3話目
今日の視察に俺は、甲冑を着て望む!
どうやらサーターが言うには、
この甲冑は我が家に伝わる由緒正しき甲冑であるらしい。
「これを着ることが出来るのは、現領主のみでございます。」
「なるほど!まさに俺に相応しい甲冑だな!!」
俺がこの村の領主であることを示すのに
この鎧を着て視察すれば、まさにピッタリである!
早速俺は甲冑を着こんで、村の視察に俺は臨んだのである!
俺の姿を見た村人は、出会った瞬間には驚いた表情を浮かべるのだが、
すぐに表情が戻って、しっかりと俺に向かって頭を下げてくれる!
これだよ・・・
これを俺は望んでいたんだ!!
俺はこの村の領主であることを認識されたんだな!!
張りぼてのような甲冑に包まれた奇怪なモノが
私の目の前に現れてたので、私はただただ呆然とする・・・
「ハリスさん、領主ですよ。」
そんな呆然としていた私にサーターさんが声をかけてくれて、ハッと我に返った!!
突如現れた甲冑に私は呆然となってしまっていたのだ!
そっか・・・これが領主か・・・
虎の威を借りてくると聞いていたが、
まったく自分に似合っていない甲冑なんか着て・・・
全く体に合ってないのだろう。
歩くたびにつなぎ目があらぬ動きをして、今にも崩れそうになっていた。
・・・甲冑を着ているのも・・・これじゃあ、まったく役に立たないだろう・・・
そんなことも分かってないのか・・・領主は・・・
ここで村の若者が襲ったのなら、確実に殺せるだろう・・・
だが、こんなバカのために村人が罪に問われる方が可哀想過ぎる・・・
今日はこのままサーターさんと私が、このバカに付き添っていけばいいだろう・・・
本当は畑の害虫取りをしたかったのだがな・・・
このバカと一緒にいても、野菜の1つも取れないのだから、
どっちが価値が上かなんて丸わかりだ・・・
サーターさんもため息をつきながら、一緒に視察をしているので、
1人にすべてを任せるのは申し訳ない・・・
すこしでも和らいでもらえるように私も一緒に視察に加わったのであった。
名主のハリスさんも視察に加わってくれたおかげで、
この領主(死んでしまえ)もご満悦な様子ですね。
ただ、さっき労わるようにハリスさんから、
「サーターさん・・・ご苦労様です。」
そう告げられたのだが・・・
そんなに顔に苦労が出ていたのだろうか?
・・・まあ、隠す気はないですけど・・・
それに気づかない領主(KY)はいかがなものかと思いますが・・・
・・・はぁ~・・・
この茶番に本当に何の意味があるんでしょうかね?
着ている甲冑はぶかぶかで、簡単にズレてしまって、
生身の部分が丸見えになってしまっている。
こうなると甲冑を着せた意味がない・・・
これなら、こんぼうで思いっきり叩くと簡単に取れるだろうな・・・
っていうか、こんぼうで殴る前に、隙間から剣で指すことも可能ですね・・・
・・・はぁ~・・・
まあ、一撃だけでも耐え凌いでくれたら儲けもんです。
それに・・・由緒正しき甲冑・・・ではないですし。
そもそも自分の家のことなら知っておいてほしいものです!!
そんな甲冑はブリティッシュ家にない!
それは私が急遽作った有り合わせの甲冑なんですけど!!
・・・もうちょっと気合を入れて作るべきでしたかね?
どうせ領主が着るからと体のサイズも図らず、
目分量で作ってしまったのが心配でした・・・
そんなにまじまじと見てないし、興味もないからイマイチサイズわからなかったですからね!!
・・・まあ、このバカにはピッタリでしょう。
一応、大好きな金ぴかに仕立てたので!
しかし、どうして人間の権力者は、
自分の権威を示したいと思うとこんな金ぴかにしたがるものなんですかね?
戦場で的にしてください!って言ってるいるようなものなのに・・・
まあ、とりあえず本人が満足しているのならいいでしょう!
・・・先ほどから気分がいい・・・
俺が歩くたびに村人みんなが、農作業の手を止めて、
こちらに向かって頭を下げる!!
これだ・・・
これこそ俺が望んでいた光景だ!!
さあ、愚民ども!首を垂れよ!!!
そんな俺が気分よく歩いている時であった。
それは突然俺を襲ってきたのである!!
いきなり頭に強い衝撃を与えられたと思ったら、
急に意識が遠のいて行くのである・・・
執事のサーターさんと私の目の前でことが起きた!
「領主様!?」
私は慌てて、領主の傍へと駆け寄る。
私の目の前で、どこからともなく矢が飛んできて、
こともあろうに領主の頭に当たったのである!!
そして・・・
私は・・・
この矢を射った張本人が誰かを一瞬で悟ってしまう・・・
矢が飛んできた方角を見ても、姿を隠すことができるのは森しかなく、
そんな遠い森の位置から領主の頭を正確に射抜ける技量の持ち主など・・・
この村には一人しかいないからだ!!
“息子”
あいつ以外にはいないと確信する・・・
・・・あ!?
すぐにあることに気づいて私は顔を青くするのであった。
この場には3人いる。
そして・・・ハリーの技量を知っているの者が私以外にもう一人この場にいたのだ!!
私は慌てて、すぐ傍にいたサーターさんを見ると、
「チィ!!」
盛大な舌打ちをして、領主の元へと向かう姿を見た。
・・・え?今舌打ちした!?
「・・・もっと薄く作るんだった!!」
・・・え?
それは・・・私が聞いていい言葉でしょうか?
サーターさんからの信じられない言葉が漏れるのであった!!
私が思わずサーターさんをジッと見てしまっていると、
どうやら私の視線に気づいたようで、目があう。
そして、どうして私がサーターさんに視線を向けているのかに気づいたようで、
「問題ないですよ。許容範囲です。」
そう言いながら領主の脈を確認して、また
「チィ!!」
・・・舌打ちをするのであった・・・
何が問題ないのだろうか?
そして、許容範囲というのは・・・うちの息子がしたことだろうか?
え?だって・・・息子は領主の命を狙っていたんですけど??
・・・とりあえず・・・罪には問われないということなんだろうか?
たかだか、一時間で終わる視察だと思っていたのに・・・
それがこんな風になるなんて・・・
私は今、悪魔に心臓を掴まれているように不安に襲われているのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。