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温泉で有名な町・センオ

私達が馬車で5時間掛けてこの町に来た理由は、温泉があるからです。

スフィアがどうしても行きたいと言うのでここまで来ました。


私達は泊まっている宿屋の食堂でサンドイッチを食べ、

昼から温泉がある場所に向かいます。

スフィアはいつも以上にテンションが高かったです。


『良し、じゃあ温泉に行くぞ!!』

『『おー!!』』


スフィアのテンションに合わせるのが大変でした。

決して温泉が嫌いなわけではありませんが、

みんなの前で裸になるのが恥ずかしくて苦手なのです。

早く温泉慣れをしないといけませんね。


宿屋を出た私達は北側の方に向かって歩きました。

この町にある温泉の場所は、町の中央から大分離れているみたいなんです。


歩くのは大変そうですが、綺麗な町並みを観ながら歩いていますので、

そんなに苦ではありません。

町を歩き始めて一時間ほど経つと、ようやく温泉がある場所に到着しました。


『おーここが温泉がある所かー・・・凄い立派な建物だな』


スフィアが感心をするのも無理はありません、

目の前には屋敷みたいな大きな緑色の建物が建てられていて、

この中に温泉があると言うのですから。


スフィアは私の手を引っ張って入りました。

そんなに焦らなくても温泉は逃げませんよ?

余程楽しみにしていたんでしょうね、

普段は凛としたスフィアですが可愛い所があります。


私達は受付場所でお金を払い、脱衣所に向かいました。

この建物は左側の通路が女性専用になっていて、

右側が男性専用で真ん中に待合室がある構造になっています。


私はスフィアよりも早く出るので、

温泉から上がったら待合室で待っているのもいいかも知れませんね。


通路を抜けて、脱衣所に入ると何人もの女性が着替えをしていました。


スフィアとフワリは躊躇する事なく入って行きましたが、

私はこれだけの人数がいるとより恥ずかしさを増して、

戸惑ってしまいました。


周りを見ると、皆さんは堂々と着替えをしていますので、

私が恥ずかしがり屋なだけなんでしょうか?

戸惑っているとスフィアに声を掛けられました。


『リリー、どうしたの?』

『ううん、何でもないわ。早く温泉に入りましょうか』


私はスフィアに続いて服を脱ぎ始め、衣類をカゴの中に入れました。

裸姿になってしまうとやはり恥ずかしくなってしまいました。


『うー・・・やっぱり恥ずかしいな・・・』


フワリは私を見て冷やかしてきました。


『リリーはスタイルが良いから堂々としていいのー』


スフィアは笑って言いました。


『そうだよね、特に今日はいつも以上に照れているよ?』


二人に見られると余計に恥ずかしくてなり、

両手で前を隠してしまいました。


『だって・・・スフィアに裸姿を見られるの、

久し振りだから余計に恥ずかしくて・・・』


リリーがいつも以上に恥ずかしそうにしている姿と、

誤解を招くような発言をしたせいで、

年齢が10代半ばと思われる二人組みが私達を観て会話をしていた。


『あの雰囲気は恋人同士かな?』

『恋仲だと確かに恥ずかしくなるわよね』


おっと、これは誤解をされているぞ。

さすがの私も恋人同士と勘違いされると恥ずかしくなり、

焦ってしまった。


『早く温泉に入るぞ、二人とも』

『うん、入りましょうか』

『入るのー!』


スフィアの顔を見るとどうしては分かりませんが、

頬が赤く染まっていました。何かあったのかな?


脱衣所を出た私達は温泉を観て驚いてしまいました。

何故ながら物凄く広く、

平らな石に囲まれている風呂が二ヶ所もあるのです。


スフィアが言うには普通は一つなく、

こんなに広い風呂は滅多にないと言っていました。

さすがは温泉で有名な町ですね。


私達は左側にある風呂に入りに行こうとすると、

フワリの姿がありませんでした。

嫌な予感がした矢先の事です。


フワリは人が入っているにも関わらず、

風呂に向かって飛び込んでいました。


『私が一番なのー!』


『『フワリー!!』』


私達は風呂に浸かって、周りにいた女性に謝りに行きました。


『ごめんなさい、うちの妖精が・・・』

『迷惑を掛けて、すまない』


女性は優しい人達ばかりで、怒らず微笑んでいました。


『別に良いわよ、可愛いなーって観ていたわ』

『そうよ、人が飛び込んで来るなら迷惑になるけど、妖精なら可愛いよ』

『妖精ちゃんのお名前は?』

『私はフワリ!よろしくなの!』


『『『可愛いー!!!』』』


フワリと女性達は仲良く話をしていて、

私とスフィアは温泉に浸かりながらフワリ達を見ていました。


『凄い人気者だね』

『ああ、そうだな』


すると、フワリと話をしていた一人の女性が近くに来て、

私達に話を掛けてくれました。


『この辺では見掛けない顔ね、何処から来たのかしら?』


彼女にこの町の住人ではないと気が付かれて驚いた私は、

彼女に質問を返してから私も質問をしました。


『私はゼリアから来たの、隣にいる友達はウィリックからね。

それよりも、どうしてこの町の住人ではない事に気が付いたの?』


『そりゃあ、この辺に妖精なんていないから、

妖精と一緒にいる人達を見たら直ぐに分かるよー』


なるほど、確かに妖精がいない地域なのに妖精と一緒にいたら、

違う場所から来ていると直ぐに分かりますよね。

ということは結構目立っている事が多いという事かしら?


