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空鉄の宇宙 ~親友と一緒に最難関VRロボゲーで最強を目指す~  作者: アカツキ八流
一章:廃れた宇宙、新たなる夜明け
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炎神、出陣/All Praise the God of Fire

無事ダイパリメイク殿堂入りしたので投稿です。


ニューカマーズ・ジャンクヤード・トーナメント。


通称NJTと呼ばれるこの大会は、新たに初心者を呼ぶために開催された公式大会である。対戦形式は宇宙戦の一対一の一本先取。一発逆転もあり得る、初心者ながらのハチャメチャさを尊重するルールとなっている。


大会参加者は32人。一回戦、二回戦、準々決勝、準決勝、決勝戦を勝ち抜けば優勝。公式大会なので配信もあるが、一回戦と二回戦はそれぞれ四戦ずつしか配信されない。その代わり、準々決勝からは全試合配信されるという贅沢仕様となっている。


初心者が少ないテツソラでは、定期的にこの様なイベントが開催されている。その甲斐あってか、ほんの少しずつだが新規プレイヤーは増えている。それでも、今回の大会の32人という人数はかなり多く、今までの大会の中で一番競争率が高い大会となっている。





土曜日の昼。


龍斗と俺は既に『ペガサス』で大会の為に待機していた。


大会が始まるのは二時頃だが、大会の集合時間に遅れるよりはましだ。

龍斗は現在ウォーミングアップとして適当に機体を動かしている。


本当はARW(オレン)の操作確認も行いたいらしいが、さすがに集中力を大会の為に取っておきたいのでやめておくらしい。


俺は特にすることもないので、携帯端末でSNSを見ている。

すると、後ろから聞きなれた声が後ろから聞こえる。


「おっ、お前たちももう来てるんだな。てか聞いたか?参加者32人だってよ32人。ひと月で初心者がこんなに増えるのなんていつ以来だ?おまけに関東の奴らのイチオシのプレイヤーも出るらしいぜ。もしかするとレイドラの優勝も一筋縄ではいかないかもな。」


「元帥さん。相も変わらずどんな時間でもいますね。レイドラの練習の時は助かりましたけど、他の予定とか大丈夫なんですか?」


「お前俺のこと社会不適合者かなにかと勘違いしてないか?ちゃんと大学の授業には出てるし、最低限の成績はちゃんと出してるぞ。それに今日は自分の弟子ともいえるレイドラの晴れ舞台だ。見に来ない訳にはいかないだろ?」


「だったら一緒に同時市長配信でもやりませんか?前の大会でやった同時視聴配信も反響が良かったので、やらない手はないですよ。」


「それもそうだな。なら今回はお前が配信の準備をしてくれないか?」


「もちろん。もう大体の準備はできてますよ。」


「マジ?やるじゃん。」



二人で配信の準備を終わらせていると大会説明の集合時間になった。





「俺達は同時視聴で配信の方を見ながら応援してるから、出てない試合は配信されてる試合を見とけ。多少なりと対策を積む手伝いになると思うぞ。」


「分かった。じゃあ行ってくる。」


「おう、かまして来い!」


俺が応援を送ると、龍斗は手を振りVR筐体の中に入る。


「しかしまさかレイドラの試合が全部配信行きになるとはな…」


試合が配信に載るのは利点と欠点が明確に存在する。

何回も配信に載ると視聴者の好感度を稼ぎやすい、しかし、それと同時に対戦相手に対策を積まれる可能性も上がってしまう。


初見殺し要素がかなり強いレイドラの戦い方にとって、配信に移ることにより徐々に弱くなってしまうことを意味する。


それに加え、今回の大会にはかなり強いと噂になっている新人プレイヤーも参戦しているらしい。その人と当たるのは決勝戦なので、確実に対策を積まれてしまう。少し心配だが、もう俺達に出来ることは何もない。


「よし、もうすぐ最初の試合も始まるし、配信始めっか!」


元帥さんはモニターに繋がれたパソコンを操作し、配信を開始する。





目を開くと、ここ数日で大分見慣れた格納庫が広がっていた。


俺は右手でメニューを開き、NJTの配信ページを開く。


現在は大会説明などが行われており、最初のグループで対戦するプレイヤー達は恐らく準備を行い待機している。

俺の最初の対戦はグループ4なので、対戦するのは最後だ。配信を横目に見ながら、俺の背後に佇んでいる機体を見上げる。


赤と黒を基調にした刺々しいデザイン。


細長い頭部の両側面に設置された猛獣に抉られたかのような傷痕の様な目。


長い手足を構成するパーツはすべて武器として使えそうなほど鋭い。その異形の体の各所からいくつものスラスターが姿を覗かせており、つい週間前に操縦していたカグツチを彷彿とさせる。

しかし、カグツチと違いそのスラスター一つ一つの大きさと配置が計算しつくされており、荒々しさを醸し出しつつも凛々しさが見て取れる。


背中には6本の熱された鉄のように明るい赤色の棘。それぞれが突撃型のARWとなっており、俺の注文通りの期待であることを証明している。


これこそがこの一週間(はじめ)が全力を注ぎ作ってくれた機体。他の誰でもなく、俺だけにその性能を引き出すことが許された俺の専用機。


ARW特化型近接戦闘ZS(ゼニス・スレイヤー)『ヘパイストス』である。




昨日完成した機体を一に見せられた時、俺はカグツチの時にも感じなかった高揚感を感じた。


これこそが俺の機体だ。俺が望んでいた理想の機体。


その感想は実際に操縦してみても変わらなかった。

機体の操作性自体は高機動型バトラックに比べると悪い。しかし、俺に取ってはむしろ扱いやすい。カグツチの無茶苦茶な機動性を持ちつつも、操縦者の命令には従う。「理想的」という言葉を形にしたかのようであった。


この機体で最終調整を行った結果、なんとか五機運用の頃と同じくらいの精度で六機制御を行えるまでに至った。


大会準備の目標は達成した。


後は大会で結果を残すだけだ。




そうこうしているうちに、二ラウンド目が終わり、待機状態に入るよう指示が来る。


俺はすぐさまヘパイストスのコックピットに乗り込む。

ボタンを操作するとコックピットのハッチが閉まり、上に覆いかぶさるようにARW操作端末がハッチの上に覆い被さる。

俺はシートベルトを装着し、ARW操作用ヘルメットを被る。最後にペダルを踏み込み、準備完了する。


待機場所に送られて待つこと数分。前のラウンドの試合がすべて終わり、俺達のラウンドまでのカウントダウンが始まる。

俺の出る試合は最初から配信される。ここで俺の特訓の成果を、ヘパイストスの性能を見せつける。


モニターに表示されたカウントダウンが三秒を切る。


俺は右足で思い切りペダルを踏む。スラスターが点火するのを機体越しに感じながら、カウントダウンがゼロになると同時に叫ぶ。




「レイドラ、ヘパイストス、行くぜぇ!!!」


やっと出ましたヘパイストス!


話は変わりますが、そもそもどのゲームでも初心者用イベントってかなり難しいと思います。ましてはそもそも新規が少ないゲームで、大会に出ようと思うほどのモチベーションを持った初心者が32人もいるのはかなりすごいです。


あと最初はいやいや出撃台詞を言ってたレイドラ君もだいぶ板についてきましたね。そこは練習で何回も言っている内に慣れたということで。


次回は一回戦。お楽しみに!

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