恋心
準はエリカが消えてからというもの何故かそわそわしていた。部活にもなんだか気が入らないし、勉強も集中出来ないし、卵焼き焦がすわで流石に周りも心配していた。
「準、お前この頃おかしいぞ。何かあったのか」
クラスで仲のよい友達、そう。小林がじゅるじゅると牛乳を飲みながら帰り道に聞かれた。
「ああ、例の失踪事件で幼なじみがさらわれちゃってなんか凄い気になっちゃってさ」
「幼なじみ?てか、あの事件って美人ばっかりさらわれてるんだよな?俺にも紹介しろよー」
「紹介もなにもお前の前に座ってる新井エリカだぞ」
「あの子か…」
小林の顔が曇った。無理もない。彼女は女子からいじめられてるし、それをしきっている女子がまた怖くて男子だろうがエリカに味方するものは徹底的に排除する厄介な奴だ。エリカに声をかけたくてもなかなかできない男子がたくさんいるんだとか。
俺とエリカのここ最近の出来事とかを少し話した。彼女が難聴であるということも含めて。
「準おまえ相当新井さんに気に入られてんな」
「逆だと思うけど。下僕同然に扱ってくるし」
「お前にならなんて言ったって大丈夫だって思われてるんだろ。クラスでも友達いないで浮いて、一言もしゃべらないあの新井さんがそんな口ぶりするなんてびっくりしたよ。このまえみたいに…あれ?」
うーんと何かを思い出すように空をみながら牛乳を飲みだした。
「そうだ!この前お前の家の前で待ってたら新井さんがお前のこと彼氏だとか言ってたぞ?あれ本当?おれも言われてみてー」
「ああ、知ってるよエリカから聞いた」
改めて彼氏だなんていわれるとなんかうれしいようなでも
「それ冗談だし」
語尾が小さくなる。そんな俺の態度をみてにやりと笑った。
「おやおやぁーまさかおまえ新井さんの事が…」
「彼氏だって言われてうれしかったけどでもそれはあいつが俺の反応を楽しみにしていったわけだし」
「要は好きなのか!」
牛乳パックを握りしめてくすくす笑っていた。
そういわれた瞬間顔がぶわっと熱くなる。
「だってよぉだいたいさ、願を叶えてやる、なんて言わないぜ普通。友達にしかも異性の」
俺は妹いるし何かと世話好きだからエリカに対してもそうなのかな。なんて思ってたけどそれだとここ最近のそわそわ感の説明にうまくならなくて…これが『好き』という感情なのか?




