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救助

 倉庫というより窓が黒い何かで覆われているさびれた雑居ビルだった。雑木林で他はなにも見当たらない。人もいない。

私たちは車から降ろされると何もない部屋に入れられた。そこには同じ年の女子が何人かいた。

私たちが入るとひそひそと話し声が聞こえる。


「また来た」


「次は誰が連れて行かれるのかな」


 どうやら私たちは歓迎されていないらしい。それを見かねた会長がさっそく事情聴取し始めた。


「もう少し詳しく聞かせてくれないかな」


 腰まで伸びた黒髪が美しいまさに大和撫子ともいうべき女子が怪訝な顔で答えた。


「いきなり男が入ってきてこの中の誰かをどこかに連れて行くのよ。一度連れて行かれたら二度とここには戻ってこないの。代わりに新しい子が来るの。だからみんなおびえてるのよ」


「そう」

 

 顎に手を当てて何やら会長は考え込んでいたが顔をあげた。


「でも、もう大丈夫よ私はみんなをここから出すために来たの」


「は?な、何をいってるの。警察だっていないのよ」


「つながってるわよ」


 会長は髪を耳にかけてイヤホンと、ネックレスのチャームに埋め込まれたマイクを見せた。

その時がちゃりとドアが開く音がした。


「ごちゃごちゃとうるさいぞ。そうだな、次はおまえだ。来い」


 指名されたのは会長だった。獲物がかかったというような目を一瞬したようにエリカには思えた。

そうして会長は何事もなかったように立ち上がるとその男に連れられて行ってしまった。ドアの閉まる音が重く感じられた。

五秒もたたないうちに人が殴られて倒れる音やうめき声が聞こえてきた。何が起きたのかわからずにつかまっている女子たちはうろたえていると再びドアが開いた。


「さあ、逃げるわよ、立って!」


 そこにいたのは会長だった。とてもかっこよくて会長越しに差し込む光がまぶしく感じられた。

エリカたちは会長の指示通り倉庫の外へ出ると警察の人がいて無事保護された。

でも会長の姿が見当たらない。あたりをきょろきょろしていると警察の車に乗せられて警察署へと連れて行かれた。


 会長はみんなの誘導を済ませると階段を上り二階へと急いだ。ここの警備はさっき倒した男一人ともう一人いる。そいつのもとに連れて行かれて戻ってこない子たちがいる可能性が高い。だとしたら早くいかないと!


「あれ、虫が一匹はいってたようだな」


 見上げるとたばこを吸って手すりに顎を載せている茶髪でいかにも不潔そうなお兄さんがいた。

会長は間髪入れずに彼に向かってさっと石を投げる。


「おやおや、威勢のいい子だねえ」


「投降しなければ次はあてるわよ」


「でも、君は一つ間違ってるよ」


「は?」


「投降も何も彼女たちは望んでここにいるんだよ」





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