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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
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初心者たちの決勝戦/Beginner’s Finals


本日五度目の格納庫。


大会運営側の準備が完了するまで待機するよう指示された俺は、再びキャットウォークの上でヘパイストスを眺めながら、これまでの試合について考えていた。


正直、拍子抜けだった。


確かに最初に(はじめ)から説明を受けた時に初心者用の大会だとは聞いていた。

しかし、それにしてもあまりにも手応えが無さすぎる。本気を出すどころか、様子見の攻撃で行った攻撃で沈む相手ばかりだ。一回戦の相手はまだマシだったが、それでもARW(オールレンジウェポン)の対策が出来る様子はなかった。


あと残るのは決勝戦のみ。


決勝戦の相手の配信されている試合はどちらも既に見た。それらを見て、俺の中で一つの結論に至った。


このプレイヤーには期待できる。


動きが良く、反応速度や状況分析もしっかりできる。しかし、俺に取って重要なのはそこじゃない。


重要なのは戦い方がエンシェントと同じということだ。

エンシェントとはそう遠くないうちに試合ができる。


彼と同じ戦い方をするプレイヤーと戦うことができるのは、俺に取ってかなり都合がいい。ここで対策を積み、本命の対戦で生かすことができればこの大会に参加した意味がある。


そう考えていると、大会運営から準備が完了したという連絡が届く。


俺はヘパイストスのコックピットに乗り込み、出撃準備を始める。

そして、俺の準備が完了すると共に相手も準備完了したという通知が鳴る。


ある意味ここからがこの大会の本番。

対策を積むための戦いだとしても、決勝戦は決勝戦だ。本気の気持ちで挑まなければ、相手にも失礼だ。


俺は自分の頬を叩き、気を引き締める。


そして、ファンファーレと共に開かれたカタパルトを確認し、ヘパイストスのスラスターを点火する。


「レイドラ、ヘパイストス、行くぞ!」


こうして、この一週間を締めくくる最後の戦いが始まった。





遂に始まった決勝戦。


元帥さんと俺は、対戦画面が映し出される画面を食い入るように見る。


剣崎とレイドラはどちらもカタパルトから発進し、交戦空域となるフィールドの中央へ向かっている。


今回のフィールドは住居コロニー外部。


テツソラにしては珍しく、廃墟ではないフィールド。

テツソラの設定的にはプレイヤーはジャンク屋だ。必然的に、戦う場所もジャンク品を集められるデブリベルトや廃墟コロニーなどが多い。

だがたまに、今回のフィールドの様な人里に近いフィールドが選ばれる。可能性としてはかなり低く、大会の決勝戦で選ばれることなど滅多にない。


そして、こういう人里に近いフィールドはどれもとある共通した特徴を持つ。


「元帥さん、レイドラとの練習試合の中で『NPCありフィールド』って出現したことありますか?」


「いや、無かったはずだ。これかなりマズいないか?」


「ええ、恐らくレイドラはNPCありフィールドの仕様を知りません。もし剣崎さんがその使用を知っていたら―」


「かなり状況が変わるな…」


俺と元帥さんは同じ結論に辿り着く。


嫌な予感がしつつも、間もなく会敵しようとする二機の機体を二人で見つめる。





出撃してしばらく。


俺は周りにARWを展開しながら、フィールドの中央に近づいていた。

そこにある建造物を見て、俺は少し違和感を感じていた。


「あのコロニー、廃墟じゃないのか?」


これまで何度もコロニーステージで戦ってきた。だが、これまで戦ってきたフィールドのコロニーは完全に廃墟と化していたものだ。現在目の前にあるコロニーは破壊された様子もなければ、穴なども一切開いていない。なんなら今現在稼働しているようにも見える。


