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~プロローグ~  設定説明回

今回は真面目です


プロローグを分けるのも変かと思い、かなーり長目の1話となっております


処女作につき、暖かい目でお見守りください。

不定期連載予定です。



5/1

読みやすいように、レイアウトを変えました。

文章も少しだけ修正してあります。


今みても、すっごい長いですね笑


 私は普通の女の子。

 いや、もう成人してるから女の子っていうのはちょっと違和感があるなあ。


 うん、女性である。

 この言い方もあんまり慣れないんだけど‥‥


 まあ、なんでもいいよね。

 普通っていうのも曖昧な言葉だし、あくまで自称だからね。


 何が言いたいかと言うと


 私は今、見たことのない動植物で溢れる森の中にいる。

 暖かな春の日差しがとても気持ちいい、うん・・・。



 ‥‥とりあえず、どうしてこんなことになっているのかを説明させて欲しい。

 自分がどういう人間かということもこの状況を作り出した一因のようなので、私の自己紹介からお付き合いください。



 父は自営業のプログラマー、母は福祉系のお仕事。

 兄が二人いて私は末っ子。


 昔は結構仲が良くて、いつも三人で遊んでた。

 今思うと遊んでもらってたんだよなぁ。


 ずっと兄にくっついてたから、女の子らしい遊びなんてほとんどしなかった。

 私服は常にジーパンTシャツ。


 むしろ女の子らしい可愛いものに抵抗があって、身に着けるのは結構恥ずかしかった。

 でも末の女の子ということで、祖父母や両親に買ってもらうのは可愛らしいものが多く、捨てるのももったいないので使ってた。

 そういうのが好きじゃないことも言わなかった。


 というか伝えるという発想すらなかった。


 欲しいものも兄の真似っこ

 昔から人の持っているものが私の欲しいものだった。


 だから、自分の欲しいものが何かなんて

 考えたこともなかったんだ。


 気がつけば、上の兄が中学に入ったくらいから、少しずつ三人で一緒にいる時間も減っていった。

 下の兄とも喧嘩ばかりするようになった。


 下の兄が中学に入る頃には、次第に、二人の兄と話すこともなくなっていった。


 それからはあっという間だった。


 独りになった私は、中学に入り、部活も勉強もそれなりで少し良い高校に入った。

 友達と呼べる人たちもてきたが

 それは、親友とは言えないものだったように思う。


 やりたいことも特になく、適当な大学をいくつか受け、気が付いたら高校を卒業していた。


 そして、受かって行った大学は

 数日で行かなくなった。


 授業についていけないとか、つまらないとか、いじめられたとかでは全くない。

 ただ、大学という社会についていけなかった。


 自分の世間知らずさに驚いた。

 周りと自分が違うのは自覚してた。

 普通でないことも、別にそこまで嫌じゃなかった。


 むしろ自分が特別な気がしていたのかもしれない。

 でも、正直ここまでかけ離れているとは思っていなかった。


 あまり好きじゃなかった自分が嫌いになった。

 普通でない自分が恥ずかしくなった。


 自分の身勝手さも、適当さも。

 自分の無知も無力さも。

 ちんけなプライドも。


 全部、全部、なかったことにして

 一からやり直したいとも思った。


 だから自殺も考えたけど、どんなに調べても

 誰にも迷惑をかけずに消える方法なんてどこにもなかった。



 それからの私は惰性(たせい)で生きた。


 半年ほどは何もせず、ネットサーフィンや動画を観たりしていた。

 ニートになる気はなかったので適当にバイトをして、家にいるときはネットと動画。


 趣味くらいはあった方がいいと思い、家でできることを片っ端から試したりもした。

 このご時世、調べれば大抵のことはできた。

 漫画や小説などの創作、フラリッシュ(トランプカードでかっこよく魅せる技だ)、彫刻、クラフト、写経や習字、ダンスに料理に太極拳。どうでもいい雑学なんかも。

