次世代人とは何か? その5
「マリア、その女は必要なのか?」
「ええ。あたしの半身なのよ。」
「まあいい。彼女を上手くおびき寄せてくれたら、それでお前の役目は終わりだ。」
「偉そうね。臆病者のくせに。」
「そうさ。それは世代交代しようが、不変なんだ。」
彼らは、彼女を殺すようだ。でも、僕は君さえ居ればいいのさ。
「あたしはマリア。よろしくね。」
「えっと、よろしく。」
彼女はとても困惑している。それは当然、見ず知らずの人間に声を掛けられたからでもあるが、女性2人が異常なほど密着していることも原因だ。
「あなたの頭ってとても軽そうね。」
「それって、私がお馬鹿さんっぽいってことなのかな?」
とても落ち込んでいるようだ。普通なら、自分の特異性に気付かれたと焦るはずなのだが、……。これが演技じゃないのなら、真に馬鹿なのか?この娘の読んでいた本は絵本だったのか?
「これがどういうことか分かるかしら?」
マリアは自らの腕を切り落とした。しかし、血は一滴も出ず、腕は消え失せた。
「もしかして、私と、同じなの?」
「ええ、そうよ。」
彼女は今まで、自分と同じ特異な人間に会ったことがないのかもしれない。とても新鮮な驚きをしている。初めて悩みを共有出来るかもしれない相手と、出会ったんだろう。
だから、ついさっき初めて会っただけの人間に、心を開いてしまった。
悲しいな。僕は映画でも良く泣くタイプなんだ。可哀想だって、傍観しながら、ただ涙を流すのさ。
「紹介するわ。」
マリアは、彼女を男の元に連れてくることに成功した。
男は手を差出し、歓迎するような態度を取った。一目惚れしていたとは思えない程、冷静だ。同じ世代を生きる者じゃないと分かれば、彼にとってはもう絶世の美女は猿と成り得るのか。
「俺の名は、自由に想像してくれ。だから、君の名も聞かない。」
「?」
「君は死ぬんだ。ここで。」
「え?……私達、仲間じゃないの?」
「俺達は次世代の担い手なんだ。でも君は違う。」
「うんうん。違わないよ。だって、見てよ。」
彼女は両手で頭を変形させた。何も詰まっていないのは明白だ。明らかに一般的人間とは違う。
「そんなことしても無駄だ。君は一部だけなんだ。見ててごらん。」
3人の人間が姿を消した。跡形も無く。
「皆、どこなの?」
「ここだ。ここにいる。」
そして、3人は姿を現した。
「分かるかい?俺達は身体の全てを次次元に移行出来る。まあ、俺達が仮にそう呼んでいるだけで、実際どういう空間なのかは知らないがな。」
「マリア、ちゃん?」
「あたしに助けを求めても無駄よ。」
1人の人間がこの世から姿を消した。
「ところで、次次元を知らないの?あんなにも美しいのに。」
少しして、君は口を開いた。
「なに?まさか。」
ああ、彼は鋭いね。割と損するタイプだ。
「マリア、お前が彼女に魅かれるのは、彼女が俺達よりも優れているからだよ。」
彼らに、隠し玉は無い。社会的に死んだ僕は、自由に行動できる。だから、ずっと観察してきた。
そろそろ、君を助けるよ。その汚い雌からね。
「俺達も狩られる側だ。」
「あ、ああ゛、、、。」
これで完結です。
1話毎に違う視点で書いてみました。