「大会特別仕様だったりするのか?でもそうだとしてもわざわざ壊れてない建造物にする必要あるのか…?」


コロニーの状態に疑問を感じつつも、警戒態勢を維持し辺りを見渡す。

すると、コロニーを挟んだ反対側からコロニーに向かって飛んでいく光が一瞬見える。


「そこか!」


俺はARWを先行させつつ、コロニーの外側を大きく回りながら反対側に向かう。

コロニーの四分の一を過ぎた辺りで、コロニーの外壁から光が煌めく。


危険を察知し回避行動を取ると、俺が通るはずだった場所を高速のビームが通り過ぎる。


さっき光が見えた場所に方向転換すると同時にARWをそこへ向かわせる。そして、スラスターを最大出力にし、ARWの後を追う。


距離が縮まり、コロニーの表面がよりよく見えるようになる。

相手が逃げるのではないかと思い全速力で移動したが、その必要はなかったようだ。先程光が発せられた場所で敵が待ち構えていた。


これまで何度も見てきたのっぺりとした顔のロボット(正式にはZS(ゼニススレイヤー)らしい)に見た目は似ているが、よく見ると違うことが分かる。


よく見るタイプに比べ、少しシャープな顔。装甲の厚さも増し、心なしか機体の大きさも少し大きく感じる。名前の通り、よく見る機体の発展機だということが分かる。


少し格好良くなった機体、いわく『バトラックII』の手には砲身の長いライフルが握られている。その銃口は俺の方に向けられ、指は引き金に掛けられている。


それを見て、俺は反射的に横に機体を回転させる。躱すタイミングはかなりギリギリだったが、これで一定時間敵は弾を撃てない。畳み掛けるようにARWを突撃させる。


ARWが近づくのを見た相手は、さらに後ろに後退する。コロニーの外壁に張り付くと、攻撃してみろと言わんばかりにこちらへ振り向く。


俺はARWと一緒に機体を突撃させる。腕部に内蔵されたビームソードを展開し、相手との距離を一気に詰める。

相手のバトラックは全く壁から離れる様子が無い。逃げ道を自ら塞ぐ行為に少し違和感を感じるが、純粋に相手がミスを犯している可能性は十分にあり得る。


右手のビームソードを上に振りかぶり、斜めに切り下ろす。

ギリギリのタイミングで相手のバトラックは下に移動し攻撃を回避しようとするが、さすがにそう簡単には躱させない。


避ける可能性のある場所にあらかじめ展開していたARWの一つがバトラックの左脚部に突き刺さる。装備されていたミサイルポッドに当たったのか、派手な爆発を起こす。


左脚を失った敵は、壁に張り付いていたのがウソと思えるほどの勢いでコロニーから離れていく。反撃もせず逃げる敵を追いかけようとすると、急に敵対反応を示すアラートが鳴り始める。


対戦相手は現在逃げているから反応するはずがない。ならどこに敵がいるんだ?


俺は背後を振り返る。すると、先程バトラックを切りつけようとした場所の外壁に大きな切り傷が目に入る。そして、切り傷を付けられたことに怒り狂うかの様にコロニーのあちこちから二本立ての砲塔が出現する。


それを見て相手が何故危険を冒してまでコロニーに張り付いていたのかが分かる。


今回の試合で相手の勝利への道はARWを対策することじゃない。


ZSの大きさを遥かに凌駕する巨体に大量の自衛砲台を装備したコロニーを俺と敵対させることだ。





元帥さんと俺は試合画面を見て頭を抱える。


「…最悪のパターンになりましたね。」


「…そうだな。」


「元帥さんは今の状況からレイドラが勝つ確率どのくらいあると思います?」


「…2割ってとこか?」


「奇遇ですね。俺の結論も同じです。」


テツソラの知識をもっと教えておくべきだったと後悔しつつ、俺は手を合わせ奇跡が起こることを祈ることしかできなかった。



情報って、大事だね。


今回出てきたNPCありフィールドは某ス〇ブラにおけるギミックありステージに似たような感じです。普段の大会では出ない設定になっていますが、初心者大会では逆転や番狂わせが起こりやすいようあえてオンにされています。

普通に戦えば言われていた通りレイドラがかなり有利の対面です。やっぱオールレンジ攻撃ってロボットアニメ伝統のチート武器ですね...


次回の投稿も何とかできそうです。とりあえず最初の章が終わるまではこのペースを維持できるよう頑張ります!

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