数分の間、三人組の女性と話していると、

相手がそろそろ上がるという事でお別れをしました。


『じゃあねー、フワリちゃん!』

『お二人もゆっくり温泉に浸かってねー!』

『まったねー!』


私達は手を振って見送りをしました。

三人が上がってちょっとだけ寂しくなりましたが、

スフィア達とゆっくり温泉に浸かって温まりました。

フワリは相変わらず浮かんでいました。


『気持ちが良いのー・・・』

『ああ、温泉は最高だな・・・』

『心が落ち着くわー・・・』


数十分入り、次はもう一つに風呂に入りに行きました。


『ん?こっちの方は向こうのよりも熱い?』

『ああ、そうだな』

『確かに熱いのー!』


どうやら風呂が二ヶ所に分かれている理由は温度が違く、

好みに合わせて入れる温泉になっているみたいです。

これは凄い温泉ですね。


私はのぼせる一歩手前まで温泉に浸かり、

熱くなって来たのでスフィア達よりも先に温泉を出て、

脱衣所に向かいました。


私はタオルで身体を拭いて着替えを終えても、

スフィア達はまだ出てこなかったので、

待合室で待っている事にしました。


待合室ではソファが4つ並べられており、

一番奥に置いてあるソファには男性が二人座っていたので、

私は手前にあるソファに座り、スフィア達も待っていました。


すると、奥に座っていた男性達が立ち上がってこちらに歩いてきました。

嫌な予感はしましたが思違いと思ってそのまま座っていました。

しかし、嫌な予感が的中してしまいました。


『お嬢ちゃん、一人で暇そうだね』

『どうだ?暇なら今から俺たちとデートをしようぜ』


当然、私は暇ではないので断りました。


『いえ、遠慮しますわ』


断ると、ちょっと太り気味の男性は私の肩に手を置き、

髪を赤色に染めている男性は勝手に私の隣に座り、

左手で私の太ももを触って来ました。


『遠慮するなよ、何でも奢ってあげるぞ?』

『ああ、最後に俺たちと一緒に寝てくれたら・・・』


次の瞬間、私の肩に手を置いていた男性は誰かに殴られ、

吹っ飛ばされていました。


私の隣に座っていた男性は頭を後ろから抑えられ、

ソファの上から落とされて転がっていました。


『貴様ら!何しやがっているんだ!!』


そう、やったのはスフィアでした。

私はソファから立ち上がり、怖くてスフィアの後ろに隠れました。


『リリー、大丈夫なの!?』


フワリはとても心配そうにしながら、声を掛けてくれました。


『うん、なんとかね』


男性達は痛そうに立ち上がり、スフィアを睨んでいました。


『いてて・・・突然何しやがるんだ!!』

『用があるのは後ろにいる女だ!!』


スフィアはいつも以上に声を低くだし、殺気立てていました。


『これ以上しつこいと、もっと痛い目にあうぞ・・・』


周りにいた人達は騒ぎに気が付いて視線を向け、

何人かは口を揃えて男性達を批難していました。


『あの男性達の方が確実に悪いよな』

『私も観ていたよ、いきなりナンパをしていたよね』

『本当に最低だわー・・・』


男性達は不利な状況を察し、仕方がなく帰って行きました。


『チッ・・・覚えてろよ・・・行くぞ!』

『ああ・・・仕方がねえな・・・』


騒ぎが収まり、一安心をした私はスフィアにお礼を言おうと

すると、手を握られて言われました。


『リリー、もう一回温泉に入るぞ。フワリも良いかい?』

『私は何回でも良いのー!』


スフィアは私に気を使ってくれて、

本日二度目の温泉に入りに行きました。


脱衣所に来て、服を脱ぐ前にスフィアに達に謝りました。


『その・・・私の所為でごめんなさい・・・』


スフィアは私の頭に手を置き、優しく言ってくれました。


『なんでリリーが謝るんだ?それとこの件は終わりだ。

もう一度温泉に入って気分転換だ』


『そうなの!リフレッシュなの!』

『二人とも、ありがとうね』


やっぱりスフィアはかっこよくて、とても優しいです。

フワリも付き合ってくれてありがとうね、

私はこんなに二人に思われていて幸せです。


温泉に入っている間は、スフィアにくっついて浸かっていました。

温泉が熱いのか分かりませんが、

スフィアの顔は少しだけ赤く染まっていました。


『そんなにくっついてどうしたんだ?』

『いや?』

『ううん、別に良いよ』


浮かんでいたフワリは私達を見て羨ましがり、私の側に来ました。


『私もくっつくのー!』

『おいで、フワリ』


フワリは私達の間に入るようにくっついて、温泉に浸かりました。


こうしているとなんだが落ち着くなー・・・。

たまにはこうやって甘えるのも良いかもしれませんね。

私達はのぼせる一歩手前まで温泉を堪能しました。


今日はかっこいいスフィアも見れたから、良い日になりましたね。

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