ヤサシイオトコ
初めて書いたものになります。
序盤は話が遅いですがどんどんオカルト要素を出していければと思います。
「なんやなんや、えらい変わったモンが視えてるな?」
「解決したいんやろ。おっちゃんに話してみ」
どこか胡散臭い小太りの男がそこには立っていた。
まさか本当にいるなんて―
もしかしたらこの人だったら僕の 悩み を解決してくれるかもしれない。
少し暑い夏の日のこと 太陽の光が届かない路地裏で僕はそんなことを考えていた。
『三丁目にある薬局を右に曲がったところにある路地裏に少し変わった男がいつもいる』
そんな噂が僕たち高校生の間では広まっていた。ジャンクフードを食べながらスマートフォンをいじり、話す話題がなくなった頃にポロッと誰かが話し出す。その程度のものだ。
曰く、路地裏にいる男に頼めばどんなことでも解決してくれる。代金もいらない。
そんな都合のいい話だ。こういうものにありがちなことといえるのかもしれないが、この噂は広まっていくにつれてその形を変えていった。
そもそも最初は子供だったり女性だったり、『男』ですらなかったという話もあるし、代金は頼んだ人間の魂、という恐怖的なものだった。それがいつの間にか無償で願いを叶えてくれる、そんな都合のいいものに変わっていった。
ただ、そんなことは噂を話している人間にとってはどうでもよかった。所詮本当かどうかもわからない話で、友人との話の種になればそれでいいのだから。
しかし、そうではない人間もいる。そんなオカルトに頼らねばならない人間が。
そういう人間はおおよそ二つに分かれる。
そんなものに縋るしかないところまで追い込まれた者と
オカルトの類いに自分の首根っこを掴まれた者
この二つである。
昔から変なものがよく見えた。他の人には見えていないものが。
翼が三本生えたカエルや尻尾が二つに分かれた猫、目が一つしかないシカなんてのもいた。
厄介というか、助かった部分はなぜか見えるだけで触れないし触られない。
ただそこにいるのが見えるだけということだ。
見え始めたのは小学六年生の時からだ。最初は小さい痛みだった。だんだんそれが激しくなって家族に病院に連れて行ってもらおう、そう思った時、 それ は見えていた。
最初に何を見たのかは忘れてしまったけれど、とてもそれが恐ろしかったことだけは覚えている。
それからは色々あった。外に出ることを嫌がってずっと布団にこもっていたり、人と話すときは別の場所を視界に入れないために相手の顔だけをみていたり、とても不自然な子供だったと思う。それでも僕がそれに慣れるまでの間、しっかりと育ててくれた父親と母親には感謝の気持ちでいっぱいだ。
中学生になってスマートフォンを手に入れてからはすぐにこの目のことを調べた。
似たような症状はないか、誰か同じ状況になっている人間はいないか。
しかしそんな人間はおらず、二ヶ月ほどで僕の調べ物は進展がなくなってしまった。
誰にも相談できず解決策もない状態で過ごし、気がつけば内気な性格の子として周りからは認識されてしまったのである。
僕が例の男の話を聞いたのは高校生になってからだ。
ハンバーガーショップでアルバイトをしていたら女子高生のグループがポテトを摘まみながらそんな話をしていた。またそんな与太話かと、もうそんな類いの話など調べあきたし聞き飽きた。そうは思っていてもどこか可能性を信じて耳を傾けてしまう。そんな自分の性格が嫌いでしょうがなかった。
インターネットで見つけたオカルト話はそもそも自分が住んでいる場所から遠く離れたところでの伝承だったりして、そこへ行くことや書かれているマジナイモドキを実行することがそもそも不可能だった。しかしこの『親切な男』に関しては別だった。
どうもこの近くの薬局の近くの路地裏に行けばその男に会えるという。会える時間までご丁寧に彼女たちは話していた。
深夜二時 所謂 丑三つ時
こういう話は最後までベターな展開にしないと気が済まないのだろうか。
客が落とした食べかすを掃除しながらそんなことを考えていた。
今日は21時にバイトが終わる。十分な時間はあるだろう。
ありがとうございました。続きは書け次第投稿したいと思います。