表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
18/41

祝砲/Salutation


決勝戦は既に終盤。


レイドラは狙撃を行った剣崎氏に向かって突撃している。



「お前から見てこの展開どっちが有利だと思う?」


元帥さんが俺に質問を投げかける。恐らく元帥さんは自分と同じ結論だと思うが、配信の都合上説明を絡めて答える。


「そうですね。まず崎氏がARW(オールレンジウェポン)に対応できるかどうかですが、正直この試合内容では判断できません。ですが、わざわざこのリスクを負ってまでコロニーを敵対させたことから恐らくプレイヤー本人はその自信はないと思います。機体の状況で言うと、レイドラのヘパイストスは主力兵装のビームソードを一つ失ってはいますが機動力に大きな影響はありません。機体のエネルギー残量もかなり減ってはいますが問題ないはずです。一番の痛手はARWが三機しか残っていない事ですね。対してバトラックIIは脚部をやられているので少し出力が落ちていますが、武装はほぼすべて残っています。総合的にレイドラが6、剣崎氏が4でレイドラ有利だと思います。」


「丁寧な解説ありがとさん。この調子なら公式配信に呼ばれるんじゃね?」


「公式配信に呼ばれないの結構気にしているんであんまりいじらないでください…」


「お、おう」


弱点を突かれ弱音を吐くと元帥さんが少し気まずそうな声を上げ、場が変な空気に染まる。


だが変な空気はすぐに消え、俺と元帥さんは再び画面へと目を向けたのであった。





俺の接近を確認したバトラックは背中を向けることなく距離を取り始める。


恐らくARW相手に背中を向けるのは悪手だと理解しているのだろう。

だがARWは頭の中で考えるだけでは対策できない。



俺はヘパイストスの周りを停滞させていた三機のARW展開し敵を囲み込むように移動させる。


周りを旋回し始めたARWに対し相手はあからさまに警戒する。

ライフルを構え、いつでも迎撃できる状態を維持している。しかし、ARWを警戒しているとはいえ俺に対しての警戒を解いた訳ではない。現に、周りのARWを追いつつも、常に俺が見えるように動き回っている。


だが、膠着状態を維持しても何も始まらない。手始めにちょうど相手の背後にいたARW一機を突撃させてみる。



俺の命令通りARWは急に方向転換しバトラックに向かって突撃する。その方向転換が行われるのは一瞬で、気づいた時には敵のすぐ傍まで接近している。


だが、相手は反応していた。ARWが動き出した直後、バトラックは前転し、逆さになった状態でライフルを接近するARWに向かって撃つ。このままだとビームがARWに直撃すると察知した俺はARWにビームを回避させる。


「そこだ!」


相手の目がヘパイストスから離れた隙に急接近する。もちろん相手もそれを想定しているだろうが機体を完全に方向転換することはできないためライフルでの迎撃はできない。他の武装があるのであればそれらを消費させることができる。



相手は少し機体を回転させ、腕をこちらに向ける。前腕部が展開し、二つの銃口が姿を覗かせる。そして、展開されると同時にロケットグレネードを発射する。


俺は飛んできた弾を咄嗟にビームソードで防御する。一応防ぐことはできたが、突撃の勢いは完全に死んでいる。

まだ攻撃をしていないARWで再び攻撃を仕掛けるが、一つはライフルで攻撃を中断させられもう一つはギリギリ掠った程度で避けられてしまう。



ヘパイストスで再び攻撃する準備をしていると、バトラックが攻撃を仕掛けてくる。


残った脚部の側面に装備されたコンテナが開き、ミサイルが発射される。

あまり弾速が速くないので余裕をもって避けようとすると、ヘパイストスを追う様にミサイルがついてくる。


「ちっ、誘導ミサイルかよ!」


残り僅かの頭部バルカンでミサイルを迎撃する。すべて迎撃できる前に弾切れになってしまったが残りはビームソードで叩き切る。


その間にもARWで相手に攻撃を試みる。しかし、相手は既に3機の相手に対応しきっている様子だ。ビームライフルによる迎撃と最小限の行動での回避を徹底してダメージコントロールを徹底されている。多少傷つきながらも、弱っている様子はない。



ミサイルを何とか退け、機体のエネルギー残量を確認する。このゲームは機体を動かすためにはエネルギーが必要だ。一割を切ると大幅に機能が低下し、ゼロになると機能停止する。どんなに状況が有利でも、エネルギーがなくなってしまえば確実に負けになる。


ヘパイストスのエネルギー残量は既に二割を切り、機能低下まであまり時間が無い。コロニーとの戦闘で大分消耗したのがかなりの痛手だ。

それに比べ相手は動いていないのでまだ余裕があるだろう。長期戦に持ち込まれれば俺の方が不利になる。




でもこういう状況でこそ輝くのがヘパイストスという機体だ。


相手の方を見るとちょうどヘパイストス、バトラック、コロニーが一直線に並んでいる。

俺が求めていた条件は揃った。ビームソードを展開し、バトラックに向かって真正面から強襲する。



突撃する俺を見ても焦った様子はない。むしろ待っていたと言わんばかりに腰に手を伸ばし、グレネードを軽く前に投げる。それと同時に目を覆い隠すようにバイザーが展開される。


