授業
ファンタジーへの造詣は深いとは言い難いので、色々大目に見て頂けると……!!最初はRPGのシナリオとして考えていたものです。ゲームシステムなども考えたのですが、小説として公開してみることにしました!
「このように、魔法の発動には魔力元素が大きく関わっており、体内に保有する元素は生まれ持ったものである。クラスαの諸君は、自然元素である火、水、風、土に加え、非自然元素として時の元素を持ち……」
教壇に立つ教師の声が、春の陽気に満たされた室内に響く。
微睡みたくなる自分に喝を入れながら、ライリーは必死にその声に耳を傾けた。
話されている内容のほとんどは、入学試験にも出題された基礎的な知識だが、その「基礎」の積み重ねが大切なのだ、というのは、目の前の教師の口癖だ。
「つまり、だ。目の前の事象と発生させたい物理現象を魔術式に置換し、変化量を演算、その結果に応じて体内の元素をマナに変換して放出したもの。
それこそが、魔法、ということだ」
置換、演算、変換、放出。
教師が話すのに合わせて空中に浮かんだ4つの単語は、魔法の基本技術だ。
ノートに書きとった単語を矢印で結び、ペンの色を変えてくる、と丸で囲む。
ペン先が勢いよく紙の上を走る音に満足しつつ、キホン!と書き加えたところで、授業の終了を告げる鐘の音が響いた。
「っと……時間だな。それでは、今日の魔術概論の授業はここまで。次回からは置換の授業に入るので、各自予習、復習は欠かさないように!」
教師が軽く手を振ると、空中に浮いていた文字が消える。
空中に文字を表示させるのは、空間や認識を司る「識」元素を用いた魔法だ。
ライリーたちクラスαの生徒は、時間を司る「時」元素を生まれ持っているが、「識」元素は持ち合わせないため、この教師のような魔法は使えない。
わざわざ見せつけなくても、と文句を言う同級生もいたが、ライリーはこの浮かぶ文字が消える瞬間を見るのは嫌いではなかった。
何より、ライリーがこの教師を嫌う原因は、もっと別のところにある。
「名門、国立高等魔術学園の生徒の名に恥じない成績を、期待しているからな」
生徒一人ひとりと目を合わせるような視線を、少し顔を俯けたライリーは、その額で受け止めるのだった。