最後の挑戦者/Get Ready for the Next Battle
投稿ミスった奴がいるってマ?
ネギと一緒に指も一緒に切ってしまったので今後投稿遅れるかもしれません。
逃げる砲撃機。
追うARW。
逃げ切れず爆散する砲撃機。
試合開始から一分足らずで準決勝Bサイドが終了する。
その様子を元帥さんと俺は配信画面越しに眺める。
ちなみにこの試合展開は本日三度目である。
「やっぱ分かってはいたけどARWと砲撃機の相性って10:0だよな。」
一試合目以降、レイドラの対戦相手は全員砲撃機だ。
砲撃機は強い球を一か八かでばら撒き当たれば勝ちという初心者にとって使いやすい機体タイプだ。動く必要もあまりなく、覚える操作も最低限でいいという点もかなり初心者にとっては利点だ。
だが、欠点として砲撃機は相手の得意間合いに入られてしまうと逃げられず負けてしまう。その為、砲撃機の対策を知っている相手と戦うと著しく勝率が下がる。
しかし、初心者大会では別だ。練習時間が足りず、普通の機体で戦っても勝てる実力を持っていない初心者にとって砲撃機は最後の希望とも呼べる存在だ。
残念ながら、今回の大会には砲撃機の天敵が存在した。それがレイドラ駆るヘパイストス、もといARWである。
砲撃機は得意距離に入られる前に攻撃を仕掛けなければいけない。しかし、ARWは名前の通りオールレンジ攻撃、つまり全ての距離で戦うことができる。
そうなった場合どうなるのか。
試合開始と同時に砲撃機がARWに襲撃され、なすすべもなく豪華な花火にされるのである。
その事実をNJT《ニューカマーズ・ジャンクヤード・トーナメント》を見ている人全員が痛感したのであった。
大会の本配信は現在決勝戦の準備のため待機画面が表示されている。
元帥さんと俺は配信を続けながら、モニター前飲み物を飲みながら駄弁る。
「なんていうか、最初からこうなる気はしていたんですけど実際に試合を見ていると終わり方があっけないですね。」
「だな。最初に戦った相手はまだしっかりプレイしてたっぽいけどさすがにARWは知らなそうな動きだったしな…レイドラがARWを使えるって知ってるのはここの連中とポン達だけだったし、前情報無しであれに対処するのは多分上級者でも無理だろ。」
「まあチーさんと元帥さんとの戦績を見ていたらそう言うのも理解できます。さすがにこういう風に大会で動画が配信されているので完全初見の人はもういないと思いますけどね。それよりまず決勝戦の話ですよ。やっぱり勝ち上がってきましたね、関西勢が推してたプレイヤー。」
「確かプレイヤー名は『剣崎 結城』だっけか?正直なりきりPNの奴がそんな強いんかって疑ってたけど基本がしっかりしていて状況判断が滅茶苦茶早い、しかもあれで一ヶ月しかまだプレイしてないんだから普通に才能あるよ。まあ特徴的なのは戦い方が―」
「高威力単発射撃を使った中距離戦、ですね」
剣崎 結城というプレイヤーは事前情報の通りかなり強いプレイヤーだった。
基本的な動きや立ち回りはもちろん、動きを最適化するための細かいテクニックを利用していたことからかなりの実力者だとすぐに分かった。
しかし、一番目立っていたのがその戦い方だ。
メイン武装に高出力ビームライフルを利用した単発射撃を主軸とした中距離戦を行う戦法。安定性したダメージソースを捨てる代わりに、相手の僅かなミスでも致命傷に変えられる逆転力、そして爆発力を持つ。
それは第二回空帝戦で空帝の栄冠を手にした戦法ではあるが、現在ではそのリスクリターンが釣り合わないとされ、過去のものとして扱われている。
何故、剣崎 結城というプレイヤーはこの戦い方を選んだのか。
それは本人に聞かないと分からないが、大会の決勝戦まで上り詰めていることから、この戦法を実践的に行う実力があるのは確かだ。
「とりあえず決勝戦の見どころとしては、まずそもそも剣崎氏がオールレンジ攻撃を対処できるか。準々決勝、準決勝で見た感じかなり立ち回りの知識と操作能力は中級者帯の上位と遜色ないけど、オールレンジ攻撃を対処できないと一回戦の二の舞になっちゃうからな。後は剣崎氏がオールレンジ攻撃に対処できたとして、レイドラがどう立ち回るか。一応一週間みっちり練習したとはいえ、相手がほぼ俺だったからな。中距離戦をまじめにやる機体との対戦経験は正直なところ無いに近い。機体性能の相性としては7:3でレイドラ有利って感じだと思うが、古兵はどう思う?」
「俺も割と似たようなダイアグラムだと思います。そもそもARWを運用できるだけで一部を除いた全ての機体に有利を付けられると思うので、レイドラ有利になるのは致し方ないと思いますが。一応ARWに対しては理論上効果力単発射撃の方がマシンガン系の連続射撃より有効なので、どれだけうまく運用できるかで試合結果が変わりそうですね。」
空鉄の宇宙においてのARWは、ロボットアニメなどに出てくるオールレンジ兵装に比べ耐久度がかなり高く設定されている。
まず、ARWに対してマシンガン射撃はあまり有効ではない。何発も同じ場所に弾を当て続ければもちろん破壊できるが、高速で動き回っているARWの同じ場所を撃ち続けるのは難しい。それができる人はそもそも高威力な単発射撃一発で破壊できるのでわざわざマシンガンを使う必要がない。
また、ARWは実弾にもかなり強い。恐らく誘導ミサイルで簡単に迎撃できないようにするための設定なのだが、その巻き添えで実弾銃も効きづらくなっている。実弾武装でARWを迎撃しようと思うと、レール砲などの高威力を誇る武装を使って狙い撃たなければいけないらしい(元帥さん談)。
つまり、ARWを迎撃する策としては高威力単発射撃が有効なのだ。それを兼ね備えている剣崎氏の機体『バトラックIIエースパイロット仕様』は、偶然にもARWの対策ができている機体なのだ。
「そういえばちょっと思ったんだが剣崎氏の機体名『バトラックII』だけど、もしかして剣崎氏って毘沙門さんの身内?」
「…バトラックIIの設計図はまだ公開していないはずなので多分そうですね。」
「…やべぇ、なんか一気にレイドラに勝ってほしくなったんだけど。」
意図せずして始まったお互いの身内を代理とした東西対決。
俺と元帥さんは心の底からレイドラが勝利することを祈りながら公式配信が再開するのを待ち続けた。
今回は対戦相手の紹介回でした。
今回名前が出た毘沙門さんですが、お察しの通りバトラックを設計した関西出身のプレイヤーです。
バトラックIIは開発したはいいものの、配布する性能を高くしすぎたので、結果的に自分の専用機として使っています。
そんな機体をマイナーチェンジしてあげるあたり、剣崎 結城氏がどれだけ近い身内か分かります。
一応書き溜めた分がまだ残っているので次の投稿は予定通りできます。
次回から決勝戦!お楽しみに!




