109話目
「・・・なんの冗談ですか?」
静かに、だけどハッキリと冷たい声で執事が
バリティッシュ男爵に告げると、いっきに顔を引きつらせて、
「じょ、冗談だ!嘘だから!ちょっと言ってみただけだから!!
あ!?俺なんか言ったなかな?」
・・・ものすっごいおびえっぷりだな・・・
さっきまでの笑顔がどこへやら!
今は完全に引きつった顔をして明らかにおびえ、
こびへつらうような顔をしているバリティッシュ男爵・・・
・・・そんなに怖いのか・・・執事が・・・
・・・うん?遠目でわからないが、
あの執事は・・・・どこかで見たような気がするのだけど・・・
「それでは・・・先ほどおっしゃった件は?」
「なしなし!俺は何も言ってない!!」
・・・子供かよ・・・
そこの言葉を聞いた商人が、今度は慄く。
それを察したのか、
「大丈夫でございます。商売の承認については取り消しはございません。」
その言葉を聞いて、ぱぁ~と明るい顔に変わる商人。
「ただし!先ほど聞き捨てならないことおっしゃっていたように思えますが?」
そういって、睨まれる商人は、もみ手をしながら、へこへこして、
「さて、私の記憶には何もございません、へへへ。
私は与えられた場所で商売を細々と
やらせていただければと思っております。」
すでに察していたのだろう。
先ほどの言葉を取り消して、今度は執事のほうへとこびへつらう。
「・・・そうですか。」
どうやらOKなのだろう、執事のほうも笑みへと変わっていた。
その笑みに安堵をした商人は、
「ありがとうございます。」
そういいながら執事のほうへと近づいていく。
その手には・・・明らかな袖の下と思われる分厚い革袋を
持っていて、それを執事に渡そうとするのだが・・・
「・・・これは?」
「え!?いや、ここれは・・・。」
すぐにその革袋に対して、冷たい視線を向ける執事、
明らかに袖の下に対して憎悪を持っているのがわかる。
そのやり取りを見ていた村人たちからは歓声が沸く!
・・・まあ、そうだろうな・・・
目の前のダメ領主のほうは、袖の下を受け取って
喜んでいたのに対して、執事のほうは断固拒否の姿勢だ!
これで村人が喜ばないなんてことはないだろう・・・
・・・バリティッシュ男爵のほうは、
なぜ受け取らない!?って顔をしてみてるけど・・・
あと・・・
もう一点気になることがあるけど・・・
ガクガクと震えて地面にへたり込んでしまった商人のほうなのだが・・・
なぜか口元だけは笑みを浮かべている点だ!!
なぜ不正を許さない執事に対して、そんな笑みを浮かべるのだろうか?
まあ、執事よりも上のバリティッシュ男爵のほうが、
袖の下を受け取るタイプだとわかったことに対して、
今日のところはその情報が得られただけで満足だということだろうか?
・・・絶対に違うよな・・・
じゃあ、なんで?
そう思っていると、すぐに答えはわかったのである。
「・・・商人様、後ほど領主様の屋敷にお越しください。」
「は、はい・・・。」
ここでもおびえたような表情を浮かべているが、
口元だけは、まったく違う!
明らかに笑みを押さえている笑いだ!!
よろよろと商人は立ち上がるのだが、
それに対して執事のほうは優しく手を差し伸べる。
「あ、ありがとうございます。」
感謝の言葉を述べながら、その手をつかみ立ち上がろうとした時であった!
俺は・・・
その瞬間を見逃すわけがない!!
“屋敷に持ってきてください”
そう口が動いたのを確認した!
俺は暗殺者として読唇術をマスターしている!
だからわかるのだ!!
あの執事・・・
あいつも立派に黒いじゃないか!!!
人目があるからもらわないだけだ!!
村人の目がなければ、あいつも遠慮なくもらっているぞ!?
俺はあきれるような気持ちになり、ことの成り行きを見守っていた。
一応、商売の許可証の発行という名目で
バリティッシュ男爵の屋敷に向かうようだけど、
こいつも賄賂OKじゃねえかよ!!
そのひと騒動が収まって、
俺と一緒に見に来ていたポテトが俺に対して、
「なあ、兄ちゃん・・・。」
そういえばこいつも読唇術が使えるんだったな?
それなら今の状況は理解できたのだろう。
次に出てくる言葉は・・・
「“屋敷に盛ってきて”って・・・何を盛るんだ?」
・・・おしい!惜しいぞポテト!!
っていうか、その変換だと文章がおかしいってことに気づけよ!!
っていうか、話の流れを考えればそんな文章への変換がおかしいって気づけよ!!
・・・いや、まあ・・・ある意味ポテトだな・・・期待を裏切らなかったよ・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




