197話目
「やっと来たかロドリゴよ!」
そういって、人懐っこい顔を浮かべて俺に話しかけてくる王様であるが、
その内心を表すように目が全く笑ってはいない。
「は!遅くなり申し訳ございません。」
・・・こちらは少し前に来て、客間で待っていたというのに・・・
「お主も王国一の鍛冶屋だから。
忙しいのはわかるぞ。」
労いの言葉を俺にかけてくれながらも・・・
「だが・・・お前の家族に幸せな時間を与えてやっているのは
儂だということを忘れはならないぞ。」
「・・・は。」
・・・幸せに?
どの口がいうのだ!!
体のいい人質であろうに!!
それがなければ、こんな王国すぐにでも捨ててやるのに!!!
俺は家族でのんびり過ごせればそれでいいのだ!!
なのに・・・なのに・・・家族を人質に取りやがって・・・・
「それでわが友よ!そなたを呼んだのはな・・・。」
そう言いながら王の横いた男を見ながら、
「そなたも知っておろう。
この度は、カリグラが伯爵位を継ぐことになったのだ!
そんな喜ばしいことに儂はふさわしいモノを送りたくてな。」
「ありがたき幸せ!!」
カリグラは頭を下げて、王にお礼の言葉を述べる。
「うんうん、そなたも父同様に儂によく仕えよ。
それでな、ロドリゴよ。
カリグラは騎士団長でもあるのだ。
その者にふさわしい剣を送りたいと思っていたのだ。
だから、そなた、カリグラに相応しい剣を作ってくれ。」
「かしこまりました。」
・・・めんどくさいことになったな・・・
現王国の近衛騎士団長カリグラ・・・
はっきりと言って、その地位に全くふさわしくない男・・・
口ばかりが達者であり、
夜な夜な開かれるパーティーに通うことで
その地位についたと言われる男だ・・・
というか、好んでパーティーに参加していたとも聞く・・・
いや、まあ、俺も知っているが・・・確かにそんな男だ・・・
しかし・・・困ったな・・・
騎士団長に相応しい剣となるとハッキリと言って
この男が振ることなんて無理に等しい。
上背もなく、筋力もまるでない。
貴族にありがちなデブなだけな男・・・
剣術に関しても素人に毛が生えた程度なのだから
そんな男にどんな剣でも過ぎてしまう。
そこらで未熟な鍛冶屋が打った剣でもいいんじゃないか?
そう思ってしまう。
さてどうしたものか・・・
「それでな、ロドリゴよ。
予算なのだが・・・。」
その言葉を聞いて、ピンとくる!
なるほど!
予算をケチりたいのだな!
王国はバカな王族のために困窮していると聞いている。
浪費に次ぐ浪費で火の車だそうじゃないか!
それなら安くするために装飾をなくして
本来の剣としての細工だけにして予算を削減・・・
「10億ゴールド用意する!
10億ゴールドで一本の剣を打ってほしいのだ!!」
その言葉に感動するカリグラ。
この国の民で一人が年間に200万ゴールドも稼げればいいほうだ。
500人分の年収を・・・一本の剣に?それも剣もまともに振れない男が持つ剣に?
ありえない!!
だが・・・それでも受けるという選択肢しか俺には残っていない。
「ありがとうございます!!」
嬉しそうにお礼を言うカリグラの傍で
俺は・・・仕方がないと腹をくくっていた。
バカげているとは思っても俺にはその選択肢しかないのだから・・・
カリグラは嬉しそうな笑みを浮かべて、
王の間から下がっていく。
俺は・・・と言えば、別件があるということで
王の間に残っていた。
そして・・・
「それでなロドリゴよ・・・。」
そこまで言ったところで、隣になぜかいたジョセフィーヌ王女様が
「父上、私が言わせてもらいますわ。」
そういって一歩前にジョセフィーヌ王女様が前に出られて、
「あなた・・・カリグラに10億ゴールドの剣がふさわしいと思う?」
「・・・は?」
思わず言葉を失った俺に対して、
「全然ふさわしいと思わないですよね。
だから・・・
10万ゴールドで剣を拵えて欲しいのよ。」
「・・・え?」
俺はジョセフィーヌ王女様の言葉に呆然とするのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ない。




