36話目
「そこまで言うのなら・・・その身をもって経験するが良い。」
王様が発したその一言に広間にまたざわめきだす。
それもそうであろう!
王様の発した言葉の意味は、
“ドラゴンスレイヤーのグンテ”
そして・・・
“デーモンスレイヤーのルイス・フォン・バリティッシュ (俺)”
その二人の決闘を意味しているのだから!!
そして、その決闘は命がけとなる!!
だって、俺の愛剣・・・ソウルイーターは一撃当たれば、絶命してしまう剣だ!
その剣に挑めというのは、まさに死刑勧告!?
・・・いいのか?そんな状況になって?
仮にもこの王国の近衛騎士団団長だぞ?
それほどの男が、戦でもなく、魔物討伐でもなく、
ただの決闘で命を亡くすって・・・
・・・そっか!!
これは王様が脅しているのか!!
なるほど!
これでグンテが引いて、謝罪へとする流れだな!!
納得だ!それなら俺がとるべき行動は・・・一つだ!!
「私はかまいません。我が愛剣を侮辱されて、おめおめと引き下がっては、
ルイス・フォン・バリティッシュの名が汚されてしまいます。
私は当然引き受ける所存でございます!!」
近衛騎士団団長グンテを睨みながら、そう宣言したのである!!
その俺の言葉に歓声が沸き起こる!!
王様もニヤリと笑い、俺に対してうなづいてくれる。
どうやら俺は正解を選べたようだ・・・
王様は俺に向けていた視線をグンテへと移す。
それに従うように俺もまたグンテへと目を向けるのだ!
さあ・・・謝罪をしろ・・・
引き下がる道は出来たのだからな・・・
そんな俺の思いを知ってか知らずか、グンテは、
「それが王命であるのなら・・・
当然従わせていただきます。」
は!?え!?受けちゃうの!?
ええぇぇえええ!?
ここは、謝罪して引き下がる場面じゃないの?
ちょっと想定外過ぎるんですけど!?
え?だって・・・死んじゃうよ?
ソウルイーターって触れたら絶命するんだよ?
それでもやっちゃうんですかね?
俺は恐る恐るグンテの方を見るのだが、グンテの顔は凛々しいままで
自分の発言を訂正するような気配はない。
当然、謝罪をするような雰囲気もでもない・・・
むしろその服の上からでもわかる筋肉隆々の体が先ほどから
更に隆起しているように見えるんですけど・・・
・・・これってマズくないですかね?
あのドラゴンスレイヤーのグンテと・・・決闘をせねばならないと?
・・・
か、勝てるわけないじゃないか!?
ど、どうしよう!?
そうだ!!こういう時こそ、我が執事サーターに知恵を借りて・・・
そう思って、サーターの方を観衆の中から探し始める。
執事という立場上、俺の傍にいるはずだ!!
謁見の場ではさすがに俺の横にはおれなくても
同じ会場には・・・
ただ、思った以上に人が多くて、どこにいるのかがわからない・・・
サーター!サーター!サーター!!!
サーターが見つけられなくて、どんどん不安になっていく!
いつもは人を舐め腐った態度をとる執事だが、
あいつの知恵ならどんな状況でも好転させることを身をもって知っている!!
だから、こういう時こそあいつしか・・・
サーターしかいないんだ!!
俺は必死にサーターを探す・・・
・・・いた!!
やっと見つけた!!助かった・・・
観衆の中に埋もれているが確かにいた!!
あのシルエットを俺が見逃すわけがない!!
サーターの姿を見ただけで心に安堵が走る。
・・・
だけど・・・
なぜかサーターは口元に手を当てて、更には、体を捻って後ろを向いている・・・
・・・肩まで揺れてるのだが・・・
もしかして・・・
笑ってる!?
・・・いやいや、自分の主に身の危険が及びそうな時に
笑うなんてことはないだろう!?
・・・は!!
そうか!!
アレは悲しんでるんだな!!
なるほど・・・
いや、俺の身を案じて悲しんでくれるのは嬉しいのだが、
それよりもこの現状を打破できる案を一つ俺に授けて欲しいのだが・・・
俺の熱い視線はずっとサーターを捉えるのだが・・・
残念ながら俺の思いはサーターには届かず、
「それでは、今から決闘を。すぐに会場の準備に取り掛かれ!!」
何と王様がそんなことを宣言するのである!!
すると・・・早い早い!!みんなの行動が!!
いや、さっきまでのゆっくりとした空気が嘘のように
そして観衆たちはものすごく楽しみなようにしている。
・・・その中でも・・・
王様とその取り巻きの大臣たち、更にはこの広間を守っている
近衛騎士団のメンバー達の顔にものすっごく悪い笑みが浮かんでいるんですけど・・・
あれ?
もしかして・・・
俺ってすでに嫌われている?
・・・そのためにグンテとの決闘を!?
ものすごい不安が一気に体の中を駆け巡るのだが、そんな俺の胸中を無視するように
鍛冶師のロドリゴから剣を返されるとすぐに近衛兵たちに囲まれて、
どこかへと連れ去られていく!!
その道中で俺はサーターの姿を見て思わず叫ぶ!
「さ、サーター!!」
その声は確実に聞こえていたはずなのに・・・
今だにサーターは肩を震わせたままであった・・・
残念ながら・・・
俺の思いは届かずにそのままどこかの控室へと向かうのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




