44話目
だけど、それで領主のアドバンテージ・・・いや、悪運は終わらなかったのです!!
領主の剣は振り下ろしたので縦に、グンテ殿の剣は鞘から抜いたので横向きになっていたのと
怪しい靄と血のせいで・・・
するり!!
グンテ殿剣を滑って行くのである!!
それにいち早く気づいたグンテ殿は、左手を押さえていた鞘から離して、
その滑り落ちてきた剣を突きに変えて攻撃されてもいいように
体の前へと突き出したのである!!
ただ!!
これがグンテにとっての不幸であった!!
体の胴体部分を守るために出された左手に・・・
すーーー!!!
何と、剣が滑って当たるのである!!
ただ、見た目にはそのまま左腕に当たったにも関わらず
そのまま地面へと滑り落ちていくのである!!
「「なぁ!?」」
グンテ殿はもちろんのこと、領主も驚きの声を上げる!!
それもそうだろう!!
だって、剣の刀身が当たったというにも関わらず・・・
切れないって!?
何?
グンテ殿が来ている服が魔法がかけられた服なんですか!?
・・・いや・・・
ただ・・・
あまりに今回のナマクラの剣が、よりナマクラだったって事でしょうね・・・
切れなかった!!
その一言でしょう!!
残念です!!領主!!
お達者で!!
とりあえず、お葬式は村人で、一応この場合は王様にも連絡が必要なのかな?
っというか、決闘中に亡くなったのなら、王国が費用モチですかね?
それならケチケチせずに王国中の貴族に招待状を送ってあげて・・・
そんなことを考えていると、私の目に予想だにしない光景が飛び込んでくる!
一撃を加えたにも関わらず、切れてないことに目を見開いて驚く領主!
・・・これは想定内!
ただ、もう一人の方が・・・完全に想定外でした!!
グンテの方も驚きの表情を浮かべていたのだが、
すぐに現状を理解する!
そう!
彼はナマクラの剣であることを見抜いているのだから、
あまりの切れ味の悪さで、自分を切ることが出来なかったということに!!
これを理解したのなら、後は次の行動をとるだけである!!
ニヤリと顔をしたかと思うと、今ま防御に徹していた構えから、
攻撃に移る構えと動く!!
所謂中段の構えへと移行した・・・のだが!?
そこで私の想定外のことが起こるのであった!!
「つぅ!!」
しかめっ面をするグンテ殿!!
両手で剣を握っていたにもかかわらず、
左手を離してしまうのである!?
そう思ったら、今度は右手も剣から離してしまい、
剣を地面へと落としてしまうのである!!
観衆がザワザワとざわつき始める!!
右手で左手を抑えるような体制になったかと思ったら、
その場で崩れていき、膝立ちのような状態になり、
左手を持ち上げるような形になる!!
そして・・・
「ぐぁああああ!!!!」
あの筋肉隆々の凛々しい姿をしていたグンテが大声を上げて叫ぶのであった!!
その顔は苦痛に滲んだ顔をして!!
一体何が起きているのかが分からない観衆はザワザワと騒ぎながら、
事の行く末を見守るのだが!!
ここでも想定外なのだが・・・
なぜか王様が決闘場の観客席から立ち上がって、
中央部分にあるリングまで駆け寄って行くのである!!
まるで自分の大事な大事な恋人を思うかのように走っていく王様!!
完全に取り巻き共も衛兵たちもあっけに取られてしまっていて
置いてけぼりにばっているのだ!!
誰しもが、さきほどは叱咤していたとはいえ、
大事な家臣なのだからと思ったに違いない!!
そう・・・
まさにそんな光景であったのだが・・・
左腕を上げて苦しみ、叫ぶグンテ!!
そのグンテの傍にまで走ってきた王様の顔は悲しみと絶望感に・・・
なってないですね・・・
心配そうな表情とは裏腹に口元は笑っている!!
震えているのも・・・きっと笑いを我慢しているためだろう!!
本当に・・・心底嬉しそうに感じるのは・・・間違いないでしょうね・・・
そして、近づいたと思ったら、グンテ殿腕の服をはぎ取る!
そして、そこに露わになったのは、
どす黒くはれ上がった腕であった!!
ああ・・・
あれは・・・
虎狩りXの効果ですね!!
衛兵達もリングの中に上がっていくため私も遠慮なく中に入らせてもらい、
領主とグンテの傍へと近寄って行くのですが・・・
・・・
ああ!?
それは切ったというよりも引っ掻いたような傷があったのである!!
ガタガタの刃に引っ掻かれたんですね!?
状況を理解する私!
このナマクラの剣の刃の部分、ガタガタで切れないのだけど、
引っ掻けることはできる!
領主だって、引っ掻けて親指を切ったのだから!!
ホントは・・・もっとつらい思いをして血をだして欲しかったのですけどね・・・
それを引っ掻きしまって傷を負うなんて・・・
そんなことはもう後の祭りです!
それよりも今を・・・今を楽しみましょう!!
この苦痛に歪むグンテ殿を見るという楽しみを!!
激痛が徐々に腕の部分に広がって行くのがよくわかる!
徐々にどす黒い部分が広がっているからだ!!
みんながどうしたものかと見ている!
ソウルイーターの効果なのは間違いないので、
ここでもし触れてしまったら、今度は自分も同じ目にあうのでは!?と思っているのだろう。
皆が躊躇している中、王様は・・・・
嬉々としているのだ!!
・・・ああ・・・
同類ですね・・・
似た臭いを感じますから・・・
そんなことを思っているとどこからともなく、
ピュー――!!
空気を切り裂くような音が響くのであるが、
今の決闘場の混乱と観衆のざわつきで気づいている者は
私以外にはいなかったのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




