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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
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企画始動/Operation start


龍斗(リュウト)、今日の夕方暇?」


昼休みの教室で、購買で買ったパンを貪る幼馴染の荒谷 龍斗(あらや りゅうと)に俺は問い掛ける。口に含まれたパンを飲み込むと、龍斗はすぐに答える。


「暇だけど、なんかやりたいことでもあるのか?」


「まあ、龍斗と一緒にちょっとやってみたい企画があってね。」


そう返すと、龍斗は一瞬考え込むが、すぐに頷く。


「企画ってことは動画投稿関連か。俺にできることであれば何でも手伝うよ。」


「ありがとう!じゃあ授業終わった後な!」


上手いこと予定を取り付けた俺は、自分の席に戻り携帯端末で企画の準備を始める。







幼馴染の俺からみて、荒谷 龍斗は天才である。


家が真隣で同い年だった俺たちは、気が付いた時からずっと仲良しだった。毎日のように一緒に遊んでいるうちに、友達より兄弟に近い関係性になっていた。そんな兄弟のような間柄だということを抜きにしても、龍斗が優れている人間だということだということは一目瞭然だ。


龍斗は何をやっても短時間で完璧の限りなく近く持っていくことができる。小さい頃からさまざまな習い事に手を出し、どれも驚く速度で上達した。音楽をやれば賞を取り,勉学であればすぐさま学年で1位、スポーツをやればそのスポーツが個人であれチームであれ優勝に導く。それに加え優れた容姿も兼ね備えているのだから,龍斗は完璧な人間と呼んでも過言ではない。


だが、その完璧さは龍斗にとって祝福であると同時に呪いでもある。通常の人間が長い時間と弛まぬ努力を注ぎ込んでやっとたどり着けるような境地に、ものの数日でたどり着けてしまう。それは多分龍斗にとって退屈でしかなかったと思う。それを示すかのように、龍斗は一つのことを長い時間やったことはない。長く続くものでも、数ヶ月後には飽きてやめてしまう。


でもだからこそ、俺は龍斗にやらせてみたかったことがある。それは5年程前に稼働し始め,その難易度故にプレイ人口が少なかったゲーム。それと同時に、俺が長時間絶やし遊び続けた魂のゲームでもある。


「空鉄の宇宙」。VRゲーム黎明期の最難関のゲームに天才が通じるのかを。





長い付き合いの中で気づいたのは、幼馴染の古川 一(ふるかわ はじめ)は自分の「理想」ということである。


一は、一般的に「普通」に部類されるタイプの人間だ。勉強も運動も平均、見た目も黒上メガネのどこにでもいそうな一般男子高生だ。同じクラスの連中でも、一の名前と顔が一致する奴は半数ほどしかいないだろう。


そんな一がどうして俺に取って理想なのか。それは一が「不屈の精神」の持ち主だからである。

小さいころから、俺達は何をするにもずっと一緒にいた。それはつまり、一は常に俺と比べられるということである。どれだけ勉強でいい結果出ても、スポーツで活躍しても、音楽で難しい曲が弾けても、結局のところは俺より劣っていると評価される。普通の人であれば、とっくに性格が歪んでいても、俺との縁を切っていてもおかしくない。


それでも、一は挫けない。評価されることがなくても、常に自分を磨き続ける。その成果は、結果として表れている。塾の講師に無理と言われたにも関わらず俺と同じ高校に入り、平均点以上を取り続けている。どのスポーツもそれなりに活躍ができる程度には心得がある。楽譜はどの音部記号でも読むことができる。

そして何より、一は俺の親友であり続けてくれている。俺と一緒にいれば評価されないと分かっているにもかかわらず、変わらず隣にいてくれる。それどころか、俺の我儘にまで付き合ってくれる。そんな一は、俺にとって替えの利かない唯一無二の最高の友達だ。


だから今日の昼一にある企画に付き合って欲しいといわれた時、俺は内容を聞かずに受け入れた。どんな無茶を言われても、俺に求められている役割をこなしてみせる。それが、俺があいつにかけてきた迷惑に対する唯一の報いる方法なのだから。






