、今度は俺が相手から距離を取る。
「見た目は同じなのに武装は違うなんてありなんかよ…」
状況は最悪。
数十秒前の慢心していた自分をぶん殴りたいと思いつつ、ギラギラと光る六つの目から逃げることにした。
タッグバトル遂に開幕!
と言ってもレイドラ君がボコられてるだけの気もしたり。
まあ基本的に人数有利は状況有利に繋がるのはどの対戦ゲームでも言えることだと思うので、人数有利を取られてもなお圧倒できるのはある意味リアルチート能力ですね。
そして、対戦回の途中でなんですが、次回は一度投稿を休ませてもらいます。
その代わりとは言っては何ですが、ショートエッセイ的なものを投稿する予定なので良ければそちらも読んでいただけると幸いです。
年内には後半も投稿するので何卒よろしくお願いします!
では!




