出会い
ようやく獣人がでてきます。
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読みやすいように、レイアウトを変えました。
文章も少しだけ修正してあります。
2020/8/19編集
私の名前はみつき。
転生する前は別の名前だったんだけど、一応生まれ変わったわけだし、自分でつけてみた。
名前の由来?転生したのが3月だったから。
え、安直過ぎるって?
名前なんて、その人が識別できればそれで充分。
大事なのは、その人がどういう人間か、だからね。
これからの私が「みつき」という人間を形作っていくんだ。
それってとても怖いことだけど、なんだかわくわくする。
未来を想像して楽しみだと思うなんて、今までの私じゃ考えられなかった。
前より感情というものがよくわかるようになった。
抑えていた分、そういったものに敏感になっているのかも。
自分の中に色んな感情が渦巻いてる。
良いものも悪いものも、言葉にできないものも。
これまで知らなかった、気付かなかった感覚。
でも、なんだか安心する。
今なら何があっても大丈夫だと思える。
まぁ、突然のことで不安も多いんだけどね。
現状すらよくわかっていないし。
でもそれ以上に、これからのことが楽しみで仕方がない。
この先にどんなことが起こるのか、想像するだけで胸が高鳴る、わくわくする。
今までと世界が違って見える。
今までとは違う世界なんだけど、そうじゃない。
見たことのない木々や草花に、聞こえてくる楽しそうな鳥たちの声。木々の隙間から降り注ぐ暖かな光、森を駆けぬける爽やかな風。そういったものがたまらなく美しい。
あぁ、世界はこんなにも光に満ちていたんだ。
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さてと
このまま乙女やってるわけにもいかないし
なにか行動しないと。
まずは、現状確認。
今の私の装備は、っと。
白いワンピースに細めのベルト、茶色いケープと茶色い長靴。ブーツみたいでちょっと可愛い。
そして上から長めの外套を羽織ってる。
昔のオーソドックスな格好だ。
持ちものは、左腰に布のカバンと右腰後ろにナイフ一本。
カバンは体に密着するようにベルトと太もものところで固定してある。
中には水の入った革袋と非常食らしきものに、柔らかい布一枚。櫛と、香水(?)かな、が入ってる。
多分全部この世界のものなんだろう。初期装備にしてはかなりいい方だ。
太陽位置と森の気温の低さから、まだ昼前だとわかる。
日が昇る前の森は結構寒い。
見渡す限りは、小川も素人目にわかるような人の痕跡もない。
森の大きさも、それなりにあるのかもしれない。
少し、先が思いやられる。
森の中でこの格好だと少し動きにくいな。
神様も(他に良い呼び方もないし)もう少し考えてくれたら良かったのに。
まあ、ずっと旅用装備でいるわけにはいかないから、そういう配慮なのかな。
あ、神様で思い出した。
この世界では魔法が使えるんだっけ。
せっかくだ。日が昇るまで、少し練習しておこうかな。
魂の特性を現す、だっけか。
強く願えばいい、とか言ってたな。
全く簡単に言ってくれるよ。
こっちは魔法なんか使ったこともないっていうのに…。
願い、願い、うーん何がいいかな。
よし、「風よ吹け!、なんちゃって~。」
有名な某ファンタジー映画を真似て、指を杖に見立てて振ってみる。
魔法使いっていいよね。
ひゅごーーー!
突然強い風が吹き、目の前の木が可哀想なことになった。
「え、」
「………大地よ四角く盛り上がれ」
もこもこもこ。四角く盛り上がったそれは、頑丈そうで座るのにちょうどよさそうだ。
「よっと、うん少し喉が渇いたなあ。」
目の前に、口に含むのにちょうど良い大きさの水滴ができあがる。
「うん、美味しい。
いやいやいや、魔法簡単すぎでしょ!」
出来上がった椅子に腰掛け、目の前の水滴を口に含みながら彼女はつっこんだ。
「よし。少し休めたし、そろそろ人の住むところへ向かうかな。」
一瞬で順応したみつきだった。
「まずはこの森を抜けなくちゃ。
人の通った跡とか小川とかが見つかるといいんだけど。
とりあえずまっすぐ進もう!」
そう言って、みつきは当てもなく歩き始めた。
~~~~~~~~~~
「はあぁぁ、何も見つからないや。
なにもこんな広い森なんかに転生させなくてもいいじゃん…。
もう日が暮れそうだよ。
もう、今日はここらへんで野宿かなぁ。
まあ、怖い猛獣とかに出会わなかっただけ、良しとするか。」
「さすがに地面では何かと怖いから、寝るのにちょうど良さそうな木でも探して、外套に包まって寝よう。」
そう言って、周りを見渡してみる。
嬉しいことに、すぐ近くに、手の届く高さに立派な枝の生えた、大きな木を見つけた。
みつきは木に登って、携帯食で軽く食事を済ませると
早々に外套に包まり横になった。
一日中歩き回って疲れたらしく、すぐに寝息を立て始めていた。
~~~~~~~~
「よーし、今日こそ人に会うぞ~!」
目が覚めて、軽く伸びをしながらそんな独り言を言っていると、後ろからがさごそと何かが近づいてくる音がした。
音をたてないように、素早く後ろを向き、警戒する。
ちなみに、落ちないように左手でしっかりと木の幹にしがみつきながら、だ。
「(なんだろう、猛獣かな。木の上にいるし下手に動かない方がいいよね。)」