放課後。

午後のホームルームが終わると、急いで荷物を片付けて、龍斗の席に向かう。


「龍斗、準備が終わったら一緒に行こうぜ。」


「そういえば聞いてなかったけど、結局どこに行くんだ?」


鞄に教科書をしまいながら、龍斗は当然の疑問を投げかけてくる。伝え忘れたことに気付きしまったと思いつつも、隠すようなことでもないのですぐ答える。


「駅近くにある『ペガサス』っていうフルダイブVRハブ。龍斗は行ったことあるか?」


「いや、無いな。その口ぶりだと、例の企画はVR関係なのか?」


「具体的に言うとフルダイブVRゲームだな。」


そう話しているうちに龍斗も片づけが終わり、鞄を片手に席を立つ。


「ゲームかぁ、しばらくやってないな。最後にやったのは小学生のころにやってた対戦ゲームとかか?」


そう懐かしむ龍斗に対し、俺はニヤリと笑う。


「今のゲームはすごいぞ。今からでも度肝を抜かれる準備をしといたほうがいいぜ。」


「そこまで言うんだったら楽しみにしているよ。」


その後も他愛のない話をしながら、俺たちは正門を出て目的地へ向かった。




「なあ…本当にここで合っているのか?」


不安そうに龍斗は俺に聞いてくる。でもそう反応するのも無理はない。


俺たちがいるのは駅から徒歩数分、大通りから少し離れた場所。近代的な建物に囲まれる中、フルダイブVRハブ『ペガサス』は異彩を放ちながら佇んでいた。

時代を間違えたかのような派手なネオンライト。数十年の貫録を感じさせる風化しかけたレンガの壁。そしてその壁の真ん中には人一人通れる広さの地下に向かう階段。それは最新技術を置いたVRハブというより一昔前に見られたバーを彷彿とさせる場所であった。


「まあ外観は店長の趣味でこんな見た目だが、中はちゃんとしているから大丈夫だぞ。」


不安を解消しようと思いそういうが、龍斗から怪訝な表情のままだ。どうしたものかと困っていると、後ろから声を掛けられる。


「おっ、誰かと思えば古兵じゃん。」


振り向くと、そこには俺がよく見知ったアロハシャツを着た金髪の青年が立っていた。


「なんだ、だれかと思ったら元帥さんじゃないですか。びっくりさせないでくださいよ。」


俺は話しかけてきた元帥さんに対してそう返す。元帥さんこと焼餅元帥は俺の隣で状況を呑み込めていない龍斗の方を見ると、納得したような顔をする。


「こいつがお前の言っていたジャンク屋適性のあるやつか。」


「そうです。やっと予定があったので企画を今日やろうと思いまして。」


「いいよなぁ友達がいる奴は。俺もテツソラ誘える友達欲しいよ。」


「テツソラに関しては誘うハードルがそもそも限りなく高いですけどね…」


元帥さんと雑談を始めていると、龍斗はこっそり話しかけてくる。


「もしかして一の知り合い?」


「ああ、紹介するよ。ゲーム友達で動画投稿者として同業者の元帥さんこと焼餅元帥さんだ。配信の準備も手伝ってくれるんだ。」


「そいつは初耳だが今準備を手伝うことが決まった焼餅元帥だ。よろしく。」


元帥さんが自己紹介をすると、龍斗は軽くお辞儀をして返す。


「初めまして。荒谷 龍斗です。」


「うわ、本名での自己紹介とか聞いたの一年振りかもしれねえ…」


「城戸さんはもうちょっとちゃんとした人間関係を築いて下さい。」


「こういう話の時にしか自分の名前聞かないから段々本名が罵倒に感じるようになってきたよ…」


「本当に末期じゃないですか」


自己紹介も一通り済んだところで、元帥さんは階段の前に向かう。


「外にいても何も始まらないんだし、とりあえず中に入ろうぜ。入り口はこんなんだけどちゃんと国公認のハブだから心配することはないぞ。」


そう言い元帥さんは一足先に階段を降りていく。龍斗は俺の方を見ると、諦め混じりの笑顔を浮かべる。


「これ以上迷っていても時間が過ぎるだけだから降りるか。」


「その言葉を待ってたよ。」


そういい、俺達は元帥さんの後を追うように『ペガサス』へ通じる階段を降りて行った。


初めての連載小説なので緊張しながら投稿しました。


現在二日に一回ペースで投稿できるよう頑張っているので気長に読んでいただけると助かります。

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