28話目
「ふん!運のいいガキだな・・・。」
その男が向けてくる目は完全に強者が、弱者を見る目であった。
完全に下に見られている・・・
だけど、それが現実だ・・・
今の俺は震えている。
どう頑張っても震えを抑えることができないのだ。
「あ、あばば、あ、あ・・・。」
声にならない声が漏れてしまう。
こちらを見てくる目だけで震えが一段と大きくなるのであった。
そんな中、王様だが、
「た、助けてくれ。」
そう助けをその男に乞うのであった。
震えて、腰を抜かして、威厳なんてどこにもない姿で・・・。
「・・・靴を舐めろ。」
「・・・え?」
「靴を舐めたら助けてやってもいいぞ。」
ニヤリと笑うその男だが、その笑みは黒い笑みだ!!
絶対に助ける気なんかない!!
その言葉に従ってはダメだ!!絶対に!!!
それいつも・・・サーターがする目だから俺には分かる!!!
言葉にしようとするのに俺は言葉が出ない!!
王様よ!逃げろ!そんな男の言葉何って信じるな!!!
王様はその男に言われるがままに這いつくばりながらその男へと近づいてく。
まるでなめくじのように地面を這いつくばりながら、ずるずると動いて行くのである!
だ、誰か!王様を止めてくれ!!
そう叫びたいのに・・・
声が出ないなんって!!
体が動かないなんて!!!
動け!動けよ!!ここで動かないでどうするんだ!!
その時だった!
俺が掴んでいた服が動き出す!
それは、俺と一緒に転んだ女性が何と動き出したのである!!
ただ、その動きは緩慢である。
だけど、確かに動いて、俺の短剣を拾う。
そして、
「あなたは・・・あのま、魔人なのですか?」
短剣を鞘から抜き出して、震えながらも構える女性。
ま、魔人?なんだそれは・・・
「・・・ほおぅ。少しは分かってるんだな・・・その家紋は・・・シエロ家か・・・・。
確かに侯爵家の人間なら知っていてもおかしくないな。」
視線は先ほどまで王様に向けられていたが、
すでにその視線は女性へと向けられていた。
向けられている視線は確実に殺気が込められていて、
喋っている言葉は感心しているようだが、まったくそんな感じがしない。
「や、やはり・・・」
魔人であることを確信するとその女性はへなへなへなと座り込んでしまうのであった。
その瞳には明らかな恐怖が宿っていた。
魔人てのはそんなに絶望するようなものなのか?
イマイチわからないのだが・・・
「ま、魔人てのはなんだ?」
思い切ってその女性に聞くと、
「ふはははは!!どうやらしっかりのこの国は箝口令が敷かれているようだな!
貴族どもしか魔人の存在は知らないとみえる!教えてやれて女!」
・・・俺も貴族なのだが・・・
そう言いたいけど、そんな勇気がまったくでてこない・・・
その魔人と呼ばれる者が俺の質問に反応して、女性に説明するように促すのだが、
この女性に聞こえてはいないようで、ただただ恐怖に震えているのであった。
すると・・・
「鋭き風の牙と化してすべてを貫け!!
風の牙!!」
その声と共に、自分の右手の指を親指に引っ掛けたと思ったら、
指を全部はじき出す。すると・・・
ドドドドドーン!!!
俺達の周りに5つの穴が、天井、壁、床に開くのであった!!
な、なんだよこれ!?
こんなの受けたら、死んでしまうじゃないか!?
その衝撃でやっと意識が飛んでいた状態から戻って来た女性。
それに気づいたようで、
「女、しっかりと魔人について、そこの男に教えてやれ。
さもなくば、次は当てるぞ。」
ニヤリとする笑みを浮かべながらどんな説明をするのかを楽しそうに待つ魔人。
その笑みは恐怖でしかない・・・
その笑みを見て、震えながら俺に説明をし始める。
「魔人とは、自分のキャパを越えた魔力を手にいれて、
暴走させてしまった者をい・・・。」
そう言いかけたところで、指を弾く音が聞こえたと同時に、
女性が壁へと吹っ飛んで行くのであった!!
魔人の方を見ると指を一本弾いており、どうやら魔法を使ったようだ・・・
「女、ちがうだろう?
魔力を暴走?違う!全く違う!!!
魔人とは魔力を極めし者が、さらなる高みへと上った証だ!!
何が暴走だぁ~?
全然見識が違うんだよ!!」
その声は怒気を含んでおり、言葉を発するだけで、謁見の間の空気が震えて
体が揺らされているような感じになる。
「それを貴様らは・・・排除しようとしやがって・・・。
俺に一個師団の兵を送ってきやがって!!
少しこの力を試すために街1つ潰したくらいでなんだというのだ!!
それにあの程度の連中が俺の相手になるとでも思ったのか!!
軽くひねれば終わったわ!!!」
・・・街1つ潰した?
・・・ミニチュアとか・・・ではないですよね?
騎士団を一個師団を全滅させたんですか・・・
さすがっすね~・・・
俺・・・詰んだ・・・ここで死ぬは・・・
俺は自分の死を自覚する。
すでに俺の傍いたご令嬢は意識を失っている。
こんな美女と2人で一緒に死ねる・・・か・・・
すると今まで震えていたのが、嘘のように止まると、
次の瞬間意識がふぅ~とどこか遠くへと飛んで行く感じがするのであった。
その感じの中、俺の目に飛び込んできたのは、
壁際に立っているサーターであり、
こちらを見て、大笑いをしている姿であった・・・
あ、あいつ、笑うんだ・・・
そんなことを思いながら、俺は自分の意識が遠くにいくのを感じていた・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




