198話目
「10・・・万・・・ゴールドですか?」
「ええ、そうよ。
あなたはふさわしいと思います?
あの男は・・・王の命が危ない時に逃げ出した男とですよ?
そんな男に10億ゴールドなんて・・・。」
ジョセフィーヌ王女様の言葉に俺も思い出していた
あれは・・・
王都を襲来したドラゴンに対して、
守るべき王を見捨てて逃げた近衛騎士団、そして近衛騎士団長のカリグラ・・・
「なので、10万ゴールド作りなさい。
剣としての価値はなくてもいいの、
ただ見た目の細工をそこそこ施せばいいのですよ。」
そういってニッコリと笑うジョセフィーヌ王女様の横で、
うんうんとうなづく王様。
・・・なんという王族なのだろうか・・・
「娘たっての願いなのだ。一つ頼むぞ。」
そういって王の間から立ち去っていく王様を
俺はただただ呆然と見送ったのであった・・・
呆然となりながら、王の間から出た俺の前には、
何やら浮かれたような足取りで歩くジョセフィーヌ王女様がいた。
足早に歩きながら、
「ふふふ、これで約10億ゴールド浮いたわ♪
これであの方に相応しい新しい三角木馬・・・
いいえ、最近は何やら巷で鼻フックなるものが売られているとか・・・
まあ、あの方にほとんど貢ぐのですから、
一部私の趣味のために鼻フックの一つや二つ・・・100個くらい買っても
何の問題もございませんよね。」
そう言いながら高笑いを浮かべて歩くジョセフィーヌ王女様を
俺は呆然と見送るのであった。
・・・だれもあの独り言?いや、すでに周りにいる人みんなに聞こえるのだから
一人事なんかではないよな・・・
っていうか、貢って!?
え!?
それは予算10億のうち10万を引いた残りの金額をってことですよね!?
・・・あれか・・・俺の聞き間違いか・・・
億ではなくて、万っという単位だったのかな?
それなら納得だ。
うんうん、それならまだカワイイ金額だ。
大幅な予算削減に成功したのだから10万ゴールドぐらいなら
いいだろうな・・・
うん、そう思うことにしよう!
・・・しかし10億ゴールドを貢がれる男か・・・
そんな男見てみたいものだ・・・
それも“あの”ジョセフィーヌ王女様にだ・・・
男狂いの異名を持つジョセフィーヌ王女様・・・
絶倫と言われた男たちが次々と廃人になると言われるジョセフィーヌ王女様・・・
もちろん二つの意味で!
お金と体力の二つで!!
そんな王女にそこまでさせるとは・・・
ご愁傷様です・・・
しかし、困ったな・・・
俺の足取りは重い。
それもそうだろう。
10万ゴールドと言えば、はっきりと言って普通に冒険者が
持つなまくら剣であれば十分な金額である。
そう!その程度の金額でしかない!
材料代だけでその程度なのに・・・
本当にハリボテのような粗悪な材質で作る剣程度になるぞ、
そんなことを思いながら工房へと戻ると、
「し、師匠!!!」
いきなり弟子たちが俺に走り寄ってきたのである!!
「どうした?」
驚いて聞いた俺に弟子がおびえながら、
「さ、先ほど・・・じょ、ジョセフィーヌ王女様の使いという者が来て・・・。」
その不穏の言葉を聞いて、
「何があったんだ!?」
思わず声を張り上げてしまう!
いい予感は全くしない!!
「あ、あの・・・あちらに置いて行かれました・・・。」
そう言いながらおずおずとある方向を指さしたので
俺はそちらに目を向けながら、そこへと近寄る。
そこは俺専用の工房の中を指さしており、
俺は急いで工房の中へと入っていく。
するとそこには・・・
「・・・これで俺に作れということか・・・。」
そこには材料となる鉱石が山のように置かれており、
さらには、装飾品につけそうな品々がいくつもあったのであった。
・・・何が何だかわからない・・・
あの王女は一体何がしたいのだ?
予算を大幅に削れと言ってきたかと思ったら
俺にちゃんと一本の剣を打てる鉱石と共に
これは・・・高級だなと思われる装飾品に仕える数々の品が置かれている。
・・・ね、狙わているのか・・・
そんな一抹の不安が頭をよぎったのは言うまでもない。
落として上げる・・・恋愛の基本だ・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ない。




