告白
準はエリカの家目がけて夢中で走った。もしもあいつがまた危険な目に合ってないか怖かった。
しばらく走るとエリカの後ろ姿が見えた。準は走って腕をつかんだ。
「おまえどこ行くんだよ?こんな時間に」
強気な声にをかけられてしかもいきなり腕を後ろからつかまれてエリカはびっくりした顔で後ろを振り向いた。
「準ちゃん?!」
「おまえ、何してんだよ!」
準は思わず叫んでしまった。エリカは一瞬驚いてなんで準が怒ってるのかわからないという顔をして首を軽く傾げた。すると近所の人から注目を集めてしまい分が悪くなった。
「とりあえず、家、入るぞ」
ぶっきらぼうにそういうと腕をつかんだままエリカの家のリビングにつながる薄暗い廊下で止まった。
「準ちゃん、どうしたの」
静かに尋ねるけど返事はなくて。すっと手が離れたと思うと
ドンっ
「!!じゅ……準ちゃん?」
準は壁ドンした。
「もう、俺耐えらんない」
はぁ、と脱力した声で耳もとで漏らす。
「なんで自分から危ないことするんだよ!こんなまだ朝早くに一人でぷらぷら歩くのがどんだけ危ないのかわかんないのかよ?きのうあんなことあったばっかだってのによ!」
今にも顔がぶつかりそうな距離で真顔で見つめる。エリカの怯えた顔なんてお構いなしに怒鳴り続ける。
「もっと自覚しろよ!心配かけさせんなよ、心臓に悪りィんだよ!」
「ごっごめん」
恥ずかしそうに小さな声で言うと、こくんとうつむいた。
するとようやく準も自分が何をしていたのか気が付いてばっと手を放す。
「すっすまん。つい」
二人はお互い赤くなって目をそらす。
「で、なにしに出かけたんだよ」
「今日学校だから制服着ようかなって……」
「待ってってやるから早く着替えてこいよ」
「うん……」
ぎこちない会話をするとエリカは自室へ向かい、準は廊下に背を持たれて足を組んで待っていた。
準は、俺何やってんだろ。と頭に手をあててくしゃくしゃと髪を掻き上げる。なんかこいつがいなくなったらって考えたらむしゃくしゃして怒鳴っちまった。らしくねぇ。
「準ちゃんお待たせ」
「行くぞ」
準は手を差し出す。エリカはくすりと笑うとバシンと叩いた。
「おまっな、なにすんだよ」
準はいってえなと手をさすり怒る。
「一人で歩けますから」
にっこり笑ってるが目が笑ってない。準は、はぁとため息をつくともう一回手を差し出した。今度はちゃんと本気が伝わるように真剣な目でしっかりエリカを見つめて。
「俺本気だから」
「なにそれー新手の冗談?」
けらけら笑って準の横を通り過ぎようとした。その瞬間準はエリカを抱きしめた。
「言ったろ。本気だって」
エリカはからかおうとしたけど準の気配がいつもとは違くてその気持ち本物だと悟った。
「でも、あたしたくさん迷惑かけるよ。口悪いよ」
「いいよ」
「突然耳聞こえなくなるかもよ」
「そんなの関係ない。そうなったら筆談しよう」
エリカの目から知らず知らずのうちに涙がこぼれる。こんなあたしを必要としてくれるんだ。
準がそっと離すと頭を撫でた。エリカが準の胸にすがって泣きじゃくった。
「さぁエリカ家へ戻ろう。朝食作るから」
「うん!」
二人は手絵をつないで家へと向かった。そのころにはすっかり日が昇っていた。