特訓、特訓、そして最終確認の特訓/Training, More Training, and Even More Training
ダイパリメイク発売日ですが投稿します(鋼の意思
進歩日記 荒谷 龍斗
水曜日
正直、六機同時操作は無理なんじゃないかと感じてきた。
昨日から始めていた五機同時操作の練習を継続し、何とか五機動かせるようになってきた。
今日の後半は元帥さんに協力してもらって実戦で試してみたけど、やっぱり中々勝つことができない。
実力差があるのは分かってはいるけど、一応機体は手加減してもらっている。対策を積もうとしているけど、コロコロ使う武装を変えるせいで混乱してしまう。
さらに、対戦している内に分かったが、少しARWの動きがぎこちなくなっている。
理由は、恐らく俺の情報処理能力が追いつけなくなってきているから。
もっと時間があればもっとしっかり仕上げられるかもしれないとも思ったけど、そんな弱気なことは言ってられない。
週末一緒に対戦してくれたチータラさん、動画を見てアドバイスをくれているイッポンさんと缶フーさん、平日なのにもかかわらずいつでも対戦してくれる元帥さん、そして誰よりも俺の要望通りの機体を作ってくれている一。こんなにたくさんの人を巻き込んでおいて、俺が弱音を吐くなんてことはできない。
なにより、俺のプライドがそれを許さない。
何かの大会に参加するのはこのゲームが初めてという訳ではない。それはスポーツの大会だったり音楽のコンクールだったり様々だったけど、どれも既にある能力を発揮すれば入賞できるものばかりで、努力なんてする必要すらなかった。
でも、今回は違う。そもそも他の参加者より始めたタイミングが遅い可能性が高く、さらに使う難易度が高いとされている武器を使っている。
そう意味では、この大会は俺が初めて「挑戦する側と」して参加する大会だ。
だからこの大会は俺に取ってとても大事な大会だ。諦めたくないし、絶対に勝ちたい。
だからこれからの二日間、今の俺に出せる最大限をつぎ込む。
木曜日
五機同時操作で元帥さんと対戦してから、遂に六機同時操作に手を出した。
今日の練習が終わった時に分かったのは、明日までに六機操作できるようになるのはほぼ無理だということだ。
六機目を動かそうとすると、他のARWの動きがガタガタになる。どんなに集中しても、少ない数を動かしていた時の様に滑らかに動かせない。
今の状態では、六機運用することは俺に取ってマイナスでしかない。五機運用を仕上げるのが一番安定した選択肢だと思う。
でもそれでいいのか?一は俺が六機操作をできるようになると信じて機体を作ってくれている。
あいつの期待だけは裏切りたくない。
小さい頃から一緒にいたあいつに、才能だけの奴だと思われたくない。
俺も努力で物事を成し遂げられると、誰よりも努力家のあいつに証明したい。
練習できるのはあと一日。最後のひと踏ん張りだ。
金曜日
今日はほぼトレーニングモードに入り浸りだ。
ありったけの集中力を注ぎ込んだ甲斐あってか、少しずつだが六機操作に慣れてきた。
未だに動きにキレは無いし、全体的にARWの動きに少しラグがあるけど、悪くない動きにはなってきた。
後は元帥さんと少し対戦してもらって、実践慣れしながら動きを磨くしかない。
◇
「やっぱり動きが戦いに追い付いていない…」
元帥さんと何回か対戦した後。モニターに映し出される自分の試合を見直しながら、自分の動きに対する不満を漏らす。
何回かやった試合の結果は全敗。元帥さんがARWに慣れ始め対策されつつあるのも確かだが、それだけじゃない。
五機以下であれば勝てた展開でも、動きが遅れ何回も勝利を逃した。現在の俺は、完全にやりたいだけの動きをしているだけだ。勝利へのビジョンを完全に捨ててしまっている。
モニターを睨んでいると、元帥さんが俺に飲み物の缶を差し出す。
