55話目
・・・また俺は・・・やったのか?
俺の記憶は全くない・・・
それにも関わず、俺は・・・
今度はドラゴンを討伐したというのだろうか?
そもそも討伐したという記憶がない・・・
「俺は・・・グンテを倒したあと・・・どうしたんだっけ?」
その俺の言葉に・・・いつもの通り・・・いや、いつも以上にか・・・
冷たい視線を向けてくるサーター。
「はぁ~・・・。」
明らかに露骨なため息をつくサーター。
こ、こいつ!!
だけど、ここで詰め寄っても真実が聞けないのだ!
ここにサーターがいるということは、
こいつは俺のことをやはり心配してずっと俺の傍にいてくれたのだろう。
なんだかんだ言ってもこいつは俺を好きだからな~。
「見事に討伐されたのですよ、領主様。」
「いや、それは知っているのだ!その討伐の仕方はどうしていたんだ?」
「また・・・覚えてないのですか?」
「あ、ああ・・・ただ、大丈夫だ!所々はしっかりと覚えているんだぞ!
だけど、全体を第三者から見た視点でも聞いておきたいじゃないか!!」
「はぁ~・・・。」
「だから、頼む!俺に真実を・・・いや、サーターが見た光景を教えてくれ!!」
「・・・はい、かしこまりました・・・。
まず、ドラゴンが滑空してくるのを領主は待っておられました。」
「どうして?」
「・・・。」
ものすごく冷たい視線がサーターから注がれる・・・
「いや、わかってるんだ。俺も意図があって、待っていたからな・・・あ、あはははは。」
「・・・上空にいるドラゴンへの攻撃が出来ませんから、
下降してくるのを待っておられたのです。」
「ああ、なるほどね!」
「・・・。」
「いや、うおぉほん!続けてくれ!」
「・・・滑空してきたドラゴンが地面すれすれを滑空しだしたので、
その進路方向に向かっていきなり、飛びだされたのです。」
「そんな自殺行為を俺が!?」
「・・・。」
「い、いや、なるほど、俺なら死なないと確信していて飛び出したんだ!
現に、俺はこの通りピンピンしているしな!」
「・・・そして、口の中に飛び込まれたのです。」
「はぶぅふう!?そんな死にたがりなことを!?」
「・・・さっきからおかしな返答をされているようですが・・・
もしかして・・・気絶されてましたか?」
「ふぐぅ!?そ、そんな、こ、こと、あるわけ、あるわけないじゃないか!!
俺はしっかりと口に飛び込んだんだ!間違いない!!
・・・何で俺は口の中に飛び込んだんだ?」
「・・・ドラゴンの皮膚は並の剣では傷をつけることすら
出来ないですからね・・・。」
「なるほど!さすがにソウルイーターとは言え、
折れてしまう可能性があるから、俺は口の中に飛び込んだんだなぁ~・・・。
すげえな~、俺って。」
「・・・領主様?」
「・・・は!?いや、もちろん、俺はそう確信していたから、
口の中に飛び込んだんだぞ!
口の中なら確実に倒せると確信していたんだからな!」
「やはり・・・記憶がないのですか?」
「いいや!ある!俺がドラゴンを倒したんだ!!
俺の実力とソウルイーターで倒したんだ!!
口の中で剣で傷つけて見事に倒したんだ!
ソウルイーターも何事もなく無事であったぞ!!
それは、ほら見てみろ!
その証拠にドラゴンは倒れていて、
更にはソウルイーターが見事に胸元を切り裂いて、
深々と突き刺さっているではないか!!
・・・え?突き刺さっている?
しかも・・・胸元に?
口の中にいたのに?」
ギシギシと動きの悪くなった風車のような動きをする領主。
それもそうでしょう。
領主は口の中で傷をつけて、ドラゴンを討伐したと思っているのに、
目の前のドラゴンの胸元にそのソウルイーターが突き刺さっているのですから・・・
「口の中で何をされていたのかはわかりませんが、
口の中から出てこられた領主は、すぐに踵を返してドラゴンの胸元に向かって
突進をしてソウルイーターを突き刺したのです!
すると断末魔をあげることなく、ドラゴンは息絶えました。」
「・・・突進したのか?俺?」
「はい。」
「なるほど・・・すべて俺の予想通りに事がすすんだんだ!!
俺は意図して口の中に入ったが、どうにかして口の中から出てきて、
そして最後の止めとして胸元にソウルイーターを突き立てた!!
これがすべての真実だ!!
どうだ!!サーター!!俺をほめたたえよ!!」
そう言って、サーターの方を見ると、すでにそこに姿はなく、
なぜかドラゴンの口元へ付近におり、口の中をマジマジと眺めている。
「サーター?」
「なるほど!口の中でソウルイーターを振るった痕があります!」
「なんだと!?」
「ソウルイーターで苦しみだして、落下してきて、
最後の止めが先ほどの胸元への一撃だったのですね・・・。」
「・・・は!?
そ、そうだ!サーターの言う通り、俺は口の中に一撃を加えて、
苦しみだしたドラゴンに、最後の止めでソウルイーターを突き立てのだよ!!」
「そこまで考えられて行動されているとは・・
サーター、本当に尊敬いたします。」
そう言って、深々と頭を下げるサーターを見ながら、俺は満足していた!
例え・・・俺に記憶がなくても・・・っていうか、俺・・・本当に討伐したのか?
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