予想通り相手はまだ俺を迎撃するための武装を残していた。このまま進めばフラッシュグレネードはヘパイストスの顔面に直撃する。俺が今から回避行動を取ってもセンサーに多少のダメージを追うのは免れない。これが決まれば形勢逆転するのは確実だ。



だが、その余裕が相手の油断を誘った。


「そいつを使うのを待ってたよ!」


俺はそのまま突撃を仕掛ける。

相手によって投げられたグレネードはヘパイストスの顔面に直撃する。その衝撃によりヘパイストスの頭部はひしゃげ、モニターに映る映像が歪む。


だがそんなダメージはどうでもいい。


相手はフラッシュグレネードの対策の影響で前を見ることができない。自分から視界を塞いでいるんだ、それを利用しない手はない。



相手の前まで接近した俺はビームソードを相手の右足目掛けて切り払う。


それと同時にフラッシュグレネードが背後で爆発するが、もはや関係ない。ビームソードの出力が下がり始めているのを確認し、ビームソードを収納する。そのまま俺は残った片腕で相手に組み付き、勢いのまま相手をコロニーの方へ押し込む。



急に攻撃を受けた相手は咄嗟にバイザーを解除し、抵抗しようと背中のスラスターを点火する。だが、上半身しかスラスターが残っていないバトラックでエネルギーが切れかけているとはいえ高出力機のヘパイストスに勝てる訳がない。スピードをほとんど落とさないまま二機のZSはコロニーに接近する。


全く勢いが落ちないのを見てさらに焦った相手はさらに焦りを見せる。顔のすぐ近くにあるヘパイストスの頭部に対し頭部バルカンを撃ち込む。既にダメージを追っていたヘパイストスの頭部はダメージに耐え切れず爆発し、完全に全天モニターがブラックアウトする。


「ここまで来たらメインカメラがやられたくらいじゃ結果は変わらないんだよぉ!」


俺は組ついた腕をほどき、相手を蹴り飛ばす。ヘパイストスの後を追従させていたARW 三機に指示を出し、バトラックに追撃を仕掛けさせる。



機体情報が辛うじて移るコックピットの中で数秒が過ぎる。メインカメラが潰れているので状況確認はできない。緊張しながら待ち続けると暗くなったモニターに文字が映り、アナウンスが鳴る。




Game Set

Winner: レイドラ


Congratulations!

You are the King of the Junkyard!


《称号獲得:ゴミ山の王様》




「ハハッ、なんだよこの称号、ネーミングセンス酷すぎるだろ…」


肩の力が抜けると共に変な笑いが出始めた俺は再び母艦へと戻されるのであった。





試合決着寸前。


ヘパイストスがバトラックIIを強引にコロニーの方へと押し込んでいた。


「あいつこの状況で何するつもりだ?顔面からフラッシュグレネードわざと受けるなんて正気じゃねえぞ。」


恐らく現在見ている視聴者全員が思っている疑問を元帥さんが口に出す。途中までは予測できていた俺も今では完全に置いてきぼりにされている。



しかし、その疑問に答えるように状況は動く。ヘパイストスは腕を解き、バトラックIIを蹴り飛ばす。そして、追撃する様にARWがバトラックIIに突き刺さる。

胸部に一機、腕部にそれぞれ一機ずつ。そして、本体の仕事を終わらせるように3機はスラスターの光が消えたZSを引きずり、最終目標を目指す。


それは怨敵を見つけ砲撃準備を行っているコロニーの自衛砲台。その砲口は完全に間に浮いているバトラックIIに向けられている。ヘパイストスを消し去る手目に本来の目的も忘れた砲台は、間に別のZSがいることをものともしない。ヘパイストスを消し去るための砲撃を撃つ準備は既に整っている。



それ故に自衛砲台は見落としていた。間に浮いているZSがさらに近づいていることを。



ARWは速度を緩めることなく、バトラックIIを自衛砲台の砲口にぶつける。砲身はバトラックIIの腹部に突き刺さり、勢い余ったARWはバトラックIIを貫通して下にあるコロニー本体に突き刺さる。




その次の瞬間、自衛砲台はビームを発射する。


砲身に刺さったバトラックIIはゼロ距離射撃を受ける。機体内部に撃ち込まれたエネルギーにより膨れ上がり、破裂するように爆散する。


バトラックIIの爆発の威力に耐え切れず砲台も後を追うように爆発する。


その連鎖する爆発は既に限界を迎えていたコロニーを軋ませる。


そして、バトラックIIの撃墜によって流れ始めたアナウンスが鳴る中、遂に限界を超えたコロニーのあちこちから爆発が発生する。瞬く間に火の海と化したコロニーを背景に、ヘパイストスは母艦へ転送され放送画面は唖然とした表情の解説陣へと移り変わる。



解説陣と全く同じ顔をしていた俺達は顔を見合わせる。俺は苦笑いし、何とか締めくくろうとする。


「まあ、レイドラの当初の目的だった『砲台を破壊する』も達成できたし良かったんじゃないですかね?」


「もしかして頭がぼけたのかな、おじいちゃん?頭ひっぱたいたら治るよね?」


元帥さんから可哀想な人を見る目で辛辣な突っ込みを受ける。




こうしてテツソラ界隈に波乱を生んだ初心者大会が終了したのであった。


これにて決勝戦終了!


本編の内容とは関係ありませんが、投稿し始めて一ヶ月が経ったようです。

なのにまだ導入部分が終わってない...


一応第一部は次回で終了です。それでは!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