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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
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荒ぶる剣の嵐/Dance of the Flying Blades


鳥酢タン(トリスタン)はこの大会に挑むにあたって非常に自信を持っていた。


空鉄の宇宙を始めたのは大体一か月前。前からテツソラをプレイしていた友人にNJT《ニューカマーズ・ジャンクヤード・トーナメント》の話を聞き、参加を決意した。


その日から、必死に練習した。

基本操作を覚えるのに七日間。初心者帯を抜けるのにさらに七日間。始めたばかりのプレイヤーとしては破格の速度で中級者帯に突入した。

中級者帯に入りやっと好きな機体が使えるようになった鳥酢タンが選んだ機体はバトラックコマンドIII(トリオ)。バトラックコマンドの発展機であるこの機体は、非常に扱いやすいにも関わらず高性能な機体である。中級者帯から上級者帯まで幅広く使える機体は、テツソラで上達するために最適な機体の一機だ。


そんな機体の操縦を練習し続けて二週間。合計勝率は5割を超え、安定した勝率を維持できるだけの能力を身に着けた。今回の大会では片手で数えられるレベルだと友人にお墨付きまでもらった。


さらに、第一回戦は配信に載っている。自分の実力を世界に見せつけるチャンスだ。


最初の対戦相手を調べてみたところ、一週間前に始めた異常な成長速度を誇る新人らしい。

有名配信者のチャンネルで使っていた機体はカグツチ。高機動力の格闘機を使ってくると予想がつく。


確かに一日で中級者帯まで上り詰めるその成長速度は恐るべきものだが、心配するには至らない。何故なら、オンライン対戦報告が一度もないからだ。


ある程度有名人ともなると、対戦するだけでSNSなどに報告する人がいる。あれほど華々しくデビューを飾ったのであればなおさらだ。しかし、そんな彼の対戦報告は全く見受けられない。


恐らく、中級者帯に入った段階で勝率が安定せず、最初の方で詰まっているのであろう。格闘機使いの間ではよくあることだ。

最初はうまくいっても、中距離機体との相性があまりにも悪すぎる。現在中級者プレイヤーの大多数が中距離機体を使っている。まだ何もわからない初心者には通用しても、セオリーを理解した中級者相手には近距離戦は通用しない。


数多くの対戦をこなしてきた鳥酢タンは、格闘機使いとも戦ってきた。その何戦かで、格闘機との戦い方は完全に理解した。


始めて一週間の素人が使った格闘機など取るに足らない。既に頭では次の対戦相手について考えていた。



鳥酢タンは辺りを見回す。

ステージはデブリベルト。中距離機体が最も得意とするステージの内の一つだ。


格闘機が低リスクで仕掛けられるのは最初の一撃のみだ。警戒しながらデブリの間を移動していると、デブリの間を通る赤い物体がわずかに見えた。


「そんな目立つ色の機体を使うなんてカグツチに未練でも持ってんのかぁ?そんなんで勝てる程このゲームは甘くねぇぞぉ!!」


アサルトライフルを先程赤い物体が通った場所を向ける。


しかし、トリガーを引こうとした瞬間、違う場所を赤い何かが過ぎ去る。さっきより近くを通ったのかその輪郭がわずかに見えたが、確かに言えることがある。


あれはZS(ゼニス・スレイヤー)ではない。


それに気付きより一層警戒を高める。

すると、また赤い影が通り過ぎる。しかし、今回は明確におかしな点がある。


赤い影が二つ、全く別の場所を同時に通り抜けたのである。


あからさまに相手が予想と全く違うことを仕掛けてきている。焦り始めた鳥酢タンは、後ろに全力でスラスターを吹かしながら逃げる。


すると、視界に移る赤い影の数がだんだん増えていく。


三、四、五、六。


得体のしれない何かに追われ、もはやパニック状態に陥っている。それでも何とか開けた場所に逃げ切る。


そして、レーダーに察知された敵の機体の位置を確認し、その姿を確かめるため振り返る。



目の前に浮かんでいるZSを見て最初に思ったのは「人間らしくない」だった。人型であるにもかかわらず、その至る所が凶器のように鋭い。宇宙に溶け込むような黒色と血に染められたような赤色に覆われ、まるで獣化した人間のようだ。そしてその機体の周りには、先程の赤い影であろう六つの赤い刃物の様な物体が軌道を回っている。


