幸福
「あらあら~エリカちゃんじゃないの?よく来たわねさあさ、上がって」
準の母、真由美がエプロン姿で出迎えてきてくれた。
「エリねーちゃんだぁ、あそぼー」
準の家に着くなりエリカは歓迎された。準の妹、楓はエリカに抱きついてうれしそうにしていた。準は親の夕飯の手伝いすっからとさっさと靴を脱いでキッチンへ向かった。エリカは二階にある楓の部屋に連行され一緒にマシオカートをやった。
「楓ちゃん強いっ」
エリカはぷはーっと後ろに倒れる。
「えへへ」
笑ってドヤ顔をしてみる。エリカは悔しくて「もっかい!」と頼み込む。
「そういえば楓ちゃんの部屋なんかいい匂いするね。カーテン、ベットカバー、壁紙からピンクで統一されててかわいいね。女の子の部屋だよねー。って机の横に貼ってあるポスターKAZEじゃん。好きなの?」
「やっぱりピンク好きだし。いつまでも子供っぽくなんていたくないし。ああ、そのポスターはお兄ちゃんから譲ってもらったんだよ。準兄も好きなんだよそのバンド」
「あたしも好きだよ。準が好きだったんだなんて知らなかったー」
「隙ありーよそ見してるからいけないんだよー」
「え、あ、ちょちょっと待ってあーーーーー」
「おーい飯できたぞー降りてこいよー」
準の呼ぶ声がしたので階段をばたばたと降りてキッチンに急いだ。
机に並べられたカレーのスパイシーな匂いが部屋中に広まる。いつもコンビニ弁当だったエリカはこのにおいだけで幸せになって目を輝かせた。
「あーおいしそう。これ準が作ったの?」
「ああそうだ。カレーにはこだわりが……」
準がいいかけてそれをかき消すように真由美がずいいっとエリカとの会話をさえぎる。
「うちの準はね作業が早くて私の分までとっちゃうのよ。だからほとんど準が作ったのよ。私が作ると遅い貸せって何でもかんでも自分でやっちゃうのよ。専業主婦としてはご飯作ってくれるのは
ありがたいんだけど母としての面目がたたないっていうかねぇ」
うふふと笑って席に着く。
エリカが一口口に運ぶとそれは口の中でハーモニーを奏でおもわず顔がほころぶ。これが幸せに味があるとしたらこんなのかなと思った。真由美と楓と準、エリカ、後から帰ってきた準の父と姉が加わってみんなでたわいのない会話をして過ごした。
「食べ終わったことだし、エリねーちゃん、兄ちゃんをゲームで倒そう!」
「そうね、今日こそはあたしと楓ちゃんでめっためったにしてやるんだからねっ」
「むりむりおめーらに無理だよ。俺強いもん」
「あらぁお姉さんもくわわろうかなぁ」
準の姉、林檎がにやりと笑って会話に割り込んできた。
「姉ちゃんは大学受験勉強があるんだろ」
ふっと笑って言い返す。
「あんたみたいにあたしバカじゃないのよ一緒にされちゃ困るわー」
準はこの姉にだけは勝てないのである。女三人に言いくるめられここは分が悪いのでしかたなく相手をすることにした。
「ねぇそうだこの勝負ただやるんじゃつまらないから賭けしない?かったほうがアイスおごりってのはどう」
「それ三対一って卑怯だぞ姉ちゃん」
「きーこーえーまーせーんー」
林檎はわざと耳をふさぎエリカと楓と一緒に楓の部屋に行った。
結果は言うまでもなくコテンパンに準が林檎にやられた。準がスーパーにアイスを買っている間に女三人は交代交代に風呂に入った。
「最後エリねーちゃんの番だよ」
「ありがと」
久しぶりの湯船。いつもはめんどくさくてシャワーだった。はあぁ気持ちいい。シンまであったまって心もほぐれる。カレーもおいしくてゲームも楽しくて準ちゃん家に来てよかった。久しぶりに心っから笑った気がする。このままこの時が続けばな………
「準おかえりー」
「兄ちゃんおかえり」
「アイス冷凍庫に入れとくから食えよ。俺風呂はいってくるから」
準は冷凍庫にアイスを入れると風呂場に向かった。
「いってらー」
楓と林檎はさっそくリビングでアイスをむさぼっていた。
姉ちゃんと楓の入った後ってすごいシャンプーの匂いがするからやなんだよなとも思いつつ服を脱ぎがらりとドアを開ける。と先客がいた。
「!」
エリカが真赤になって湯船につかって寝ていた。
準は急いで着替えてリビングにいる姉ちゃんをよんでエリカを引っ張り上げさせた。