60話目
「王様、すぐにバリティッシュに追手を差し出すべきです!!」
「あのソウルイーターの力はすさまじかった・・・。
ドラゴンすら討伐可能なのです!!
あのソウルイーターは我々の手に入れるべきです!」
「ソウルイーターは王都にあるべきです!!
すぐに刺客を送って、ソウルイーターを手に入れるべきです!!」
みなが儂にソウルイーターを我が物にするように提言するのだが・・・
「ならば、あのソウルイーターを手に入れた後に
誰があのソウルイーターを振るうつもりじゃ?」
「「「・・・。」」」
誰もが口を閉ざす。
それもそのはずじゃ、
「あの決闘の際、バリティッシュが言っていた詠唱を覚えておるか?」
「「「・・・。」」」
「あのソウルイーターは、使用者の寿命と引き換えに、
その力を発揮するのじゃぞ?
詠唱を唱える前は、あんな無様な剣がソウルイーターだと!?と
みなが思っていただろうが、
バリティッシュが詠唱を唱えるとその力が解放されて、
見事にグンテを一撃の下で死に至らしめた!
それもあんな武術の経験も乏しいだろう素人の剣をもってしてもだ!!
更には、ドラゴンすら討伐していおるだろう。
あの力・・・まさに本物じゃ。」
「「「・・・。」」」
「そして、その力が本物なのじゃとしたら、
バリティッシュが唱えていた詠唱もまた本物だろう。
己の寿命を与えるということは・・・。
さて、そのソウルイーターを手に入れた後に、
儂のためにその剣を振るってくれる者はおるか?」
「「「・・・。」」」
「どうじゃ、宰相サンソン。
お主は儂のためにソウルイーターを振ってくれるか?」
「お戯れを・・・。
私目は所詮は文しかない身でございます。
武に優れた者こそソウルイーターを振るうには相応しかと思います。」
「そうか・・・それなら、カリグラ近衛騎士団騎士団長、
そなたは儂のためにソウルイーターを振るってくれるか?」
「喜んでと申し上げたいのですが、
私がいなくなれば誰も近衛騎士団を率いる者がおりません。
それでは困りますので我が近衛騎士団にいる騎士の中から選抜いたしましょう。」
「・・・そちはどうだ、大臣エーザンよ。」
「私目は箸より重たいものを持ったことがございません。
最近その箸すらも侍女に持たせている始末でございます。
そのため必要とあらば、侍女に命じましょう。」
どいつもこいつも・・・
儂のために尽くす気など毛ほどもない!
・・・聞くまでもなかったわ・・・
それに対して、バリティッシュは我が命に応じて、
決闘だというのに、己の寿命をかけて振るった男・・・
このような者にこそソウルイーターという剣は相応しいのだ。
儂のために命を捨てることが出来る者こそ・・・な。
「ソウルイーターは、そのままバリティッシュに渡しておく。」
「何ですと!?そんなことが許されるわけではございません!?」
「そうです!何としても我々の手に入れるべき剣でございます。」
儂の発言に噛みついてくる宰相や騎士団長に
「バリティッシュは儂のためにいとも簡単に命を懸けたぞ。」
その言葉を聞いた者達は先ほどまでの勢いを完全に失って、
静かになってしまう。
「まあ、ただ、自由にバリティッシュのモノにしておくわけにはいかんがな。」
「・・・何か良い案が?」
「うむ、儂の娘である第二王女ジョセフィーヌを与えてはどうかと思うが・・・
どう思う?」
「「「・・・。」」」
3人ともが静かになる。
それもそうだろうな・・・
この案は妙案であるのだから。
ハッキリと言って、我が娘であるジョセフィーヌの評判は著しく悪い。
男と見れば誰それかまわず寝る娘だ。
それが妻がいようが関係ない!
まだ平民ども相手にしていればいいが、
当然平民だけではなく貴族の男にまで手を出す。
そして、その家庭を崩壊させていくのだ。
その崩壊していく様を嬉々としているのだから、
手に負えない・・・
基本的には頭の悪く、素行も悪いのだが、
王女であるため誰も注意することも出来ないのである。
「・・・良き案かと思います。」
そう言ったのは美男な将軍カリグラである。
「・・・最初に意見を言うとは・・・まあ、それもそうだろうな。
今の狙いは、そなたと聞いておるぞ、カリグラ。」
「・・・お戯れを・・・。
私程度の男では、つり合いが取れません。」
遊び人であるカリグラすら、困り果てている始末の娘だ。
それに今まさに狙われ始めたのだから、
是が非でもこの案に飛び乗りたいところだろう。
「・・・第二王女を差し出して・・・いかがするつもりですか?」
「あの男に足枷をかしてやるのだ。
第二王女を差し出したのだから・・・儂の命に従えとな。」
「格があまりにも違い過ぎますが・・・。」
「くくく、今更ジョセフィーヌに対して、格など誰が指摘してくるか。
もう何人と離婚してきたと思っておる。」
「・・・。」
皆が口をつぐんでしまい、何も反論が返ってこないことを確認して、
「これで当分はあのジョセフィーヌ(ましょう)のことで悩まなくて済むわ。」
そう言って、笑うのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