しかし、見たところ周りを回っている刃以外は武器を持っていない。ならば、定石通りこちらの特異距離を維持しつつ相手の攻撃が届かない距離で戦えばいい。ライフルを構え、射程圏内まで距離を詰める。


すると、敵の機体も動きを見せる。

機体の周りを回っていた刃が一斉に散開する。そして、全身のスラスターが光ったかと思うと、一瞬にして目の前まで接近する。


「な、何だこいつ、速すぎんだろ!」


咄嗟に横に移動し、敵から距離を取ろうとする。


しかし、移動した先には先程まで敵の機体の周りを回っていた刃の一つが待ち受けている。


「クソっ、動きが読まれた!」


反撃など一切考えず、鳥酢タンは必死に逃げる。振り向くこともできないが、後ろから真っ赤な刃物が殺意剥き出しで追いかけてきているのを感じる。


すると、急に目の前に赤い刃が現れる。

一瞬回り込まれたのかと思ったが、それが追ってくる刃とは別物だと気付く。


「さすがに二機はキツイって!」


必死に機体を操作し、間一髪で襲い来る猛攻を何とか交わす。攻撃が外れ、二つの刃が離れるように飛んでいく。


「よし、何とか退け―」


安堵して声を上げた瞬間、機体に何かが衝突したかのような衝撃に襲われ、鳥酢タンのバトラックが派手に吹き飛ばされる。機体中にアラートが鳴り響き、バックパックのスラスターが大破したことを知らせる。


激しい衝撃の影響で視界が揺れる中、鳥酢タンは後ろを見ると、そこには宙返りをする獣の様な機体。どうやら刃に気を取られている内に後ろに回られ、飛び蹴りをかまされたらしい。


とどめをさせた場面で、あえてダメージのみを与える。あからさまな煽り行為に、鳥酢タンの中に怒りが込み上げる。


「才能があるだけの奴が舐めやがって、慢心したのを後悔させてやるよぉ!!」


奇しくも現在の相手との距離は中距離機にとって最適の物。残ったスラスターで敵の機体に向き直し、アサルトライフルの照準を合わせる。相手はまだ宙返りの慣性を止めようとしている途中で動けないはず。勝利を確信し、鳥酢タンはニヤリと笑う。


しかし、銃の引き金が引かれることは無い。


別々の方向から突撃してきた赤い刃がバトラックを切り裂く。頭部、武器、背部、腕部、腰部と順番に破壊され、最後にコックピットのある腹部が残される。


半壊したコックピットの中で、頭から血を流す鳥酢タンのアバターがもがきながら叫ぶ。


「なんだよその武装、チートだ―」


鳥酢タンが文を終える暇もなく腹部を最後の刃が貫き、機体の残骸が爆発する。

そして、爆発が治まると明るいテンションのアナウンスが鳴り響く。




Game Set

Winner:レイドラ

Proceed to the Next Round!




アナウンスと同時に佇んでいたヘパイストスは母艦に転送され、古戦場に再び静寂が訪れる。





「これにて一回戦の試合のすべてが終了しました!これから二回戦の試合の準備に入るので少々お待ちください!」


公式配信の司会進行役がそういうと、配信には待機画面が映される。


レイドラの一回戦を見終わった俺は、元帥さんに話しかける。


「レイドラの練習に一番関わっている元帥さん的に、今の試合内容どう思いますか?」


「正直に言うと成長速度がやばかったから調子に乗って強くしすぎましたハイ。」


視線を逸らし即答する元帥さん。


中々見ないテンパっている元帥の姿に、俺は苦笑いすることしかできなかった。


遂にヘパイストス、動きました!


まあ敵視点なんですが。


あっさりかませ犬になった対戦相手の鳥酢タンですが、別に弱いプレイヤーという訳ではありません。

むしろ大会全体を見て言えば、優勝候補に入るレベルの実力者です。


でもオールレンジ攻撃ですよ奥さん。

脳筋野郎だと思っていた相手がいきなり遠隔操作でナイフを飛ばしてくるんですよ。

初見で対処しろという方が無理です。


むしろ三つ同時に相手できただけでもかなり善戦した方です。


オールレンジ攻撃に対処できる敵なんてそういないしこの大会もらっただろ!勝ったなガハハ!


まあそんなあっさり勝てれるわけないんですけどね。



今後もお楽しみに!

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