202話目
・・・ひどい出会い方だな・・・
俺も人さらいじゃねえか・・・
思い出しただけで苦笑してしまう。
「・・・・ふぅ~。」
俺は深い息を吐きながら、
俺がジョセフィーヌ王女様に狙われているのなら別に構わねえ。
俺はが好きなのは、貧しい時から笑いを絶えないあの妻なのだから。
今の妻は・・・自分を捨てて一生懸命やっている妻。
「・・・鍛冶屋を辞めるか・・・・。」
十分な金もある。
昔の妻とバカを言いながら過ごす日々のほうが
ずっと大事だな・・・
どうしてこの決断を今まで出来なかったのだろうかな・・・
うちの工房にはすでに俺並みの弟子もいる。
そいつらに跡を継がせればいいだけだ。
一度決意が固まると気分がずいぶん楽になった。
ご注文の品を作ってやるとするか。
最後の品としては全くやりがいがない。
剣としては粗悪品しかできないのはわかっているのだから。
だが、これにはこれの意図があることはわかる。
まずは、王様よりも良いものを帯びることを
あの王様が許すはずもない。
だから、あんなジョセフィーヌ王女様の提案を
受け入れたのは間違いないだろうな。
前の近衛騎士団長であるグンテ様は、
そういう外見なんかはまったく気にもせずに
実用性の高い大剣を装備していた。
それだけで並の戦士ではないことを示すには
十分であったのだが、
それがまた王様には気に入らなかったのは知っている・・・
今のバリティッシュ男爵様?だったかな、
あの貴族が帯びているソウルイーターとか言う剣も
当然自分のモノにしたいと思っているだろうな・・・
自分よりも下のモノが持っていい剣とは思ってないだろう・・・
いずれ・・・あのバリティッシュ男爵様も静粛されるのであろう・・・
ただ・・・あの剣は俺から見たらどう見ても
なまくらでしかなかったのだが・・・・
どうしてドラゴンや魔人なんか討伐できたのだろうか・・・
力が宿っているような気配も微塵もなかったというのに・・・
そもそもバリティッシュ男爵様にその力が?
・・・それならありえるが、そんな力を耐えれるような剣でもなかったが・・・
だが、現実は・・・
俺の目も盲目になったってことかもな・・・
そう思うと俺が鍛冶屋を辞める決意もいい決意だと思えてくる。
「そりゃ~そうだな、その力を見抜けない鍛冶屋なんて
素人もいいところだ。」
ククク、まあいいわ。
俺はあのバカのカリグラのために剣を作ることにした。
最後の最後に駄作を作る・・・
それも俺らしい最後だよ。
そう思いながら、剣を作るのであった・・・
そして、突然決まった期限の日を迎える。
「し、師匠・・・。」
心配そうな目で俺を見てくる弟子たちに
「何をそんなに心配してるんだよ!」
「だ、だって・・・そんな剣を献上するなんて・・・。」
「まあ、そうだな・・・。
だが、これは間違いなく王様のご命令で作った剣だぜ?
これ以上の剣を作れば・・・俺の命がないからな。」
笑いながらそう答えるのだが、
それがまた一層弟子たちの心配を増やしてしまう。
弟子たちも品が悪い鉱石を見て心配していた。
いい弟子を俺は持ったぜ・・・
俺が戻ってきたらこいつらにはしっかりとボーナスを払ってやるか。
そう決意をして俺は工房を出て城へと向かう。
今までいつも気が重かった足取りが
今日だけは軽い。
「ふははは!俺は本当にバカだったな!!」
こんなことなら本当にもっと前に辞めることを
決めていればよかったのだ。
俺は軽い足取りで城へと向かい、
いつものように客間に通されるのだが、
いつもと違うのは、ここで通された客間にすでに先客がいたことである!
「じょ、ジョセフィーヌ王女様・・・。」
俺もさらには案内してくれた妻も呆然とする。
「どうしました?どうぞ中へお入りください。」
そういって俺にソファーに座るように勧めるジョセフィーヌ王女様に
従いながら、どうしてジョセフィーヌ王女様がここにいるのかを必死に考える。
そんな俺の考えを知ってか知らずか、
「それで剣は無事にできたのですか?」
「・・・はい、こちらに。」
そういっておずおずと剣をジョセフィーヌ王女様に渡すと、
剣を抜いて刃を見て、
「あの粗悪品をここまで鍛えるとは・・・やはり王国一の名は
本当ですね。」
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ない。