 他にもいろいろ。


 無駄な知識ばかりが増え

 時間だけが過ぎていった。



 そして昨日。

 一日の終わりに、いつものように布団でスマホを弄りながらうつらうつらしていると


 おかしな「夢」を見た。




 __________




 白い空間の中に

 美術の教科書に載ってそうな

 強そうなおじさんの石の彫像が、ひとつ


 目の前に浮かんでいた。


 周りを見渡すこともできず

 その彫像から目が離せない。


 視界はぼんやりしているのに、その彫像の服の(しわ)や髪の一本一本まではっきりとわかる。

 見えるのではなく、わかる。


 夢なのだろうけど、妙に現実味のある感覚。



 私が一通り状況の観察を終えたとき

 タイミングよく私に語り掛ける「声」が聞こえた。



『汝は何故(なにゆえ)生きてきた』



 女性とも男性ともとれる低めの声

 頭に直接響いてくるみたいだ。


 まるでその石の彫像が話しているように感じた。



他人(ひと)に迷惑をかけてまで死ねないから。」


 私は不思議と素直に答えていた。



『死を望むのか。汝にとって死とは救いか』



「うーん、少し違う。

 望みはするけどそれが嬉しいとは思わない。

 いざとなったら死にたくないと思うんじゃないかな。」



『汝にとって生とは何だ』



惰性(だせい)。」



『意味はない、と?』



「よくわからない。

 一生懸命生きてる人はすごいと思うし尊敬もする。

 ただ、自分が最低なだけなんだ。

 消えてしまえたら楽だろうね。」



『死を望み、その先はどうする』



「その先? 考えたことなかった。

 でも、最初に死を望んだのは終わらせたい、やり直したいと思ったからだよ、たぶん。」


 彫像が少し笑ったように見えた。

 あまり良い笑顔ではないと思う。



()()()()()()、か。

 やり直してどうする』



「もっと素直に一生懸命生きたいと思った。」



『…最初にと言ったな。今は?』



「どうもしない。

 いや、違う。「出来ない」かな。

 私が今の自分のままやり直しても、また同じことを繰り返すだけだって気付いたから。

 (本当に自分が情けない‥‥)

 いっそ誰かに強制的にでも自分を変えてもらえたら、もっとましな生き方ができるのかな、はは。」



『自分が嫌いか』



「そうだね、嫌いだよ。自分が嫌いでしかだがない。

 でも、好きでもある。」



『なぜ』



「小さい頃は、努力なんかしなくても大抵のことは他人よりできたんだ。

 そんな自分が誇らしくて、自分が一番だと思ってた。


 でも気が付いたら周りには自分よりすごい人がたくさんいて、自分だけ子供のまま取り残されてた。


 そうして残ったのは

 どうしようもない自尊心と他者への劣等感をもつ

 楽観主義と悲観主義の混在したよくわからないちっぽけな自分。

 YDK〈やればできる子、まだ本気出してないだけ〉ってやつになってた。


 できない、無理だって言って、目を背けたいだけの

 ちっぽけなニンゲンに。


 頑張っても届かなかったらっていう不安と、惰性で続く今の生活の楽さから抜け出したくない気持ちから

 何もできない、しない自分。


 それでも心のどこかでなんとかなるって思ってる。


 最低なんだ。」



『___そなたの気持ちはよくわかった。

  では汝に新しい生と、強制的に充実した生活を与えよう。』



 白い空間がさらに白く光っていく。


「・・・え?(何言ってんだコイツ)

 新しい生?終わってもないのに?


 それに強制的に充実した生活って、なに!」



 少し光が弱まり、()()は言う。


『あぁ、忘れておった。

 そなたは、死んだのだ。


 脳の血管がこう、ぷちっとな。

 布団の中でそのまま眠るようにとても安らかな死であった。

 ここへ来た時のそなたの反応があまりに素直すぎて、てっきり全てを理解しているのかと思ってな。』



「 嘘、私死んだの!?

 え、ていうか『こう、ぷちっとな』って何、軽っ!」


(あれ、なんかキャラ変わった?

