89話目
「準備が整いました。」
「それじゃあ、初めてちょうだい。」
「かしこまりました。」
そういって、目の前にいた10個ほどの影が、
すぅ~っと暗闇の中へと消えていった。
その影を私は見送りながら、常駐宿の一階へと行く。
今日は・・・とある侯爵・・・というか、フエゴ領で侯爵といえば、
フエゴ侯爵しかいない・・・か・・・
アーサーの父親であるフエゴ侯爵に呼ばれて、
今からフエゴ侯爵の屋敷へと向かうのであった。
すでに宿の入り口にはフエゴ侯爵が手配した馬車が待っており、
「どうぞ、こちらへ。」
私の姿を見るなり、フエゴ侯爵の執事長であるセバスチャンが、
馬車の乗り込み口を開けてくれるのであった。
「ありがとうございます。」
そういいながら、馬車へと向かうとすっと差し出された手を取り、
馬車の中へと乗り込んだ。
私が座った後で、アンブリッジも同じように馬車に乗ると、
「それでは向かいます。」
そうセバスチャンが私たちに伝えて、馬車は進んでいくのであった。
私たちが今常駐している宿からは、30分ほど走るとフエゴ侯爵の屋敷に到着する。
・・・到着するはずなのだけど・・・
今は宿を出て10分少々くらいしか経過していないはずなのに
なぜか馬車のスピードが緩まっていった・・・。
「・・・ジョセフィーヌ王女様。」
そういって、向かいに座っていたアンブリッジが立ち上がって、
短剣を片手にもって、馬車のノリ口部分や天井部分に警戒感をだしていた。
そう・・・考えるわよね・・・
私も備えているアンブリッジの行動に理解を示して、
私もゆっくりと詠唱を始めるのであった。
誰がどこから襲ってくるかわからない現状であるため
自分たちを守るべき魔法の壁を展開しようとした時のことである、
“コンコン”
馬車の扉がノックされて、
「目的地に着きました。」
そうセバスチャンが私たちに伝えてきたのであった!!
私とアンブリッジはお互いの目を合わせてうなづき、
持っていた武器に一層力を籠めるのであったが、
「アーサー様のお屋敷でございます。」
「・・・え?」
予想だにしないことを聞かせれてしまって、
間抜けな返事となってしまう。
だけどそれも仕方がないじゃない!!
どうしてここでアーサーの名前が出てくるのよ!?
思わずアンブリッジのほうを見るのだが、
彼女もまた何も知らなかったようで首を横に振るのであった。
・・・はめられた!?
すでに私の中では警戒感が生まれている。
そもそも今日襲撃するタイミングで私を食事に誘ってきたこと自体がきな臭い!!
アーサー(めざとい)のことだから、私が王家の暗殺部隊をフエゴ領に連れてきているのを
知っているような気もするし。
そして、その暗殺部隊がそろっているのなら、
襲うということも理解しているわよね・・・
そもそも・・・
フエゴをひそかに保護しているという情報が
私たちにもたらされた時期も相当に怪しかった。
だけど、それでも前に進むしかない状況に・・・
アーサーが仕向けたのか・・・
「はぁ~・・・行きましょうかアンブリッジ。」
「よ、よろしいのですか?」
「まあ、すべてあの男の掌の中で踊っていたというのは気に入らないけど、
それでも・・・まだ私たちが勝つチャンスがあるわよ。」
「・・・は、はい・・・。」
アンブリッジのことだから私が強がりを言っていると思っているかもしれないけど、
そんなことはない!!
どうせ罠とわかっていたのだ!
だけど、餌だけは絶対に食べるつもりだ!!
そのあとは、私は王女であるのだから、
どうとでもなるわよ!!
王家に逆らう貴族なんているわけがないわ!!
もみ消すことも造作もないことよ!
・・・今日でフエゴ侯爵家も終わるわよ・・・
そんなことを考えていると、なぜか笑みがこぼれてくる。
きっとアーサーの中では、私はまだまだひよこだと思っているかもしれないけど、
すでに私は獰猛な猛禽類よ!!
ふふふ、その身をもって知るのよ!!
そう言葉には出さずに内心で思いながら、
私はアンブリッジが先に降りて、開けてくれた扉をくぐって、
馬車から降りるのである。
目の前には大きな門があり、その奥には、本日の主催者である
アーサーがいる大きな屋敷がそびえたっていた。
「・・・いくわよ。」
私の言葉にうなづいてしっかりとアンブリッジは後ろを
ついてきてくれるのであった。
さてと・・・そろそろご退場してもいいんじゃないのアーサー!!
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




