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48話目

その後は、当然そのまま妻が出てくるまで待っていたのだが、

出てきた時にはこちらを一度も見ることもなく

馬車に乗り込み去って行ったのであった。


呆然としてしまう私。

どうやっていつもの雨露をしのぐ場所にたどり着いたのかの記憶がないけど、

気がつけばそこにいて、呆然としていた。


そこで私はどれだけいたのだろうかわからない・・・


どれだけご飯を食べずにいたのか分からない・・・


もう体を動かし方もよくわからなくなってきていたような気がする・・・・


そんな時だった。



「奥様を盗られて大変でしたね。」


私の前には3人のコートを羽織った男が現れたのだ!


1人は私に話かけてきたまさに好青年と言った印象を受ける青年。

その後ろにはコートを羽織っていようとはっきりと分かる体の良さ。

隙間から剣が見えることから、騎士なんだろう。


私は警戒していた。


もしかして妻を盗んだ相手なのでは?

そして、私を殺しに来たのではないだろうかと・・・


・・・それももういいか・・・


私には取り返すだけの力もない。


もう何も出来ない私なのだ、だからここで殺されてもいい・・・


そう思っていたのだが、



「奥様を取り返したいと思いませんか?」


その言葉に私は思わず顔を上げる。


何と言った・・・この青年は・・・


そんな私を見て、にんまりと微笑んで、私にもう一度



「奥様を取り返しましょう。その力を私はお貸しします。」


そう言って、私に手を差し伸べてくるのであった。

私はこの時何も考えずに差し伸べられた手を握り返す。


これで妻が取り返せるのなら!!


その後は、この青年が用意していた馬車に乗って、

どこかへと連れ去られた。


罠かもしれない!!


そんな時になって不安になってしまうのだが、

それでももしかしたら妻の情報の一端でも手に入るのではと思い、

黙って馬車に乗り続けていると、

気がつけば貴族街の一角で馬車がとまり、



「まずは食事からしましょう。お話はそれからです。」


そう言って、青年から差し出された手を私はとり、

案内された屋敷に進んでいくのであった。


そこには私が今まで見たことがない世界が広がっており、

私が屋敷に入ろうとすると、そこにはメイド達が並んで私をお出迎えする。


そして、ご飯の前にお風呂へと進められて行くと、

そこには浴槽があり、たっぷりのお湯があるのである!


今までは水浴で、濡れタオルで体を拭くのが一般的だったのに

お湯が、しかも溢れるように出ている!!


私が呆然としていると、そこにはすぐに召使らしき女性が来て、

私の体を洗いだすのである・・・そして・・・私はされるがままに・・・


その後の食事も1カ月分はあるのか?と言うくらいの食事を前にしていた。



「好きなだけ食べてください。」


そんな青年の言葉と同時にかぶりつく様に食べ始める!

もう何日かぶりの食事か分からない食事だ!!


食べることで涙が出て来たのは、これが始めてだった・・・


しばらく、まずは体力回復とのことで、ずっと部屋にいて、

この幸せな時間を私は堪能するのであった・・・




「王子、あいつをどうするおつもりで?」


私の取り巻きの騎士が声をかけてきた。



「どうするとは?」


私の聞き返しに、一瞬身構えるような顔をする騎士。



「あの者に・・・例の笛を与えるのですか?」


「ああ、そのつもりで探したんじゃないか。」


「そうですが・・・・。」


何かがいいたそうな顔をする騎士に私は、



「あの者だからこそ、ドラゴンの角笛を必ず吹いてくれるんじゃないか。」


「そうですが・・・。

 王子、あれは魔力がない者が吹けば、その命を奪う角笛ですよ!!

 あの男は、妻を奪われた不幸な民です!

 民は我々が助けるべき存在です!!」


そう言って、騎士が一歩私に近づいてきた。


・・・こいつの悪い所がでたようだ・・・


だが・・・


こんな奴でも使わなければ、私の陣営は人手不足なのだ。

だから、



「お前の言うことはわかる。

 正直に言って私だって、この選択は辛い・・・。」


そう言って、騎士から背負向けて肩を震わせる。

そんな私に対して、



「王子・・・。」


・・・どうやら、このバカをうまく騙せたようだ。



「だが、このままあのばかをのさばらせていいわけではない!!

 そしてその取り巻きであるあの大臣たちをな!!」


そう言いながら、私はまた騎士の方へと顔を向けて、さらに言葉を続ける。



「アレが生きている限り、この犠牲でははるかにすまない現実が突きつけられるのだぞ!

 私は心を鬼にして、将来非情の王子と言われようと厭わないつもりだ。」


その私の声と姿を見て、涙を流す騎士。

そして騎士はすぐさま跪いて、



「申し訳ございませんでした。

 心を鬼にしなければならない時ですね!!

 粉骨砕身で私も務めさせていただきます!」


「ああ、頼むぞ。」


そう言って、騎士の肩に手を当てると、感動のあまり震えている騎士。



「・・・あれであいつも何も疑わずに王子に尽くしてくれるでしょう。」


「ああ・・・、しかし、我が陣営は本当に人で不足だな・・・。」


今、私の執務室には私の右腕の騎士が1人いる。

この騎士カーンは、以前には王のそばに仕えていたが、

王の意に背いたため失脚したところを私が拾ってやったのだ。



「やはり、腐っても王は王ですから・・・。」


「まったくだ・・・。甘い汁を吸うために大臣達は結束しているからな。

 そして、甘い汁が吸えるのだから、有能な人材はそちらへと流れると・・・。」


王を倒すためには手を汚す策も必要であり、

そのための犠牲も当然必要なのだが、

それを実施するのにくだらない正義感で出来ない者が多すぎる。


あいつもその口なんだな・・・・


本当に腕しか使えない騎士だ。


ちなみに騎士カーンは、使える奴だ。

私のためには暗殺も民の虐殺もいとわない。



「それであの者に角笛は?」


「すでに渡しております。使いかも合わせて教えており、

 我々の合図があればすぐに指示した場所に向かい、角笛を吹いてくれます。」


「そうか、準備ご苦労だったな。」


「いいえ、このくらいなんでもございません。」


そう言って、カーンは俺の部屋から出行く。

それを見送りながら私は、


絶対に・・・王を殺す・・・取り巻きの大臣どもと共に・・・


そして、その甘い汁は私の物だ・・・



「ふ、ふふ、ははははは!!!」


私の執務室には笑い声が響くのであった。



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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