47話目
宿屋を盗られた哀れな俺がフラフラと街をさまよっている時に、
ある一角で貴族が買い物をしているのに遭遇する。
仕立ての良い馬車から降りて来たのは・・・
あの時の男!?
もしかして!!
俺の心臓は早鐘をうつ!
俺はそのまま視線を動かさずに馬車の方を凝視する。
そして・・・
貴族の男が降りた後、馬車の中へと手を差し伸べて、
その差し伸べられた手に馬車の中から、すっと手が差し出されてくる。
その手は細く女性のモノであり、
俺はその手を見た瞬間に確信をした!!
やぱっり!!
俺の目のに飛び込んだのは着飾った妻がそこにいた!!
今まで俺が見たことがないほどに
キレイな妻がそこにいたのである!
俺はすぐに妻に駆け寄ったのだが、
そんな俺の行く手を阻む貴族の付き人たち!
「はなせ!!そこに妻が!妻がいるんだ!!」
俺を羽交い絞めしている男達を何とか振りほどこうとし、
叫びながらもがいていると、
何と妻が俺の方へと歩いてくるではないか!?
そして、何事か妻が付き人たちに告げると
私を拘束していた男達は手を放して、俺と妻を2人っきりにしてくれた。
「あなた・・・。」
どんなに着飾ってもその中にある優しい妻がそこにいた。
そう俺の知っている妻がそこにいたのである!
「おまえ・・・。」
ついに俺達は出会えたんだ!!
そして俺はすぐに決意する!
今妻と共に逃げなければ、もう二度と会えない!!
だから、私は、
「一緒に逃げよう!!」
その私の言葉に驚いた表情を浮かべる妻!
ああ・・・俺の言葉が嬉しんだな・・・
そして、身の危険のことを考えてくれているのかもしれないけど、
大丈夫だ!
俺のために手伝ってくれる友人も大勢いる!
きっと逃げるのを手伝ってくれるはずだ!
だから・・・
「あなた・・・。」
そんな私に対して、優しい目をしながら妻は、
「私は今・・・
本当に幸せなの。」
「・・・え?」
「私は二度と戻りません、だから・・・私のことは忘れて。」
そう言って、ニッコリと微笑んで、私の傍から離れていった。
妻を待っている男のところへと・・・
私は1人ただただそこに残されるのであった・・・
その日は、私のために夫が、
「久しぶりに公務もないから、せっかくだし街を見て回らないか?
それに今度パーティーがあるようだから、
新しいドレスも作りに行かないといけないしね。」
そう言ってくれての久しぶりの夫婦での散策だったのに、
気分を害してしまうことに出くわすなんて・・・。
ドレスの仕立て屋について、馬車から降りようとした私に
声をかけてくる者がいた。
「はなせ!!そこに妻が!妻がいるんだ!!」
私が馬車から降りると、そこには私達の警備にあたっている
警備兵に取り押さえられている男がいた。
妻って?・・・
その男を私が見たのだけど、思い当たる節がない。
誰か違う貴族と勘違いしているのでは?と思ったのだが、
何とその男は私の名前を呼ぶではないか!?
もしかして・・・
そこでやっと私は気づいたのだ!
元夫であることに!
あまりに変わり過ぎた姿に呆然としてしまう。
こんな姿に・・・
あまりに悲惨な姿に私は同情をしそうになってしまうのだが・・・
私は元夫の元へと歩み寄り、声をかける。
「あなた・・・。」
その声を聞いて、ものすごく喜んでいる元夫。
そして、私に、
「一緒に逃げよう!!」
そんな言葉をかけてくるのであった。
・・・はぁ?
何を言っているのこの男は!!
私は知っているんだからね!!
あんたが飲み屋の女に手を出したことも
武器屋の娘さん、その他もろもろ、こちらで掴んでいる情報だけで
あんたは8人ほどの女に手を出しているじゃない!!
私がいないことをいいことに!!
それで私と一緒に逃げようっていうの?
バッカじゃないの!!
一応、あなたを見捨てたことに罪の意識を感じていて
気にはかけていたのに、全然そんな罪の意識なんて要らなかったじゃない!!
し・か・も!!
私があなたのためを思って送ったペンダントを
他の女に渡したんでしょう?
アレは売ったらすぐにこちらに連絡が来るように取り扱える店に伝えていたのよ!!
そしたら、あなた・・・
私からの手紙が届いた次の日には売りに出したじゃない!!
しかも女が持ってきたって!?
・・・正直に言って、それであなたに対する罪の意識なんて
なくなってしまったわよ。
それが今になって、なんで私の元に戻って来るのかな?
何?私ってそんな簡単な女に見えるの?
バカにしないでよね!!
手紙があんなに簡潔できっと無理やり書かされたって?
それは・・・あなたにあまりに学がないから、
文字数が多いと頭が痛くなるっていうから、
意図して文字数を少なくしたのよ!
それに読める文字も決まっているから、
あなたが読める文字だけで文章を書いたら
アレが精いっぱいだったのよ!!
事実を私に言われて、驚き慌てふためく元夫を見ながら、
私は告げる、
「私は今・・・
本当に幸せなの。」
「・・・え?」
「私は二度と戻りません、だから・・・私のことは忘れて。」
私はあなたのことなんて今から一歩でも歩いたら忘れるから!!
あんたみたいな最低な男なんて!!
私は今は貴族婦人であるの、どんなにはらわたが煮えくり返っていても
絶対にそんなことを表に出すことができない・・・
よかったわね・・・
その精神がなければ、市中引き回しの刑にしてるわよ!!!
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




