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田中

だんだん暖かくなってきました。今日は某チョコレート会社陰謀の日。

 理沙がやっと離れたので席に着き目の前と言っても百枚近い紙の山から二十枚くらいをとりかちかちとパソコンに打ち込んでいった。中盤に差し掛かった時手書きのプリントに当たった。


「理沙、この字六か零どっちだと思う」


「どれどれ、うーん会計の先生の字は芸術的だけどこれまたそのなかでも群を抜いてるわ。さっすがナマケモノと言われるだけあるわー」


「ナマケモノ先生?」


「あの、ナマケモノ先生知らないのぉ?国語の田中先生だよ。腰もまがった白髪のおじいさん。何をするにもスロースピード、先生の話し声なんか催眠術かってくらい眠くなるのよねぇ。えりちゃんも先生の授業受けててノート提出したら一週間は帰ってこないでしょ?それくらいのろまってわけ。ホント迷惑。この目の前に積まれた紙の束だってさ半年以上前のものもあるんだよ?終わんないから手伝ってくれんかねってうちらが文化祭の会計委員だからってそれをさいきなりまとめて渡すんだよ?終わんないのはテメーのせいだっつうのぉ!そうそうあたいには解読不能だから先生に聞いてきて」


 仕方なくエリカは教員室に来た。


「ナマケモ…じゃなかった田中先生いらっしゃいますか」


「ああ、田中先生なら向こうでいつも通り寝てるよ」


 いつも通りって…先生ちゃんと仕事しようよ。田中先生のデスクまでくると生徒のノートによだれを垂らしながら気持ちよさそうに寝ていた。たしかにこの位置は一番窓側で日が当たって気持ちいいのだろう。と、よくよくそのノートをみてみるとわたしのだった。う、まじか……一瞬にして青ざめる。私のノートがおじさんの汚れで穢されている。


「田中先生!起きてください!」


 一生懸命肩を揺さぶるがああ、うう、とかうなり声しか聞こえてこない。


………五分後………


「ああーよく寝たなぁ」


 くあーーとあくびをして伸びをした。こちらに気づいてゆっくりと反応する。


「何用かね」


 エリカはあわてて紙を見せ説明した。先生はその紙を凝視してしばらく考え込んでいた。どんどんその顔が険しくなっていく。


「んーー六で良いと思う収入に多いことに越したことはないからな」


 え、まさか適当に答えてる?それは困るとエリカが困っているとその時先生のスマホが鳴った。うきうきして手に取るとたちまち鼻の下を伸ばしてだらしのない顔つきになった。エリカが気まずそうに声をかけると先生は別人のようになって生徒のノートの採点をてきぱきとこなしていた。そしてノートの山は数分にして無くなってしまった。


「先生何かあったんですか」


「ああ、俺はかわいい女の子の写真をみるとやる気がでるんだ!」


 どや顔でそういわれても…というか見た目は大人こころは男子高校生と変わんないなこの先生……なぜかエリカは幻滅した。というかこの先生すこし危ないんじゃないかと心配になってき始めたエリカでもあった。

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