鷹の魔物
遅くなりました。
あらすじ
魔物に襲われました。
次の狙いは私のようです。
鷹の魔物が頭上を旋回しながら、私の方をじっと見てくる。
私は魔物を睨みながら、少しずつレナさんたちの方へ移動する。
レナさんたちも剣を構えながら、同じようにこちらへ寄ってきてくれている。
ふいに、魔物が浮き上がり、風にあおられた。
と思ったら、私に向かって真上から直角降下してきた。
私はとっさにレナさんの横に転げこむ。
どさっ
ひゅんっ
「鷹の丸焼きにしてやる!!」
レナさんが叫ぶと、私の横を何かが通り抜けていった。
ごぉぉ
あらかじめ呪文を唱えていたらしい。
直径が私の身長ほどある大きな火の玉が魔物めがけて飛んでいく。火の玉、いや、炎の渦だ。
レナさん、かなり怒っているみたい。凄い魔法だ。
羽や羽毛など、どうでも良いらしい。獲物としてではなく、敵として攻撃しているんだ。
急降下していた魔物は体制を変えられなかったのか、成す術なく炎の渦に呑まれていく。
キョエ゛ェーーーッッ!!
渦巻く炎の中から魔物の悲痛な叫び声が聞こえた。
ピギィョ、、キキュ、、、
しばらくすると声も聞こえなくなり、しだいに炎も消えていった。
後には、体表が黒こげになった、魔物だったものが残っていた。
「…あなたは私の家族たちに手を出した。私は家族を傷付けるものは、何であろうと許さない。恨むなら私と自分自身を恨みなさい。
ミツキ、怪我は?」
「大丈夫。かすり傷だけ。私よりレナさんの方が。」
「私は大丈夫よ。獣人はね、人より頑丈なの。」
「でも、手当てはしないと。見せてください。」
そういうと、素直に足の傷を見せてくれた。
やっぱり、結構傷が深い。とてもかすり傷とはいえない。
アルコールはないので、魔法で水を出して傷口を洗う。
小さな水の玉をさっきの炎のように回転させて、ゆっくりと、できるだけ優しく洗う。痛みを和らげるために、水を少し温めて。
凄く痛いはずなのに、レナさんはほとんど顔色を変えなかった。
まだ興奮してるから、多少は痛みも和らいでいるのだろうけど、凄い。
私たちに心配をかけまいとしてくれているのだろうか。
そう思いながら、かばんに入っていたきれいな布で傷口をきつく縛る。
「きつくないですか?」
「えぇ、大丈夫よ。ありがとう。ミツキはやっぱり凄いわね。傷の処置も速いし、人なのに、もうあまり動じていないみたい。私たち獣人は、狩りなんかでこういう目に遭うことには慣れてるけど、あなたは違うでしょう?」
「あはは。そう見えますか?これでも結構キてるんですよ。ただ、今ここで狼狽えても何にもならないから。」
「強いのね。」
「まだ気を抜けないだけですよ。今だってまた魔物に襲われるかもしれない。」
「そうね。今日はもう帰りましょう。」
レナさんは、少し笑ってそういった。
「魔物の処理、終わったよ。大丈夫?レナ姉。」
倒した魔物の処理をしていたカイ君が、顔が歪むのを堪えるように言う。
「大丈夫よ。2日もあれば治るわ。魔物の処理ありがとう、カイ。」
レナさん、その傷は2日じゃ治りませんよ。カイ君を安心させるためとはいえ、ちよっと大げさだ。
「一人で運ぶことになっちゃうけど、カイ君は魔物をお願いします。私が薬草の籠を背負っていきますから。」
「薬草の方は私が持つわ。結構重いのよ、あれ。」
気にせずに、篭を背負う。
「・・確かに、ちょっと重いですねこれ。それじゃあ、私のかばんに入る分をレナさんにお願いします。怪我人に無理はさせたくないですけど。」
「わかったわ。ミツキも結構頑固なのね。」
ここは譲れないので、しっかり言う。しかし、頑固と言うのは少し違うと思うのだけど。
「お願いします。」
私のかばんに入る分だけ薬草を入れて、レナさんに渡す。水袋は、いつでも満たせるので空にしておいた。
「こっちも準備できました。行きましょう。」
カイ君は、魔物を縄で添え木と身体に縛って背中に背負っている。自分の身体と同じくらいの大きさなのに、余裕の顔をしてる。さすがだ。もふも…。いや、今日は気分じゃないや。
こうして、私たちは帰路につくことになった。
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すみません。
次回、また少し空くかもしれません。