226話目
「よし!今から俺は旅にでる!」
「何を現実逃避しようとしているんですか?」
「違う!これは現実逃避ではない!!
ただ、ちょっとどこかへ行きたくなっただけなんだ!」
「それを・・・世間では現実逃避というのですが・・・。」
「違うぞ!!断じて違う!!!
これは・・・そう!心の洗濯だ!
日頃の業務で疲れた体と心を休ませる必要があるだろう?
たまたまその日が今日だってことだ!」
「・・・仕事・・・されてましたかね?」
俺に対しての言葉で小首を傾むけるサーター!
「いやいや、してたから!!
ほら思いでしてみろ!!」
俺はサーターにいつも俺がしている仕事を思いだすように
促すのだが・・・
「そうですね・・・。
ああ!ありました!
そう言えば先日メイドが掃除をしているのを見て、
窓辺に近寄ってスッと指を這わせて、
無言で指に付いた埃を見ておられましたね!
・・・ほんと、小姑か!!っとメイドたちの中で言われておりましたよ。」
・・・ぐはぁ!?
ルイス・フォン・バリティッシュは100のダメージを受けた!!
「ああ、それにほかにもありましたね。
街の子供たちが森に入って、家族のために
キノコを採ってきたのを見て、
税金を払え!と因縁をつけて、
採取してきたキノコのほとんどを強奪したらしいですね。
街の中でルイス様のことを
『あのクズ領主、今に見ておれ・・・。』
っと言っていたのを聞いております。」
・・・ぐはぁ!?
ルイス・フォン・バリティッシュは200のダメージを受けた!!
「く・・そ、そんなことよりももっといいことがあるだろう?
そんな些末なことではなくて・・。」
震えながらサーターに俺の仕事ぶりを思い出すように
伝えるのだが、サーターはすぐに回答することなく、
顎に指をあてて腕を組み考える・・・
「ほかにですか?ほかに・・・ほかに・・・。」
真剣に悩みだすサーターであったが、
あれ?そんなに悩まないと出ないかな?
俺は自分の思っていることを口にするのだが、
「いや、俺も仕事として塀に上り森の中を確認したりしたじゃないか?
魔物がいないかとさ。」
「・・・あれ?そうでしたかね?
私の知っているのは、森の中なんかは全く見ずに
逆サイドの街の中を見ていて、今度覗きをするポイントを
探してませんでしたかね?」
「はぁ!?」
思い当たる節があるためか、思いっきり裏返った声が出てしまう!
「そ、そんなことするわけないだろう!?
俺は領民には無事に過ごしてもらいたいがために
森の中にいるであろう魔物たちに目を光らせていたんじゃないか!!」
「そうですか・・・。
そうとは知らずに失礼しました。
・・・あ、それなら良かったです。」
「何がだ?」
「いえ、ルイス様が覗きのポイントにしていた
宿屋の部屋が見える位置ですが、
誰にも侵入されないようにするために
封鎖させていただきましたので。」
「なんてことをしてくれるんだ!!!」
「・・・どういうことでしょうか?」
「あ、いや、そんな、ど、どうし・・・
あ、いや、よくやってくれたぞ・・・覗き・・・など・・・
恥ずべき・・・行為だから・・・な。」
「はい。喜んでいただけたのなら良かったです。」
「喜んでなんかはいないけどね!!!」
「喜んではいただけなかったのですか?」
小首を傾けるサーターであったが、
全然可愛くないし!!
むしろ一層腹ただしいぞ!!!
良くも俺の生きる希望の場所を・・・
なんてことをしてくれやがる!!!
だが・・そんなことをおくびにも出すわけにはいかず、
「よ、よく・・・やってくれ・・・たな。」
震えながら、顔を引きつらせてサーターに
ねぎらいの言葉を掛けてやると、
「そんなありがとうございます。
覗きのスポットを潰せてよかったと思います!」
そんな俺とは全く違うハツラツとした表情でいい返事をするサーターであった。
「・・・嬉しそうだな。」
「それはそうでございましょう。
矮小の私の力で身近な犯罪を防ぐことに成功したのですよ?
それを喜ばずにいられるわけがないかと思います。」
「そうかそうか・・・。
うん?今の流れだと俺がねぎらいの言葉を
掛けたことに感動したんじゃないのか?」
「そんな二束三文にもならない言葉でテンションなどあがりません。」
・・・はっきりと断言しやがったぞ・・・
いやまあ、現金な奴だとは思うから
ねぎらいの言葉などで浮かれるとは・・・思っていないけど・・・・
いや、自分の主からの言葉なのだから
ちょっとは喜んでくれてもいいんじゃないかな?
「・・・あれ?今・・・身近な犯罪って言わなかった?」
「・・・あ!?これは失礼しました。
少し言葉がおかしいですね。
身近な犯罪者を出すことを防げて良かったですでしたね。」
「・・・そんな奴がいるのか?」
「はい、目の前に。」
もう隠さずもせずに直球で来るサーター。
必死で俺はしないというのだが、全くこいつの耳には届いてないのだが・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




