天幕の中の仔うさぎ
すみません。
中々ネタが思いつきませんでした。
また遠くないうちに上げたいと思います。
(2021/10/29編集
読みにくかったので、ちょっと改稿)
「あ、ども」
惚けた顔で首だけ前に出すようなミツキの礼に数瞬動きを止めた女性だったが、そういうものと受け止めたのか はたまた華麗にスルーしたのか、何事も無かったように話し始めた。
そのついでか、さらっと口元の食べかすを布で拭われた。
やだ恥ずかしいっ。
「聖樹の会議室にて気絶されました折、元老モッド様のお心遣いにより、同性である私が御身をこちらまで運ばせて頂きました。
勝手かとは思いましたが、お休みの間に身体を布で清め寝間着へのお召替えまでをさせて頂いております。
申し遅れました。私、ラズリと申します。以降、側付きをさせて頂きます。お見知りおき頂ければ幸いです。
ご不便ご要望等ありましたら、ぜひ気兼ねなくお申し付けください。」
柔らかな口調で淀みなく次々に難しい言葉が流れてきた。ちょっと溺れそう。
そしてまたしても美しい礼。
その所作は、堅いのにとても柔らかい。
やばい、新しい扉開けちゃいそう。
まあしかし、やはりというか何というか彼女は側付きらしい。私の。偉くなった気分。
淑やかなメイドって感じだもんね。
彼女、ラズリさんは黒、いや深い藍色だ。その髪は光に透けるととても綺麗な青色をしている。頭の上にくるりと纏め、上から布で留めている。
着ているのは洋館風のクラシックなメイド服。
深緑色の細くダボ付きのないワンピースに、膝にかかる同色に黒い縁の前掛け。上半身は真ん中に小さな6連の黒ボタンと胸元には結ばれた真っ直ぐな黒いリボンを付けている。
きっちり留められた襟と袖には白いレースがあしらわれているけど、汚れ一つなく真っ白なまま。
本当、かっこいい。そんな格好が似合う女性になりたい。いや、なりたかった。
今からでも目指せるかな。やっぱり色気が大事なのかな?淑やかで健全な色気っていうの?
執事もメイドも格好いい人って目指すべき大人の形その一つだと思うんだよ。
頑張って内面磨いていればいつかそんな大人になれるかな。
それにしてもあの元老、白小人の心遣いか知らないけど、この人1人で私をここまで運んだって言ってたよね。側付きって凄いんだね。そんな事までしなきゃいけないんだ。階段の昇り降りとかもあったんじゃないかな。そういう魔法もあったりするのかな。そうだといいな。
「よろしくお願いします。」
ごめんなさい。考え事でちょっと間が空いちゃった。
「これからの予定ですが、もし不都合等ありませんでしたら私共エルフの正式な謝罪の場に少々のお時間を頂きたいと思っております。いかが致しましょうか。」
えと。うん。正式な謝罪ね。まあ、ね。もういいよね。いらないよね。面倒くさい臭いがぷんぷんするもん。
時間くれって?寝てたいかなー。ラズリさんには申し訳ないけど御堅い話聞いてるよりもお部屋に籠ってのんびりしたい。欲を言うなら森の見学とかしてみたいなー。〔隠れ里、エルフの森の生活を覗いてみよう!ツアー〕的なの、していたい。
「ささやかですが、謝意と歓迎の意を込めた昼食の席もご用意させて頂いております。」
エルフのごはん!
ああ、ごはんかぁ。ちょっと気にはなるんだけど残念ながらさっきレンバス食べたばっかり。むしろお腹の中で水分吸って膨れてきてて少しキツくなってきてるよね。
「よろしければ昼食の前に湯浴みのご用意もございます。」
ああ、それは是非お願いしたいかも。
寝てる間に身体拭いてもらったらしいけど、昨日は結構汚れたからね。できればちゃんと流したいもん。
だけども何も考えないで付いていったらそのまま流れで謝罪へゴー、ってなっちゃわない?強制連行されるくない?
湯浴み終わって身支度して気が付いたら謝罪の場、みたいなさ。逃げ場のない一本道じゃん。レール敷かれちゃってるじゃん?
グレちゃうじゃん。髪染めちゃうじゃん?
謝罪の前に身支度をって。それってつまりその為の湯浴みなんじゃあないですか?注文の多いエルフの森じゃあないですか?謝罪に向かうベルトコンベア乗せられてるよ?綺麗にされて目的地まで流されちゃうよ?
