下僕②
「で、材料はこれでOKだな」
準はどさりと買い物袋をテーブルにおろした。放課後エリカと一緒に買い物に行ってエリカの家に帰ってきたところだ。
「まずは材料量って」
「そ、そんなことわかってるわよ」
エリカはすべての材料を量り終えると本に目をやった。
「粉をふるう…」
エリカはざるに粉を入れると新聞紙の上にふるいだした。が、勢いが良すぎてはみだしまくる。
「もっとていねいにやれよ」
「こ、粉が飛ぶのがいけないのよ。そんなこというなら準ちゃんがやってみてよ」
準はスプーンを取り出してざるの中の粉をかきまぜる。するとスプーンが当たったところだけ粉が落ちてゆく。
「こんなもんだろ」
エリカは内心そうか、その手があったのか、と驚いていた。けど何だか悔しかったので表情には出さないでおいた。
「えとえと、次は卵と砂糖をよく混ぜる」
エリカは卵をボールに割ったが、うまく割れず殻ごとintoしてしまった。卵一つ割れないなんて!と悔しそうにしていたので仕方なく準が見本を見せることにした。
「準ちゃん片手で割れるんだすごーい」
「かっこいいだろ?」
「あたしだって練習すればできるわよ」
エリカが負けじというものだから、準がほい、と卵を手渡すとエリカは両手でもうまく割れないのに片手で割れるはずもなく先ほどと同様にぐしゃりと殻ごとintoした。
「くっ」
あとは粉を入れて卵液と一緒にさっくり混ぜてオーブンで焼いて終わりなのだが混ぜすぎて素地がねばねばになってしまった。なんでこいつは混ぜることすらままならないのかと呆れていた。
「おまえ、ちゃんと本読んだか?さっくりだぞ、さっくり、これはなんだ?ねっとりじゃねぇか」
準がへらですくうとねばーーっと持ち上がった。
「てへ☆」
「げんこつポーズしてもだめっつたくしゃぁねえから焼くぞ」
焼きあがるまでに片付けをするのだが…準は呆れてしまった。なぜならエリカが皿を固形石鹸をネットで泡立てていたからだ。それにはびっくりした。
「おまえ皿洗うときいつもそうやってるのか?」
「うん。そうだよ」
真顔で言われたので呆れることもできなかった。
「スポンジに食器用洗剤をつけて洗うんだぞ。これ、じょーしきだから」
準はエリカのマネをしてバカにしてみた。
「あたしのマネしないでよ」
エリカがふてくされる顔が面白くて準は笑った。それにつられてエリカも笑った。
「てかどこ探しても洗剤無いんだけど。俺買ってくるからオーブン見とけよ」
そういって出かけて行った。
十五分がたった。ピンポンとベルがなった。
「準ちゃん遅すぎーもう焼けちゃったよー」
そういいながら玄関に向かっていきドアを開けるとエリカはいきなり押し倒された。