 あぁ、こっちが()か…)



『気付かないほど安らかな死とは。

 そなた、付いておるのう。』



「ええぇ・・・。

(なんだかなぁ。でも…)


 そっか。私、死んだのか。

(あれほど望んでた死、何も感じない。

 あぁ、少し寂しいかも。)


 そっか。

(心のどこかで安心してる自分がいる。

 ホントに、死んでも情けないなぁ。はぁ。)


 ‥‥‥それで、強制的に充実した生活って何?」



『そなたも軽いのう。

 強制的にというのはそのままの意味だ。

 そなたの望み通り、怠けた生活を続けることができん身体にしてやったわ。ふはは』



「そんな、ことが・・・。

 それじゃあずっと働きっぱなしってこと??」



『いや、充実した生活を送るのに最低限働けばよい。

 怠けておらねば趣味に没頭するのも良いぞ。

 あとはまあ、あまり長く怠けておらねば大丈夫じゃろうて。』


(じゃろうて?

 気抜きすぎじゃない?このおばおじさん。


 でも、充実した生活のために働かされる、か。

 もし本当だったら悪くはないのかも、、。)


「働かないとどうなるの」



『働きたくてうずうずしてくる。』



「」



『___では、これより汝に新しい生を与える。素直に一生懸命生きるが良い。』



「いや、待って待って待って!

 聞きたい事が、まだ。

 (なんか勝手に終わらせようとしたよね!?)

 あなたは何者でここはどこ?

 どうして私にそんなことをしてくれるの。」



『・・・・・。

(伝えるべき、か。)

 わしはそなたらの言う神というものに近い存在。


 ただ、()()()には大した力はない。

 魂の管理者とでも言うべきか。

 まあ管理というよりはサポートだな。

 俗世で穢れた魂を浄化し、記憶を封じて然るべきところに転生させる。

 それによって魂の成長を促し、見守る。

 それがわしの役目。


 本来なら万物の生死に関わることはしないが、そなたは例外だった。

 元から壊れかけていた魂が限界を迎えていた。

 死を与え、一度俗世から呼び戻し早急に魂を浄化せねば、魂が壊れてしまい()ねなかったのだ。


 そして、ここはそなたの魂の中、精神世界ともいうべきか。

 意識も無意識もない。

 言葉にならない、そなたのありのままの精神が現れる場所だ。


 わしは、そなたの魂を浄化し、記憶をそのままに新たな世界へと転生させるためにここに来た。


 何か、聞きたい事はあるか。』



(信じられないけど、まだ否定もできない…

 本当だとしたら、なんかあれだな、うん・・)


「……私の魂が元から壊れかけていたのなら、どうして今まで放っておいたの。」



『本来ならわしらが万物の生死に関わることは許されないのだ。

 ほんの数日前まで反対派や上層との議論が続いていた。

 今回は例外に例外が重なったからこそ救うことができたのだ。

 そして、その例外に例外を重ねたそなたの魂の性質を見極めるための、記憶を持たせたままの転生、という特別処置。

 そなたのような変わった成長を見せた特別な魂でなければ、確実に見捨てられていた。


 だが

 結果的に長く、そなたを一人で苦しめたこと

 深く謝罪する。』



「ごめんなさい、さっきの話からなんとなくは分かっていたんだけど・・。」

(なんか癪だな、と思ったんだけど

 人を責められる身じゃないよね。)



『謝るな。謝るべきはわしなのだ。

 そなたの魂は初めから壊れかけておった。


 だから、感情を抑えたり物事を受け入れる器を心と別にしたりと、魂を削り、あらゆる手段を用いて魂が壊れるのを防ごうとしていた。


 そなたも、何となく気づいておったのではないか。

 自分の魂が、周りからの刺激を拒絶しておった事に。


 そして

 そのそなたの魂の損傷。


 原因はわしだった。


 そなたを転生させたときの魂の浄化が甘かったのだ。

 安定しているように見えたので、つい手を抜いてしまった。


(その実、純粋で強くそれ(ゆえ)に壊れやすい、わしらが最も優先して()()()()魂であったのだが。)