そう考え、一応右手をナイフに添えて待機する。
「今日は大物が獲れるといいんだけど。」
そう言いながら現れたのは、みつきよりも少し若く気の弱そうな、いたって普通の男だった。
頭とおしりに狼の耳と尻尾が生えている以外は。
うん、神様が言ってたね。獣人だ。
「どうしよう、、、もふもふしたい!」
理性がぽろりと音を立てて落ちていく。
みつきは、暴走した。。
みつきが男へ飛びかかる。
「うわ、なんだなんだ。敵か??」
緩みきった顔で頭を尻尾をモフり始める。
「くそ、離れろ!」
みつきは G 黒い悪魔を彷彿とさせる動きで男の身体を這い回り、男の手をすり抜けていく。
もふもふもふもふ、、
「あ、こら勝手に耳を触るな。」
もふもふもふもふもふ、、
「・・・お願いだからもう離して…」
もふもふもry、、、
____________
「いやー、ごめんね?いきなり触ったりして。
それにしても もふもふだね、君。」
みつきは、青年の尻尾を撫でながら言う。
その顔は、反省などとは程遠く緩みきっている。
獣人の青年は諦めたように大人しく みつきの隣に座っている。
「女だからって油断した・・。
剣でも使って威嚇すればよかった。。
__もう、いい加減に尻尾触るのやめてくれないか?」
怒りを通り越し、呆れた様子で青年は言った。
「えぇー、まだもふもふしたいのに。しかたないなあ。」
みつきはようやく、不承不承といった様子でモフっていた手を離す。
青年はひとつ大きく息を吐くと、軽く居住まいを正した。
「それで、あなたはこんな所で何をしていたんですか。
見たところただの人間のようですし、街からも遠いこんな森の中で女性一人でいるなんて。」
先程まで怒っていた青年は、尻尾をさわるのを止めたみつきに態度を正して話してくれた。
まだ納得のいかない顔をしてるけど、一応みつきのことを気遣ってくれている。
いきなりあんな事をされたというのに、かなり優しい青年のようだ。
「いや〜、実は道に迷っちゃってね。君に会えて本当によかったよ。道を教えてくれないかな?」
みつきは、先程までの失礼な態度を改めるでも省みるでもなく、てれてれと頭を掻きながらそんなことを言った。
「女性を一人で帰すわけにはいきませんよ。ただ、僕にも仕事があるので。
すみませんが、狩りが終わるまで待っていただけませんか?」
青年は仕方ないというように首を振り、そんな提案をする。
「(なんというジェントルマン!)
え、いいの!?ありがとう!優しいね君。
そういえば名前聞いてなかったね。あ、わたしはみつき。呼び捨てでいいよ。」
「レイです。では、みつきはさっきいた木の上で待っていてください。昼には戻りますから。
何かあったら呼んでください、すぐ戻ります。僕、耳良いので。」
レイはそう言って耳をピコピコと動かした。
みつきに対し、その破壊力は計り知れない。
「(おっふ、、また理性落とすところだった)
本当はレイと一緒に行って手伝いたいけど、さすがに迷惑だよね。
(一人で待つのは、心細いし寂しいからなぁ)」
「狩りの経験があるんですか?」
レイが少し驚いたように聞いてくる。
「いや、ぜんっぜん。でも魔法は結構強いと思うよ。」
顔の前で手を振って否定してから、自慢げに言うみつき。
「魔法、ですか。種類や威力によってはとても助かりますが、見てみないことには、なんとも。」
「(狩りに使う魔法かぁ)何を見せたらいいかな?」
「え、何をって、得意な技とか系統とかはないんですか?」
「うーん、火、水、土、風、光なら大体のことはできるよ」
「それは凄いですね。では、風魔法を使ってあの木に攻撃してみてください」
みつきはびょこっと立ち上がると、右手を前に出しながら一言
「風よ木を貫け」
当たり前のことをするように魔法を使った。
ドスッドスッドスッ!ギギィッ、ズウゥン。
大柄な男性の横幅ほどある大きな木が
幹に3つの大穴を空けられ、ちぎれるように倒れていく。
レイは口をあんぐりと空けて動かない。
「だめかな?レイ。あ、他にも見る?」
固まって何も言わないのを悩んでいるのだと思ったみつきは、不安そうに問いかける。
「あ、す、凄いですね。たった一言であんな大きな木を3度も貫いて倒しちゃうなんて。他のもあんなレベルなんですか??」
「あ、いや。さっきのは、周りに被害が出ないように弱く打ったんだけど。まあ、他のもあれくらいなら平気だよ。」
(ああ、回転とか先を尖らせたりとか、もうちょっと圧縮したりとかすれば周りへの被害も出にくいか)
みつきはそんなことを考えながら質問に答える。
「そ、そうですか・・・。風魔法は肉を傷める心配がないので、狩りには最も適しているんです。威力は先ほどの3分の1程度で十分です。頭の方を狙えば、きれいな状態で獲れるはずです。」
「そうなんだ。でも難しそうだね。動く獲物にちゃんと当てられるかな?」
みつきは、揺れている木の葉に向けて指ほどの風魔法を当てるように練習しながら、不安そうに言う。
あまりにも簡単に魔法を使うみつきの様子に驚き、苦笑いを零すレイ。
「僕が獲物を引き付けますから、みつきは後ろから風魔法をお願いします。」
「りょうかーい」
みつきは早くも魔法が木の葉に当たるようになり、数を増やして遊びながら答える。
こうしてみつきとレイは二人で狩りをすることになった。
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