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part.1
1.
僕の同い年の妻は、とても鋭いところがある。それは、僕たち男には一生かかっても推し量れそうにもない、女の勘と言うべきもののためか、もしくは、彼女が生業としている、私立探偵という一風変わった職業のせいか――。
ともかく妻は、どんなものであれ「謎」に関しては、ことさらに鋭敏な嗅覚を持ち合わせているのだ。
「あ、この曲知ってるわ。懐かしい」
オルゴールが鳴っている。
楽しげに目を細める妻の声を聞きながらも、僕は気が気じゃなかった。何十年もの間、記憶の底に埋もれていたあの事実が、今日をもってついに、白日のもとに曝されるのではないかと。
しかし、分かっていた。妖しく輝く彼女の瞳は、どんな真実だろうとたちまち暴いてしまうのだと。それこそ自明の真理だ。
自鳴琴の音は、僕に課せられた裁きの調べなのだった。