 普通の魂であれば10年を待たず壊れてしまっていただろう。

 特に精神が成熟してからは小さな刺激でさえも、壊れるきっかけに成り得た。


 しかし、そなたの魂は不安定ではあったものの、成人して(なお)、それに耐え続けた。

 あらゆるものを削り、その限界を迎えるまで。

 信じられんことだ。賞賛に値する。


 よくぞ独りで

 よくぞ、ここまで頑張った。』


 そういって()()は私の目をじっと見つめた。



 自然と涙が(こぼ)れていた。

 自分でも止められなかった。

 何かが、心の底から溢れてくる。

 決壊したダムのように、自分の知らない感情が溢れてくる。


 自分を許してくれる存在がいる。


 それも、私の全てを

 心の中も、これまでしてきたことも

 恐らく全部知っているこの存在が


 私のことを認め、褒めてくれた。



 自分はみんなと違うんじゃないか。

 もしかしたら人間じゃない別の何かなんじゃないか。

 どこかそんな違和感があった。


 自分の意思、感情、周りの人がもっているよりも明らかに弱い私のそれ。

 「たいした問題じゃない、それが自分なんだ」と自分に言い聞かせて目を背けてきた。

 でも違った。

 自分にはこんなにも、(あふ)れるほどの感情があった。

 無意識の中で押さえられていただけだったんだ。


 ようやく自分も人になれた気がした。


 普通に、なれた気がした。



「ありがとう、、ござい、ます」



『すまなかった。

 だが、もう何も心配することはない。

 そなたは一人ではない。

 私がずっと(そば)で見守っていよう。』



「あ、あ゛あぁ‥‥」


 私は、声を上げて泣いた。


 子供のように。

 溢れだす感情のままに。



 ~~~~~~~



「ごめんなさい。もう、大丈夫。」



『そうか、別に構わん。(この子は、本当に…)

 他に、聞きたい事はあるか。』



「うん、私がこれから転生する場所について聞きたい。」



『そなたがこれから行くのは所謂(いわゆる)魔法という概念が存在する世界。

 獣人や妖精など様々な種族がいる。もちろん人も。


 種族の違いは、魂の最も強い特性がその体に形となって現れる。魂の特性が体外に現れやすい、純粋な魂が送られる世界だ。そなたにとっては、多少なり生きやすい世界だろう。


 転生の時、魂に合わせた体の変化を促すが

 そなたはおそらく、人のまま転生することになる。そういう魂だ。 


 星の環境は地球とそう変わらない。大きさは地球の半分程か。

 その中でも日本に近い環境の所に送ろう。


 基本的な文明レベルは中世ヨーロッパくらいだ。

 水路と薪の生活だな。

 まぁ、魔法で代用される部分も多い、中世よりは生きやすいはずだ。

 生活水準もまあ、良い方だろう。


 治安は悪くはないが知らない環境だ。

 危険も多い。油断はするな。


 魔法の使い方を教えておこう。自衛の役にもたつ。

 なに、簡単なことだ。

 魂の特性を体外に現す、つまりは精神、意思・感情の力だ。


 強く願え。


 そうすれば形をもって応えてくれるはずだ。

 強い魂を持つそなたなら、大丈夫だろう。


 他に、聞きたいことはあるか。』



(言葉だけで理解できるのは

 せいぜいこのくらいか。)


「もう、ない。ありがとう。」


 私は覚悟を決めてそう答えた。



『そうか。


 ____では、汝に新たな生を与える。


 自分の言葉に従い、素直に一生懸命生きよ。

 わしがいつでも見守っていることを忘れるな。』


(どうか、幸せな生を。)


 再び、白い空間が更に白く光り始める。



 私はもう()()を疑ってはいなかった。

 すべて真実なのだと。


 だからこそ、心から思った。



「ありがとう、助けてくれて。

 ありがとう、私を認めてくれて。


 あなたに出会えて、話すことができて

 本当に良かった。」



 光のなかでぼやけて

 ほとんど見えない石像が


 少し揺らいで

 暖かく微笑んだような気がした。




 ____________



少しでも面白いと感じて頂けたら幸いです。

その際は是非、コメントや感想、ブックマーク等、よろしくお願いします。

反応があること自体が嬉しいので、誤字脱字修正なども大歓迎です。

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