42話目
・・・失敗した・・・
俺はどのくらいこの舞を舞えばいいのか聞いていなかった・・・
どうしようと思って、サーターの方を見ると、
・・・今だに腹を抱えて笑っているのであった・・・
ただ、そんなサーターも俺が視線を向けていることに気づいたようで、
「ひぃーひぃーひぃー・・・。」
何とか笑いを堪えようとしている。
・・・お前・・・俺、お前の主だぞ?
サーターに殺意を覚えていると、やっと落ち着いたようでサーターが・・・
まだ目から涙を拭いている状態だけど・・・
「りょ、領主様!!も、もう、十分ですよ!
これ以上やられると・・・笑い死にしそうなので、
次のステップに進んでください!」
・・・どんな基準だ・・・
何でサーターが笑い死にしそうだから、次のステップに進むって手順なんだよ!!
俺はサーターを睨んで何かを言ってやりたいが、
ここで儀式を止めてしまうと、また最初からと言われるのは嫌なので、
グッと・・・本当にグッとこらえて次のステップに行く!
・・・というか、次のステップも嫌なんだけど・・・
俺は舞を止めて、自分の左手の親指に剣を当てる・・・
次のステップは・・・
俺の血をソウルイーターに吸わせるのだ!!
痛いって!!
絶対にコレやると俺痛いって!!
そう思うと思いっきり躊躇してしまう!!
だって、痛いんだよ!!絶対に!!
腕もプルプル振るえて来てしまう・・・
・・・
だ・・・
ダメだ!!俺には出来ない!!
何で自分で自分を傷つけるようなことをしなくちゃいけないんだよ!!
俺にそんな勇気なんてないんだからな!!
こんなことできるかぁ~!!!
そんな時に進行役が俺に声をかけてくる、
「ば、バリティッシュ男爵様?」
その言葉がけに反応して、
「なんだよ!今だいじな・・・。」
そう言いながら、振り返った時だった!
ガリ!!
・・・
激しい痛みとものすごい熱を帯びたような感触が親指に走る!!
すぐに自分の指に視線を向けると、
何と親指から血が出ているのである!!
うわぁあああ!!
何でどうしてこうなったんだよ!!
その間にも親指から出る血が剣へと流れ落ちていく!
切ったのか!?
今、一瞬目を離した瞬間に切ったのか!?
切ったって音じゃないし、痛みも何か引っかかった感触だったぞ!!
それなのに血が出てるのかよ!!
自分の血を見て思わず貧血で倒れそうになったところを
「今です!!さぁ!鞘にしまって!!叫ぶのです!!」
サーターが俺に声をかけてくるのであった!!
だけど・・・
だけどサーター・・・
「お、俺・・・死んじゃうんじゃないのか!?死ぬんじゃないのか!?
け、ケガしたんだぞ!?これで死ぬんじゃないのか!?」
そんな俺の叫びに対して、
「そんなかすり傷で死んだら、この王国には誰一人生きてませんから!!
そんなの唾をつけとけば治る程度です!!」
「ばかな!?こんなに血が出てるのだぞ!!」
「もう止まってるでしょう!!」
そう言われるのだが・・・傷を見る勇気なんて俺にはない!!
だって、傷口をみるなんて怖いじゃないか!!
「さ、サーター見てくれよ~!!」
「見れるわけないでしょう!!いいですから、さっさと剣を鞘に納めてください!
早くしないと発動しませんよ!!
今までの行為がすべて無駄になりますよ!!
いいんですか?みんなから滑稽にまた見られても?
また痛い思いをしても?」
「だ、だけどぉ~・・・。」
何なんですかこの領主は!!
何でこんなに根性なしなんでしょうか!!!
聞いてるこっちがムカムカしてくるんですけど!!
とっとと剣を鞘に入れてくれないと、せっかく私が仕込んだ・・・
猛毒が発動しなくなるではないですか!!
鞘の中に仕込んである粉が血の水分に溶け込んで
剣の周りをうまく猛毒が包み込んでくれるようにしたのに!!
ものすごく考えたんですからね!!
それを今にも無駄な努力にしようとするとは・・・
何とかしなくては・・・
そう思って何度も説得しているのに
泣き叫ぶだけで全然こちらのいうことを聞いてくれない領主。
そんな時だった!!
私の視界にある女性が目に入るのである!!
そうだ!これだ!!
「領主様!!」
「うわぁ~ん!さぁ~たぁ~!!」
「シエロ侯爵様のご令嬢が試合を観ていますよ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、領主が泣き叫ぶの止める!
そしてきょろきょろと周りを見回した出したのだ!!
よし!効果覿面!!
魔人を討伐した時に、見かけてから毎日のように
「シエロ侯爵のご令嬢は~。」
ずっとそう呟いていた領主!!
完全に一目ぼれしてるし!!
だけどね・・・
人には釣り合いってものがあるのをご存知ですか?
どう贔屓目に見ても・・・
無理!!!
絶対に無理!!
天地がひっくり返っても無理!!
・・・まあ、今はいいや!
とりあえず、今はその恋心を利用して・・・
「ご令嬢が見てます!さぁ!ソウルイーターを発動させてください!!」
私の声とシエロ侯爵のご令嬢の姿を見つけたことで
ついに・・・やっと!剣を鞘にしまってくれるのであった・・・
あぁ~長かった・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




