63話目
「・・・分かったか。
第二王女は・・・王の命令で近づくようだ。」
「やはり・・・。」
そう答えながら、絶望に撃ち落される気持ちなっていた。
あの第二王女・・・いや、あの女は・・・
思い出しただけでも気分を害する!!
特に・・・
絶対に忘れはしないことがある・・・
私は侯爵令嬢であり、侯爵令嬢ともなれば、当然幼い頃から婚約者もいた。
そう・・・“いた”・・・だ・・・。
ここまで話せば簡単だろう。
第二王女であるジョセフィーヌに婚約者を掠め取られたのである・・・
し・か・も!!
あろうことか、その掠め取った後で、私に向かって、
「貴方に上げましょうか?もう飽きたし。」
何て言ってきたのである!!!
その時、笑顔を絶やすことは当然侯爵令嬢の嗜みとして忘れなかったけど、
内心では・・・
埋めたろか!!!このボケナス王女が!!!
と、大声で叫んでいた!
・・・そもそも掠め取ったのも私への当てつけのためである。
私とジョセフィーヌは年が近い。
だから、色々なところで会うのだけど・・・
毎回私に絡んでくる女である。
マウンティングをして何が楽しいのでしょうかね?
と思ていて、相手にしていなかったのですが、
そんな私の態度が気に入らなかったのでしょう。
私の婚約者を掠め取るという強行に及んだのです!
周りの貴族達も唖然とする。
当然お父様は烈火のごとく怒る。
それを見て満足したジョセフィーヌは、搾取も完了していたので
すぐに私に返してきたのであった・・・
・・・ああ・・・思い出しだけでも忌々しい!!
ホント!あのジョセフィーヌ(あばずれ)が王女でなければ、
間違いなく市中引き回ししているわよ!!
「・・・おほん!・・・話の続きをしていいかな、アイリス?」
「し、失礼しました。どうぞ、続けてください。」
いけないいけない!
私は侯爵令嬢よ!表情に出してはいけないわ!!
そう思いながら、お父様からの言葉を待つと、
「王と第二王女の狙いは、バリティッシュ男爵の籠絡だろう。」
「・・・そうだと思います。」
私はお父様の意見に同意する。
そうでなければ、男爵位程度の男にジョセフィーヌが近づくわけがないし、
王が差し向けるはずもない。
「あの剣はバリティッシュ男爵しか使えない剣である上に、
どうやらバリティッシュ男爵の命を奪う剣のようだ。」
「・・・命を・・・ですか?」
「ああ、あの時の詠唱は己の命を捧げる代わり、
相手の命を奪えと言っていていたからな。
まあ、命を一撃で奪うとなれば、そのリバウンドも考えられる。」
「・・・なるほど。」
「王の命令で剣を披露したバリティッシュ男爵だ。
きっと国に対する忠誠心が高いのだろう。
だから、あのような決闘の場でも披露したんだ。」
「はい・・・。」
「バリティッシュ男爵は、きっと国のために、国民のために
その剣を捧げる男だ。そして、そんな忠誠心に満ちた男が
第二王女に籠絡されたとすれば・・・あの王の傀儡にされてしまう。」
「・・・それは・・・最悪の事態ですね。」
私の中で、最悪なシナリオをが組み上がる。
王の傀儡にされてしまえば・・・
国を国民を守るべき剣が、逆にこちらに向いてくるということだ!!
ドラゴンをも葬るその実力を持つバリティッシュ男爵を傀儡にして、
自分に反抗する貴族や国民を切り伏せていく・・・
そしてその恐怖で国を縛り、自分の言いなりにしていくことが
容易に想像できるのである。
・・・地獄ですね・・・
「ああ・・・だから・・・。」
言い難そうにお父様が言うのだけど、
すでに私の覚悟は決まっている。
王親子に危険なハサミは持たせてはいけない・・・
国が亡ぶ・・・
「分かりました。婚約者になれるかは、正直に言って分かりませんが、
バリティッシュ男爵様のお傍におられるようにします。
そして最悪の事態にならないようにこの身をかけさせていただきます。」
「・・・すまないな・・・・。
こんなことで娘を使ってしまう父親であって・・。」
「何をおっしゃいますか!!
この国の・・・そして、この王国の民のために
この身はあり、それこそが貴族の務めだと思っております。
今回のことは貴族の務めです!!」
覚悟は決まっている・・・
ただ、ちょっと邪な部分もある・・・
前回は後れを取ったけど・・・
今回はジョセフィーヌ・・・
あなたに地団太を踏んでもらうわよ!!
心の中で黒い笑いをしながら、私は足早に執務室を出るのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