「そんな苦い表情したってプレイは上達しないんだから一旦ちゃんと休憩しろ。お前ここ何日かずっとテツソラの事ばっか考えてるだろ。それに気分転換を挟んだ方が新しいアイデアも浮かぶかもしれないぜ。」
俺は元帥さんから缶を受け取り、開けて一口飲む。しかし、口の中は全く予想していなかった味が広がる。驚いて缶のラベルを見ると、そこには「ロブスタービスク」と書いてある。
「その程度の悪戯に気付けなかったのが疲れてる何よりの証拠だ。せっかくだ、ゆっくり雑談でもしようぜ。」
そういい、元帥さんは近くのベンチに腰を掛ける。隣に座ると、元帥さんは話し始める。
「お前は自分が伸び悩んでいると思ってるみたいだが、そんなにひどいって程の実力じゃない。何なら今回出る大会に関しては余裕で優勝できるほどの実力は既にある。なんでそんなに上達するのを急いでるんだ?」
元帥さんが言った事についてはうすうす気付いていた。
自分の上達の糸口を探そうとテツソラの動画をいくつか見てみた。その中で、自分の練習相手をしてくれたチータラさんや元帥さんが自分の思っていた以上の実力者であることを知った。
手加減した機体を使っていたとはいえ、そんな彼らに勝てるARWという武装は本当に言われていた通りの驚異的なものなのだろう。
しかし、今の俺の目標は、単純に大会で勝つだけではない。
「はじ…古兵に機体を作ってもらうことになったとき、ARWを六機使うと言い出したのは俺なんです。自分で言い出したからには、ちゃんと与えられたものを使いこなして優勝したいんです。それに、今後もっと強い人と戦うには、まずはちゃんとARW六機を使いこなせるようにならないと思うんです。」
元帥さんは首を傾げる。
「いうてARW六機無いと勝てない相手なんてそんなにいないぞ。具体的に誰と戦うことを想定して言ってるんだ?」
「そうですね…まあ動画で見たってだけなんですけど、イッポンチャンネルの皆さんや元帥さんは含まれますね。あとはここ何回かの空帝戦で優勝している新月さんと…一番はエンシェントさんですかね。」
その瞬間、名前を聞きながら頷いていた元帥さんがその場で固まる。
あからさまに他の名前と違う反応をした元帥さんに気付き、元帥さんに尋ねる。
「エンシェントさんがどうかしたんですか?」
「あぁ、いや、うん。エンシェント、あいつね。」
「もしかして知り合いだったりしますか?」
「まあ、結構仲のいい奴ではある、かな。そ、そういえば何で一番意識しているんだ?」
露骨に話をそらされた気がするが、質問に答える。
「あの独特な戦い方ですね。地道にダメージを稼げる切換型のライフルじゃなくて単発射撃しかできない高出力ビームライフルを有効に使いこなせるのもそうですけど、とにかく状況把握能力の高さが驚異的です。相手をかく乱して隙を作るARWの戦い方の天敵と言ってもいいと思います。」
「そう言われると確かにそうだな。あの威力のビームライフルであればARWも破壊できるし、ARWを狙い撃てる可能性も十分にある。そんな遠くない未来に対戦できる相手だろうし、対策を練るのもいいかもな。何なら手伝うぜ?」
「そんな簡単に対戦できる人なんですか?」
そう聞くと、元帥さんはニヤリと笑い立ち上がる。
「意外とすごい奴ってのは近くに居たりするもんだぜ?」
それと同時に、ヘロヘロな様子の一がこちらに向かって歩いてくる。
「龍斗!機体が完成したぞ!」
さっきまで重くのしかかっていた疲れが一瞬にして吹き飛ぶ。
「マジで?!」
「おう、マジマジ。今から試しに動かしてみるか?」
数分前までなら迷っていたかもしれないが、元帥さんと話している内に不思議と気持ちも軽くなった。後で元帥さんにお礼を言おうと心に決めながら答える。
「もちろん!!」
遂にレイドラの専用機完成!
まあ次回はまだ動かないんですけどね...
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