220話目
その男が加わってから、馬車は動き出そうとしたのだが、
「いたぞぉ!!!賊どもだぁーーー!!!」
「ピー!ピー!ピーーー!!」
どうやら追手の衛兵たちに見つかってしまったのようで、
笛を鳴らされてしまっている。
ま、まずいぞ!!!
俺は地べたに這いずりながらも
慌てていたのだが、あの二人は冷静だった・・・。
「グンテ殿、追手が迫っています。」
「ああ、見つかったか。
急いで馬車を走らせて逃げるとするか。」
「追手は?」
「もう少し行った先で手勢を隠してあるから
そこまで逃げきれれば大丈夫だ。」
「わかりました。」
マリが俺の回答に満足したようで御者台に上るとすぐに馬に鞭をいれて
馬車を動かし始めた。
俺もマリと同じように御者台へと上り、マリの横に座る。
オルアシの方は、馬車の中へと移動して、
後ろからって来る衛兵たちに向けて矢を放つのだ。
「・・・オルアシは意外と弓の才能もあるんだな。」
俺はオルアシが射る矢を見て、思わず口笛を吹く
一矢を放てば、見事に衛兵に当たって、倒れていく。
その正確無比な腕前に恐れ入った。
俺の知っているオルアシは暗殺技を得意としていることしか知らなかったため
とても新鮮に思えてくるのだ。
これで確実に逃げ切れると思っていたのだが、
気がつけばオルアシが傍にまで来ていて、
「・・・矢がない。」
「うぉ!?って、矢がないのか?
・・・この馬車に積んでなかったのか?」
「・・・この馬車は要救助者が用意したもの。
だから、矢の予備なんてない。」
「なるほどな・・・。」
矢がなければせっかくのあの腕前があっても
持ち腐れである。
っていうか、そうなるとまずいんじゃないか・・・
そう思ったら、案の情まずかったようで、
「・・・狩る!」
そういうと馬車の荷台へとスッと戻って行ったオルアシ。
「ぐぁ!!?」
すぐに悲鳴が聞こえてきたのだ!
「な!?」
俺はすぐに馬車の荷台の中へと目を向けると、
そこには馬車に乗りんで来た衛兵がオルアシの手によって
葬られているのを確認した。
だが・・
「もっとスピードが出せないのか!?」
俺はマリへと叫ぶ。
どうやら、衛兵たちの一部は俺たちに追いついてきており
馬車へと飛び乗ってきていたのであった!
「これ以上は・・・無理です。」
「くぅ!!!」
俺は一瞬嘆いたが、そこで嘆いても仕方がない。
「俺も・・・。」
場所の中へ入ろうとしたところで、
「ちぃ!!」
許してくれるわけもなく、
すでに衛兵の一部が御者台の横にまで到達しているのであった!
俺に向かって剣を振るってくる衛兵に返す剣で
仕留めるのだが、それでも敵の数が多すぎる!
倒した端からまた襲ってくる衛兵と剣を重ねることになるのだ!
俺が座っている逆方向にも衛兵が回り込んでおり
そちらからも乗り込もうとする!
俺は両方を気にしながら、
近づいてきた衛兵を切り捨てるのだが・・・
「このままだとまずいぞ!」
「そうですね・・・。ジリ貧です。」
「だな!何かいい手はないか?」
「あるにはありますが・・・。」
「なら、その手でいけ!時間が必要なら稼いでやる!!」
マリに妙案があるようなので
マリに実行を促すのだが、
「・・・よろしいので?」
「かまわない!この現状はまずいぞ!
このままでは遅かれ早かれ取りつかれてしまう!
そうなると何か手があっても使える状況じゃないかもしれない!」
「・・・わかりました。」
マリは俺の言葉に納得したようだったのが・・・
俺はもっと冷静に判断するべきだったんだ・・・
おもむろに立ち上がったマリは、
いきなり・・・
「ふがぁ!?」
俺を背後から蹴りやがったのである!?
「な、なにぉ~!?」
叫ぶ俺をそれはそれは嬉しそうな笑みを浮かべてみるマリが
俺の目に映るのであった・・・