ワタシ、にんげん。出荷シちゃ、め!
「もしご気分が優れないようでしたら、昼食をこちらへお持ちする様に伝えて参ります。謝罪はまた後日、別の形でさせて頂きますのでどうぞお気になさらずに。」
「あ、、、。
、、ありがとう、、ございます。」
あ、いいんだ。出なくても。沈黙を不調と捉えてくれたのかな。
謝罪の場に出なくていいのは嬉しいけど、湯浴みもお預けかぁ。それはちょっと、残念。
「よろしければ、湯浴みだけでもなさいますか?少しは気分も晴れるでしょう。」
神か!
ラズリさん、あなた神だったの。
気遣いのレベルが違うわ。読心ですか。イケメンだわ。かっこ良すぎて惚れちゃうわー。新たな扉開いちゃうわー。力いっぱい開いちゃうわー。
こんにちは、新世界。さようなら私の理性。
「あ、あの、湯浴みだけお願いします。」
謝罪の場を断った後ろめたさからか、はたまたカオスすぎる頭の中を反省したのか、ミツキは座ったまま両手を太腿の上に乗せ頭を下げた。それはまるで項垂れているような、微妙に丁寧に見えなくもない、そんな礼。
「かしこまりました。ではさっそくご案内致します。」
側付きラズリは既にミツキの可笑しな礼に慣れたのか、もはや動きを止める事も無く流れるように湯浴み場まで案内された。
移動してはじめてちゃんと現在地を理解した。今までいたのはどうやら建物の3階一番奥の部屋だったらしく、すぐ隣にあったリフトみたいなもので1階まで降りた。
たぶんだけどあれは魔法のリフトだったと思う。
床が丸くて入り口に腰丈横開きの木柵がついてて、ただそれだけ。
他は特に装置みたいなのは見当たらなかったから、初めはそれが何か全然分からなかった。なにかの儀式の間かと思ったもん。
丸い床の真ん中に2人並んで。何されるんだろって思ってたらラズリさんが「念の為私にお掴まりください」って。ちょっと怖くてラズリさんの袖を気持ち強く握ったよね。で気が付いたら壁が上がってた。
1階毎に窓が無かったら降りてるって分からなかったんじゃないかな。それくらい揺れもないし静かだった。あるのはふわっと頬を撫でる風くらい。それも2人支えてるにしては柔らかくてすごく弱いの。
感動。なんか分からないけど、感動したよね。
あれは本当の意味で魔法のリフトだった。何か夢を見させてもらった気がする。
リフトを降りてまたすぐ隣にあった扉から建物の裏に出れたんだけど、目の前2mくらいにおっきな天幕が。そこが湯浴み場だった。外なんだ。まあでも排水を考えると理には適ってるよね。
リフトのお陰で凄く近かったし。春だから気を付けてれば湯冷めする程でもなさそうだ。良かった。
そんな事を考えながらラズリさんに続いて天幕に入ると、折り返しの先の脱衣場のような所に女の人が3人待ち構えてた。ていうか囲まれた。ちょっと怖かった。
それぞれ笑顔で湯浴み用の道具らしきものを構えてるんだもん。
「彼女たちは湯浴みの手伝いをしてくれる子達です。少しの間彼女たちにこの場を任せ、私は席を外させて頂きます。信頼のおける子たちですので、何なりとお申し付けください。」
ラズリさんの言葉に合わせて、3方からぴったり揃った45度の礼が襲ってくる。
ちょっと引き攣った笑顔で声が出せずに何も言えない自分を置いて、ラズリさんは3人の侍女っぽい人たちに軽く指示を与えると、三度綺麗な礼を残して去っていった。
1人この場に取り残された何とも言えない寂しさと、笑顔の3人に囲まれた恐怖と不安で、私はただ捕まった仔うさぎの如く竦み震える事しかできなかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。少しでも面白いと思って頂けたら嬉しいです。
例のごとく、ミツキの感情はだだ漏れです。
分かりやすいミツキが凄いのか、読み取るラズリが凄いのか。
可笑しな敬語が多数紛れ込んでいるかもしれません。
雰囲気でお楽しみください。
ちなみにミツキの可笑しな言動は基本わざとです。基本。
リフトをロフトと書いてそのまま上げようとしてたなんて事はありません。
ロフトが残っていても温かく笑うのが正しい反応です。
雰囲気でお楽しみください!
m(_ _)m




