第四話 今は亡き戦士
「沙由里さ〜〜ん!!」
僕と美来はゲストルームを後にして、再び沙由里さんのところに来ていた。
「あら、どうしたの?二人とも。」
「いや、沙由里さんご飯まだなら一緒に食べないかな〜〜っと……。」
「あ、そういえば私もまだだったわ。
いいわね。食堂に行きましょうか。」
「さっすが沙由里さんっ。」
美来と沙由里さんを見てると、沙由里さんが偉い人なんだってことを忘れそうになる。
それくらい二人はくだけていた。
それはさておき、
「美来さん。さっき食堂って言ってなかったっけ?」
美来と沙由里さんは互いに顔を合わせる。
「ははっ。空、残念だけどこれ全部食堂なんだよ。」
「……。」
ホントに今日は口が開きっぱなしだ。
でもたぶん僕は悪くない。いや、きっと悪くない。
だって、これ食堂じゃないよね?
「高級レストランの間違いじゃないの?」
「ま、山神くんの考えが妥当よね。
しかも補足すると、このサイズの食堂が他に五つあるわ。」
「………。なんで食堂だけ豪華なんですか?」
「美来のおじいさんは基本的に質素倹約がモットーなんだけど、食にだけはうるさいのよ。」
「はぁ」
「ねぇねぇ、いいから早くご飯にしようよー。」
美来が騒ぎだした。
ガキかっ!!ってツッコミたいけど、そんなことは出来ないし。
それに、確かに僕もお腹がすいてきた。
「はいはい。ったくあんたはいつまでたってもお子ちゃまねぇ。」
「ぶー。だってここの料理おいしいからはやく食べたいんだもーん。」
そして僕らは席について、何とか星レストランで出てきそうなフルコースを食べ始めた。
いい意味でこの世のものとは思えないものばかりだった。
本当に心もこもっていて、味も見かけも文句のつけようがない。
でも、なんだか僕には合わないような気がした。
『……沙由里さん。』
『どうした?』
『あの話、私が空に話してもいいですか?』
『あぁ……。えぇ。それは構わないわ。
でもまだ早くないかしら?』
『え!?早いですか?
実はもう若干話しちゃったんですけど……』
「はぁ!!??」
沙由里さんの大きな声で、僕は美来たちが何か話しをしていたんだということに気がついた。
『こんの馬鹿っ!!何で今日なのよ!?
ただでさえ今彼は大変な状況にいるのよ!?
そんなに一気に突き詰めることないじゃない。』
『だって……。』
『はぁ……。わかったわ。
ただし、余計なことは言わない!!
事実と少しの背景と、結果だけを彼に伝えればいい。
わかった?』
「はいっ!!!!!!!!」
今度は美来の大きな声で……
ってもういいか。
「あの。」
「「な、何!?」」
何故ハモる?
「何の話ですか?」
「「な、何でもない!!」」
だから何故ハモる?
そしてこのまま食事を終え、僕と美来はまたゲストルームへ。
別れ際、沙由里さんが美来の背中を叩いた理由を僕は知らない。
「おいしかったでしょ?」
「うん。めちゃくちゃおいしかった。」
「そっか。よかったよかった。」
部屋について二人並んでベッドに座っていた。
何だか緊張するようなしないような微妙な気持ちだ。
「美来さん。」
「…え!?な、何!?」
「ん?何でそんなに慌ててるの?」
ちょっと笑えた。
「な!!笑うなっ!!
…で何?」
「シャワー浴びたいんだけど…。」
「あ、そうだよね。
じゃあ浴びてきなよ。」
まだ出て行く気はないらしい。
一体いつまでいるつもりなんだか。
「なんなら一緒に入ろっか?」
「『なんなら』の意味がわかんない。」
バカにしているのか、ただの天然なのか。
僕に知るよしはないんだろうけども。
なんとなくその間くらいじゃないかと思う。
すべてをかき消すシャワーの音。
世界を暗くしたはずなのに、流れ始めたのは、また世界だった。
悲しみだけじゃない。今だって、結ばれた人がいたり、何かの試合で活躍した人がいたり、いいことはたくさん溢れている。
だからこそ裏が目立つんだけどね。
シャワーを止め、髪を乾かしたところで、僕は浴室をでた。
そこにはさっきまでとは違って、落ち着いた美来がいた。
「空。」